もっと突っ走ってほしかった映画『恐解釈 花咲か爺さん』感想文

《推定睡眠時間:10分》

花咲かじいさんの童話を翻案した映画なので正直じいさんの家の隣にはいじわるじいさんが住んでいるのだがこの人はいつからか笑わなくなりスプラッターなお絵かきばかりするようになった孫を喜ばせようと道行く人を拉致してきて孫の前で殺し孫の母親であり現在第二子を身ごもっている娘に死体処理をさせたりするのでいじわるというレベルではなかったし娘二人はなぜかとても華奢で可憐な感じなのだがこの鬼畜に育てられた娘がなんでそんな風になるんだ。ならんだろう普通そいつはお前。

あと親父が鬼畜で嫌気が差したのか家出していた次女が冒頭でフィアンセを連れて家に戻ってくるのだが戻ってこないでいいよ! なんでわざわざ抜け出した鬼畜ハウスに戻ってくるんだよ! 鬼畜親父が人を殺したと姉から聞かされてもとくに驚かないお前はなにかを知っていただろう何かを! 警察全然呼ばねぇし! 現代劇なのに警察全然誰も呼ばない! 間違っておびただしい数のバラバラ死体の置かれた死体解体部屋を見ちゃった正直じいさんも警察呼ばない! お前はお前でちょっと正直じいさんのコンセプトからズレてる気がするぞ性格が!

そんな映画でした『恐解釈 花咲か爺さん』。各種のハラスメント・テクニックを如才なく身につけ自分に関わるすべての人間のマウントを取りマインドコントロールを施そうとするサイコ鬼畜親父に家族が心理的に拘束されるなんというのでしょうこういう『冷たい熱帯魚』みたいなのは、サイコ・ファミリードラマ? なんかとにかくそういうやつでいや『花咲かじいさん』成分がないだろとツッコミたくなりますが最終的に愛犬を殺され文字通り復讐鬼と化した花咲かじいさんがファミリーを襲撃するのでギリで『花咲かじいさん』でした。最後はそれがやりたかっただけだろう疑惑のある血肉の華が枯れ木に咲きます。なるほどこれはたしかに『花咲かじいさん』! ってそんなわけあるか!

淡々とした映画なのであんま笑える演出もないのだがこれ何って漫☆画太郎のバイオレンス・ギャグの世界だよね。ラストの血肉の華が咲く場面とかも漫☆画太郎の漫画でそういうのあったもん。だからこれはズコーってなる映画なんじゃないか本来は。笑わなくなった孫を笑わせるために通行人を拉致して殺人とか「ズコー!」ですよ。だけど笑えないのはたぶん編集の間が悪いから。ネタは漫☆画太郎みたいに下らないのに漫☆画太郎のクソ漫画みたいなスピード感はないからノるにノれない。

一方でこれは予算的な制約もあったのかもしれないが肝心なショット、たとえば殺人を見た孫の表情とか、人が殺されるその瞬間というのが撮れていない。例の血肉の華も咲いた後のショットはあるのに咲く瞬間のショットはないんですよね。だからこれは足りてる部分が無駄に長く編集で繋げてあって、足りない部分が必要なのに撮れてない、そういうちょっとチグハグなところのある、ラフ編集版のような映画だったと思う…が、こんな映画を真面目に分析したくない!

森羅万象の脂ぎった鬼畜親父が最高一歩手前! ブチキレた花咲かじいさんは見た目がフレディ! マネキンみたいなバラバラ死体は手とか足とかくっつけて実寸大のプラモになるぞ! わはは、くだらねー! えー、そういう感じで、このタイトルの映画を真面目に観に来る人は地球上に存在しないと思うので無用かつ無粋なアドバイスですが、こんな映画を2000円とか払って映画館で観るという行為自体がギャグになって面白いので、あくまでも完全にネタとして観よう。いや、だからそのためにももっとしっかりネタ感を出してくれよと思ったんだけどさ。

【ママー!これ買ってー!】


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やっぱ漫☆画太郎おもしれーよ。

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