完走断念映画二本立て感想文『呪葬』&『フンパヨン 呪物に隠れた闇』

大抵の映画はたとえ2時間の上映中110分寝たとしてもまぁいいかとスルーしてしまう俺であるが今ひそかな盛り上がりを見せているアジアンホラーの新作を2本連続で睡眠踏破してしまっては一応のホラースキーとしてなんだか悔しい。ということでいずれも本格的に怖くなってくる前に寝てしまってなんかよくわかんなかった台湾映画の『呪葬』とタイ映画の『フンパヨン 呪物に隠れた闇』、俺としては滅多に無いことだがリベンジ鑑賞を敢行してみた。その結果、ダメだった…やはり寝てしまったよ…しかし敗北の記録はきちんと残しておくことが勝利への道。覚醒状態での完走を断念したこのこの2本の感想を、今回は2本立て形式でお届けします。

『呪葬』

《推定睡眠時間(1回目):60分》
《推定睡眠時間(2回目):15分》

あらすじを読んだら祖父が死んだってんで実家に帰ったら怖いことが的なことが書いてあったのでいわゆるひとつの因習村みたいなことかなと思ったがとくに変な葬儀をやってるわけではなく葬儀とは別に常時暗い実家にオバケが出ていたようであったしそればかりか葬儀のために実家に帰る前の時点で主人公の生活疲れが激しいシングルマザーのコンビニ店員およびその腎臓病の娘を怪異が襲っていたので葬儀はなんかあんま関係がないらしかった。

じゃあなんなのかというとよくわからん。1回目はともかく2回目はかなり終盤まで起きて観ていたはずなのだが、語られるのは主人公とその父親の確執の物語ばかりで、祖父の死と主人公と父親の確執と主人公の娘がちょっと『残穢』っぽさのある実家で経験する幽霊襲われどどんな関係性があるのかが判然としない。中途覚醒の状態で観ていたラスト15分はわりかし悲惨な展開になるのだがそれもどうしてそうなったのか…もしかしたらその15分の間に理由は語られていたのかもしれないが、ラスト15分を観ないとなんでそうなったのかよくわからないというのも。それとも『八つ墓村』的なオカルト・ミステリーの線を狙ったのだろうか。とすれば日本ではNetflix配信になった台湾オカルトフェイクドキュ『呪詛』がツイッターで話題になったからと語感の似た邦題にして純オカルト映画的に宣伝した日本の配給がちょっと戦略をミスったんだろう。いや、これでお客が入ってんならミスってないんですけれども。

その結末からすればどうも本筋はそこではなかったような感じなのだが幽霊描写はなかなか怖く、ベッドの下から見える腐った死体のきったねぇ足とかイイ感じの気味悪さ。並んで吊された死体なんかも不気味でグッとくるが、惜しむらくはやはり軸がぐらぐらして今一つ気分がノらないところ。個々の描写はインパクトが強いのだが、実家に帰ってからは話もなかなか進まないし、素直に面白いとはちょっと言いがたい。

それでもさすがは流行の台湾ホラー、エグいところはしっかりとエグく陰惨ムードが全編を覆いそして結末には救いが無い。主人公のリアルな生活疲れ臭が奏功して(役作りもあるだろうとはいえこういうパッとしない一見普通のおばさんみたいな人を主役に抜擢するのもエラい。日本とか韓国とかアメリカだとどうしてもアイドルとか美人さんを主役にしてしまうのだ。これは怖さを減らすのでよくないことだと俺はおもいます)実家シーンの居心地もすこぶる悪く、観ていてげんなりさせられるあたり、ネガティブホラー大好きっ子として好感度大でございました。

