《推定睡眠時間:0分》
タイトルバックにJapanese Versionと小さくテロップが出ていたのでこんな映画にバージョンもクソもあるかよと思ったが腐っても(※腐ってません)清水崇の新作オバケホラーということなら海外にも販路が固まってるはずで、どのへんがジャパニーズ仕様なのか具体的なことはわからないが今回は日本国内で爆発的な人気を誇るEXILE族の若手集団GENERATIONSとのコラボ作品なのでおそらくGENERATIONS関連のシーンなどが日本バージョンではファン向けに追加され、海外バージョンではそれが少し削られてホラーシーンやストーリーを補足するシーンなどがもう少し入っているのかもしれない。マキタスポーツ演じる中年丸出し贅肉探偵がホテルの窓から夜景を眺めているところにGENERATIONSのなんとかいう曲が流れカラオケ風のテロップが乗るというギャグシーンはおそらく日本バージョンのみのサービスシーンだろう。こんなもん見せられても清水崇のホラー新作だやったと思って映画を観た海外の人はたぶん意味不明だろうと思われるので。
それでこれ今のGENERATIONSを前面に出したやつじゃない特報的な予告編を観たときにはおお最近はバラエティ・ホラーみたいなのばかり撮ってた清水崇の映画にしては怖そうだな! とちょっと楽しみにしていたところがあるのですが、実物観たらなんかあんま怖くなかった。怖がらせの手段は実に様々で『呪怨』のセルフパロディというべきか使い回しと言うべきかなネタまで動員してあの手この手で怖がらせる。幽霊が変な格好でそこにいて怖い、同じ事を何度も繰り返す人が怖い、人や動物などが死ぬ時に出る嫌な音が怖い、呪いのカセットテープを逆再生して流れるノイズでひずんだ音が怖い、なんかバーンとかドーンとかでかい音が鳴って怖い、関口メンディのバキバキにキマった生え際のラインが怖い、等々。ストーリーも一捻りあり定番のあれですなと思ったところでサイコホラー方向に舵を切ってくるので恐怖演出の多彩さもあり飽きない映画になっていることは確か。
でも、怖くねぇんだよなぁ…。なんでだろうね。たぶんこの映画に関して言えば怖がらせの多彩さが逆効果になっているところがあって、あんまりにも怪奇現象が頻発するものだからなんかオバケのありがたみが薄いっていうのがあるんじゃないだろうか。やっぱ恐怖シーンを詰め込めば詰め込むほど一つの恐怖シーンに割ける時間って減りますからね。怖いぞ~怖いぞ~怖いぞ~…ドン! のじらしをいちいちやってる余裕なんかなくて、怖いぞドン! ドドンガドン! とこう来ますからなんだかホラーというよりもお祭りのようです。
一捻りあるストーリーも先読みができないという点では面白いけれども主要キャラクターが多くそのそれぞれのキャラクターやドラマが整理されないまま強引に展開だけツイストしていくのでうーん、それもやはり恐怖を感じるための観る側の集中を削ぐようなところがあって、果たしてこれが日本バージョンだけの話なのか、それとも国際バージョンではもう少し話に筋が通るようになってるのかはわかりませんけれども、あれはどうなったのとかあれはなんだったのとか気になって「まぁ、とりあえず怪奇現象はいいとして…」とか思ってしまった。どうなったのあれマキタスポーツの家庭問題とか。娘とは和解できたのか娘とは。どうでもいいことではあるが。
いかにも出そうな気味の悪い日本の家の外観とかそこらへんはさすがにセンスがあって怖いな~と思わせるけれどもこっちはこんな家入りたくねぇ! とせっかく思ってるのにいざ中に入るとこれも尺の問題で家全体を探索するドキドキ展開にはならず玄関口でさっさと事を済ませてしまう。テープのバケモノと化したラスボスオバケはカッコいい造型をしていてこいつがフヨ~と近づいてくるあたりはなかなか圧迫感があり良いのですが、活躍時間推定2分。全編そんな調子なので普段は映画なんか70分ぐらいあれば別に充分だよと暴論をかましているがこれに関してはあと15分ぐらい上映時間を付け足してもっとしっかり作って欲しかった。だからつまんないとかダメとかじゃなくて面白いんだけど惜しいっていう…なんかこれ最近の清水崇のホラーの感想でいつも言ってるな!
いや、でも、やっぱり惜しい映画なんだよ。惜しいとにかく惜しい。なんでこんなにいつも惜しいんですか…とりあえず、日本バージョンよりもGENERATIONSファンサービスが少ない分映画としては良く出来ている可能性がある国際バージョン、観に行くかどうかはわからないというかたぶん行きませんが、限定公開などヨロシク。
【ママー!これ買ってー!】
マクセル カセットテープ(10分/4巻パック) UR-10M 4P
テープメディアにはノスタルジーと共にどこか薄気味悪さがつきまとう。そういえば清水崇は直接関わっていない高橋洋脚本のNetflixドラマ『呪怨 呪いの家』もテープが恐怖の発端だった。