あんがい戦わない映画『ポライト・ソサエティ』感想文

《推定睡眠時間:40分》

日本の配給会社が洋画に付ける飛ばし惹句みたいなものは普段あまり気にならないというかどちらかと言えばそういう悪ふざけは好きな方ではあるのだがこの映画の「カンフー×ボリウッド」とかいうのはいやそれは二重にダメだろって感じでまずイギリス単独資本の撮影はイギリスで言語も英語の映画だからボリウッド映画じゃないし更にダメなのはボリウッドというとハリウッドに倣ったインド・ムンバイの俗称およびそこで生産される映画のことだがこの映画『ポライト・ソサエティ』の主人公姉妹はイギリス在住のパキスタン系(ハーフ)なのであった。いやそれはいくらなんでも。

ただでさえヒドいのによりにもよってインドと政治的に対立しているパキスタンの人の出てくる映画をボリウッドと呼んでしまうのはさすがにというか…まぁ日本でやってるインド料理屋の大半はパキスタンの人がやってるなんて俗説もあるぐらいだし人種的にはほぼ同じと言われたらそうかもしれないが、たとえそうであってもボリウッド映画的な群舞シーンが出てくるわけじゃないしこの飛ばし惹句はカスみたいに無神経な俺でもどうかと思う。あと主人公はアクロバティックなアクションを行うスタントマン志望なだけでカンフー要素もあんまない(ダメじゃねぇか!)

というところを気にしなければ適度に面白い映画だったように思う。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』みたいな初期ガイ・リッチーを思わせるコミック的なテロップの使用や軽快なトーンが特徴的な一種のジュブナイルという感じの映画で、女子高に通うスタントアクター志望(弱い)の主人公がいろいろあって芸術家の夢を諦め金持ちの家に嫁入りしようとしているお姉ちゃんをきっと悪人に違いないいや間違いなく悪人だ間違いないお姉ちゃんの彼氏&その母親から奪還せんとするストーリーはわりとアメリカのキッズムービーとかニートもの、『ママ男』とか『僕の大切な人と、そのクソガキ』とかを思わせるところだ。もっともこちらはもっと洗練されてますが。

主人公がパキスタン系のスタントアクター志望女性という点だけは目新しいもそれ以外はありきたりなウェルメイド、という点は良くもあれば悪くもあって、ウェルメイドだからすーっと脳に入ってくるといえばそうだが、逆にすーっと脳を抜けてしまって面白味がないともいえる。俺はどちらかといえば後者で、だってまぁ…カンフー×ボリウッドなんて言われちゃったらさぁ、ねぇ、期待するでしょそういう濃いのを! でもないんだもんどっちも! ほぼ! 薄味! なんかパキスタン式の夜会のゴージャス衣装とかそういうのはあるけどでもそれボリウッドじゃないわけだしな結局…。弱いなら弱いなりに主人公が工夫したり頑張って戦うシーンが多くあればいいがストーリーは現実的なので敵的な存在と物理で戦うところがあんまり無いんだよなぁ…っていうかアクション映画じゃないからなこれ。

悪くはないと思う。思うがしかし…これはちょっとポスターとか予告編で期待させすぎだ!!

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