『フンパヨン 呪物に隠れた闇』

《推定睡眠時間(1回目):40分+停電中断分》
《推定睡眠時間(2回目):20分》

呪いである。永い眠りから覚めて感動的な音楽が鳴っているのをぼんやり聞きながら(あぁ、もう終わりか…そんなに寝てしまったのか…)と思っていたら画面突然消滅。何が起こったのかわからないがこういう時には行動の早い俺なので早速廊下に出てみるとスタッフの人の「停電でーす。座ってお待ちくださーい」の肉声アナウンス。ということで席に戻って待っていると映画を観ていたイオンシネマの入っているイオンの防災センターから慌ただしい館内アナウンス、なんでも落雷によりイオンが全館停電の状態となり、イオンシネマの映写システムはもとよりエレベーター、エスカレーター、レジなど電気を使う全ての設備が使用不能に陥ってしまったらしい(イオンシネマの場内は薄ら明かりがついていたから非常電源モードだったのだろう)

たしかに無音の場内でボーッとしていると外からゴロゴロゴロゴロ~と映画館の防音設備を突き破って聞こえる。これが雷鳴なのだろうが、その日は雨の予報もなく家を出てイオンシネマに向かっている間はザ・快晴、夏の暑さだったほどなのに『フンパヨン』を観ている最中にゲリラ雷雨が発生して気温急低下、停電するほど激しい落雷がイオンを襲っていたとは…『フンパヨン』の冒頭は酔っぱらいの男がタイ山奥で崇められているマニアックな神様を「ケッ! 神様がな~んだってんだ! こいつぁいただいていくぜ!」と神様の供物を僧侶たちの警告を無視して食ってしまい、その夜釣りをしていたら怒った神様により両目のまぶたと唇を釣り針で刺されてギュ~ってされるシーンだったので、きっとこんな映画はけしからんとこのなんとかという恐ろしい神様がゲリラ雷雨を呼んだのであろう。タイホラーの新作公開を待ち望んでいた俺がこれほどまでに寝てしまったというのもおそらく呪いだったのだろう。恐ろしい神様である。

しかし、我々神をも恐れぬ秘境ホラー探検隊は再び『フンパヨン』を観るために映画館に向かった。前回観たイオンシネマはスクリーンの明度が低く夜のシーンが多いこの映画では眠くなってしまったが(※おじさんのあかちゃんなので暗い画面が続くと眠くなる)、今度は別の劇場だからその点は多少なりとも軽減されていることだろう。しかし…俺は頑張ったと思う。普段は身体のネイチャーに逆らわず眠くなったら素直に寝るが今回は精神のパワーでネイチャーに反して起きていようとした。でも結局やっぱ寝た。この映画の呪力はそこまで強いということだろうか。こうなると逆に全編起きて観ていた人が心配である。俺は寝ていたから危険なシーンは目にしていないかもしれないが、起きていた人は呪いのシーンを観てしまったんじゃないだろうか。起きていた人たちに釣り針が襲いかかったり落雷が降ってきたりしないことを祈るばかりである。

まったく映画の感想になっていないが『フンパヨン』という映画もまたなんだかとりとめの無い映画で色んな人が出てきて色んな思惑が出てきて色んな幽霊? 悪魔憑き? 幻覚? 神の怒り? ゾンビ? それともオカルトを装った殺人事件? なんかよくわからないのだがとにかく色んな怪異が山奥の貧乏村とカルト寺院を襲ってどんどん人が死ぬ。そして最終的には『死体と遊ぶな子供たち』とか『ザ・チャイルド』みたいな荒んだバッドエンド。冒頭シーンから想像されるようなゴア描写は意外やなかったのだが、誰も幸せにならないネガティブの天丼が嬉しいホラーであった。やはりホラーたるもの人が不幸にならなければいかん。

夜になると動き出す人骨の入った石像墓、藁人形的な呪物で『エクソシスト』化する村の美人さん、出家したくせに知的障害者をいじめる陰湿僧侶たち。あとはゴアがあれば完璧だったと思うのだが、ゴアがなくてもこういうタイホラーが見たかったというシーンと展開連続の、これも観ているとげんなりしてくるなかなかの田舎厭ホラーであった。

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