《推定睡眠時間:45分》
なんだかたいへんな映画である。まず冒頭がどこかの悪徳企業による放射性廃棄物の海洋不法投棄。福島第一原子力発電所の処理水海洋放出が東アジア圏の共通話題となっているこんにち2023年8月25日の日本公開はあまりにタイムリーである。当然不法投棄された放射性廃棄物によりその後サメとかタコとかが巨大怪獣になる。俺は処理水の海洋放出には十分な科学的根拠と安全性があると考えるので反対ではないのだが妄想は自由だしフィクションも自由なので日本でもこういう映画を作ってほしいとおもう。
ダツという魚がよいのではないだろうか。槍のように細長く尖った姿をしており光を向けると時には海上に飛び出してまでそちらに猛突進してくるため突き刺さっての死亡事故が起こることさえあるという海の当たり屋・ダツ。まさしくダーツのようなこいつが放出処理水の溜まる海のホットスポットでモリモリとトリチウムを食って凶暴化、福島沖の沿岸では夜の浜辺で謎の鋭い刃物で脳天を貫かれて人が死ぬ連続猟奇殺人事件が発生しており、その犯人はもちろん怪獣ダツ。
地元刑事が事件の謎を追う中、怪獣ダツの群体は陸地にとりわけ明るくピカピカ光る何かを見つける。在りし日の福島第一原子力発電所がその電力の多くを供給していた大電力消費地・東京である。さっそく海の中でひそかに首都進撃を開始する怪獣ダツ。粘り強い捜査によってダツの突然変異が事件に関係していることを確信する地元刑事。そして暗い夜でも決して明かりを絶やさぬ六本木に、ついに怪獣ダツと血の雨が降り注ぐ…ぐさぐさぐさぐさ! ぎゃあああああ!
これはあくまでも俺が妄想するフィクションであり仮におさかなが多少の処理水由来トリチウムを取り込み体内被曝を起こしても怪獣化することはありませんのでご安心下さいですが(でも政府はもっと腰低く協調的に事を進めて下さい)まぁとにかくほらこの映画の場合は多核種除去を行った処理水じゃなくて原液バリバリの放射性物質を海に不法投棄しておりますのでその場合でもサメとかタコとかが怪獣になることはないと思うんですが映画の中ではあります。映画の中の放射性物質は怪獣も作るしゾンビも作るし死んだ人も蘇らせる。
ともかく、そんな海の怪獣に立ち向かえるのはジェイソン・ステイサムしかいないよな! 言い忘れていましたが今回の(前も?)ステイサムはハードボイルド・ジャーナリスト。最初の場面では放射性廃棄物を不法投棄する輩の船に単身潜入し悪人たちをバッタバッタとなぎ倒しながら悪事を暴いたのでした。そのステイサムが今回なにをどうすることになったのかはそれからすぐに寝始めてしまったのでわからない。したがってタコ怪獣やサメ怪獣が放射性廃棄物を食って生まれた存在なのかもどうかもじつはよくわかっていない。陸地には遠い昔の白亜紀に絶滅したはずの恐竜のような生物もいたのでもしかすると放射性廃棄物のせいではないかもしれない。いったい俺が寝ている間に何が起こったのだろうか。
詳しい事情はわからないが目を覚ますとステイサムはサメと戦い中国でパワードスーツのようなものを研究していたウー・ジンはタコと戦い、知らない人は恐竜と戦っていた。タコとサメも戦ってるしサメは一匹じゃなくてたくさんいた。それにしてもこの監督、ベン・ウィートリーといえばいくら銃を撃ち続け被弾し続けても誰も死なないので全然テンションが上がらないというパロディチックな銃撃戦映画『フリー・ファイヤー』の人、あるいはJ・G・バラードの原作を映画化した『ハイライズ』の人だが、共通するのはオフビートであり、なにか大変なことが起こっているはずなのだが少しも盛り上がらないというのが『フリー・ファイヤー』であり、『ハイライズ』であり、そしてこの『MEG ザ・モンスターズ2』であった。
巨大タコがビーチに乱入ということになれば普通はもっとこうそのビーチ海水浴客たくさんいたから大騒ぎになるはずなのだが、『ジョーズ』みたいな来るぞ来るぞのサスペンス演出もなく無迫力でスルーッと混ざるんだよなタコ。しかもわりとチャチいCGで。これをどう捉えるかという話だがなにかアサイラム的なヘッポコ感があり半笑いになれた。これがベン・ウィートリーの狙ったものなのかそれとも単にこういうジャンルが向いていなかったのかはわからない。しかし、結果としてそこにジャンル映画的なお約束を茶化すような視点が入り、巨大タコと巨大サメが戦い変な恐竜が混ざってくるというきわめてバカバカしい光景が繰り広げられるにも関わらず、批評性を感じさせるところがあったというのは少なくとも俺の中では事実だ。
ただ批評性を感じさせたところで別に映画は面白くならないのでなんかシナリオのくだらなさのわりには普通に盛り上がりに欠けてあんまりおもしろくなかった。
【ママー!これ買ってー!】
シュワ×スタローン夢の共演というそれだけしかなかったセールスポイントがシュワ降板により失われたことでオリンピック会場の鉄雄のように暴走を始めたシリーズ2作目だがおい『MEG ザ・モンスターズ2』お前もちょっとこっちの道入りかけてるぞ!
はちゃめちゃバカ海洋(?)映画なので大抵のことは不問に付すけどそれでも最初のほうでウー・ジンが着てたパワード・スーツはなんだったんだよとはなる笑
整合性以前に全体のトーンの揃わなさといいたいしてカネは出さないくせに現場に相当口を出してくる(中国)人がいたのではないかと推測されるので、3作めが制作されたとして監督はまた変わるだろうねこりゃ
あのパワードスーツ使わなかったの!?
うん笑
活躍したのは潜水服と生身のステイサムと生身のウー・ジンとブランドものっぽいリュック背負った生身の黒人だけ!
せっかく作ったんだからアレでタコと戦えばよかったのに…っていうかステイサムもアレ着て深海に潜るのかと思いましたよ…すごく意味が無い!
ひょっとしたら潜水服がパワードスーツ仕様だったのかもしれないけどそのパワーを如何なく発揮した場面は記憶にないなあ笑