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白石晃士の映画とかビデオをそれほど多くは観ていない俺でもまたそのパターンかよと思ったのでハードコアな白石映画ファンなどにとっては全編既視感だけで構成された映画といっても過言ではないのではないかと思われるのだがそれで評判が悪いかといえばそんなことはなくむしろ大好評でこれは何かと考えそうか堤幸彦の『トリック』だね、『コワすぎ』シリーズというのは2010年代の『トリック』なんだと思いましたよ。
『トリック』もほら第一シーズンはまだ手探りでいろんなことやってましたけど第二シーズンからはもうネタの焼き直しばかりじゃないですか。劇場版や二時間スペシャルともなると焼き直しは更にヒドくそれぞれ三本ずつ作られていると思うのだがどれを観ても山田上田コンビがインチキ霊能力者とどっかの村で戦うみたいな内容なのでどれがどれだか区別がつかない。こんなに毎回同じことばかりやってみんな怒らないのだろうかと今となれば思うが当時そういう声は聞いた覚えがない。それはおそらくこのマンネリズムこそを視聴者は『トリック』に求めていたということじゃないだろうか。
山田上田の凸凹コンビといつもの刑事二人組がド田舎村を訪れボケ倒しツッコミ倒しながら自称霊能力者のインチキを暴いていく。このパターンを外してたとえば山田の恋愛展開などを差し挟むとしたらそれこそ視聴者にボロクソに叩かれたっておかしくない。マンネリで別にいいんである。むしろマンネリだからこそ山田上田の凸凹コンビが持ち味を損なわず活躍できるというものだし、一応オカルトテイストありのミステリーの体裁を取っているとはいえ『トリック』の核はやはり山田上田の秀逸なキャラクター、捻ったストーリーとかそんなものが観たくて視聴者はテレビをつけたり映画館に行ったりするのではなく、あくまでも山田上田と再会するためにそうするんである。
たぶんそれは『コワすぎ!』シリーズにも言える。工藤Dと市川AD(今回は工藤Pと市川Dにそれぞれ昇格していた)ほかお馴染みの面々のお馴染みの活躍が観たい。これだと思うな『コワすぎ!』ファンの期待するものって。パラレルワールドがどうのとかのメタ的な設定による被せ芸の面白さも多少はあるとはいえ、それはまた同じことやってんのかよのマンネリ感を打破するほどのものでもない、どちらといえば面白さの芯の部分は前と同じようなことをやってる中で今度は工藤市川がどんな表情を見せるか、という微細な変化の方にあるんだろう。『トリック』において山田上田がそうであったように毎回同じことをやりながら工藤市川も少しずつ人間として成長を遂げていく。
シリーズ初期には暴走Dを押さえるストッパーだった市川はいつの間にかその拳で工藤を黙らせ怪異を暴力除霊できるまでに成長した。そして工藤は己の暴力性を自覚し自己のシャドウと対峙することで真の英雄として再誕するのである。…なにそれ? それもう人間的成長とかそういうレベルじゃなくない? そういうレベルではない。そういうレベルではなくジャンプのバトル漫画とかの展開だし、最終的に『アンパンマン』とか『プリキュア』みたいな幼児向け映画のフォーマットに突入した。いつものあれ的なマンネリ展開は罠だった。そこまで突き抜けてしまったら今後はもう曲がりなりにもモキュメンタリーホラーであったこれまでの路線は維持できないので全年齢対象のアクションファンタジーの路線にチェンジするしかないと思うが、その「いやこれどうするんだよ!?」感、嫌いじゃない。当然嫌いではない。
察するに今後『コワすぎ!』シリーズは『オカルトの森へようこそ』や『カルト』『ノロイ』など白石晃士モキュメンタリーバースの中核として他作品とアッセンブルするのではないかと思われるが、まぁ、そうなったら今度はもうあれだね応援上映とかで観たいですよね。『アンパンマン』の映画だと上映中にアンパンマンを応援したり一緒にお歌を歌うためにミニタンバリンとかをお子様に配るでしょ。あれと同じ感じで次の『コワすぎ!』映画は入り口でミニサイズの「市川の聖拳」か「工藤のバット」っていうのを配って二人が怪異に立ち向かう時にそれを鳴らして応援するっていう…それなに? なんなのそれ? 知らねぇよ! 面白かったです!
※一番好きなところは無限廊下を一行がダバダバと延々走り続けるところ。昭和のギャグアニメっぽい。
【ママー!これ買ってー!】
デリシャスパーティプリキュア クリーミーフルーレ(対象年齢:3歳以上)
白石映画もオモチャ売り出せばいいのに。心霊アイテムたくさんあるんだから。