《推定睡眠時間:25分》
『エイリアン』シリーズに何を求めるかは人によって違うだろうが俺の場合は監督の美意識とか哲学で、そんなこと言ったら『エイリアンVSプレデター』とかはどうなんだという話になるがあれはほらお祭りっていうかさ…ゲームで言うところの『ザ・グレイトバトル』みたいなもので別枠、いくら『ザ・グレイトバトル』が面白いからといって(「ザ・グレイトバトル」に出てくる)ウルトラマンの魅力を『ザ・グレイトバトル』に求める人はいないかどうかは知らないがいたとしても相当な少数派だろう。そんなわけで俺にとって『エイリアン』シリーズとは作り手の個性を観るシリーズであり、したがって超俺的シリーズ一番好き作は初期デヴィッド・フィンチャーのすべてが詰まっているといっても過言ではない『エイリアン3』なのだ(それはそれで相当な少数派かもしれない)
それでそういう派閥に属する俺からすると『エイリアン:ロムルス』、ぶっちゃけそんなに面白い映画ではなかった。いや、面白いは面白いけどB級SFホラーとして普通に面白いだけってことで、今回は監督がシリーズ歴代監督のリドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャーにジャン=ピエール・ジュネと比べて作家性が著しく薄い『ドント・ブリーズ』などのフェデ・アルバレス。この人の映画はどれも閉鎖環境を活かしたアクションが面白いが、そこに美意識とか哲学とかがあるかというとそういうわけではなく、アクションの入ったホラーものを撮らせれば外れはないという職人監督がアルバレスである。
だからこの『ロムルス』も誰が観てもきっと面白いウェルメイドな娯楽作に仕上がってはいると思うが、『エイリアン』の名前を冠してそんな日高屋みたいな作品を出されてもな…いや面白いけれども…でもそれなら別の映画でもいいしなぁ『ライフ』みたいなああいう、とか世評のクソ低さに反して『エイリアン:コヴェナント』がかなり良かった逆張り職人の俺としては思うのだ。だから過去作オマージュとか焼き直しネタとか設定の繋がりとか(一作目のわりとすぐ後の出来事という設定)ファンなら嬉しいですよね~ですよね~みたいな要素はたくさんあるんですけど、これ観てて頭に浮かんだのは『エイリアン』シリーズ作じゃなくて『エイリアン』亜流の『リヴァイアサン』とか『エイリアン・ドローム』とかの方だったな。こういう亜流作は『エイリアン』シリーズの美意識とか哲学は無い代わりにB級娯楽を徹底してやろうとしてるわけで、それと同じ空気が『ロムルス』にもあったんじゃないだろうか。
あとあれね、ホラー&アクションのシチュエーションがなんかゲームっぽかったわ。影響関係が逆だがケータイ持ってるオッサンがゲーム画面に雑合成されたCMを覚えている人はもうインターネット中年のPS2ゲーム『エクスターミネーション』とかさ、ゲーム版の『遊星からの物体X エピソード2』とか、『バイオハザード:コード・ベロニカ』とかっぽいところもある。音を立てないようにフェイスハガーの群れがいる部屋を通過するシーンとか無重力空間を浮遊するゼノモーフをパルスライフルで撃ちまくるシーンなんかいかにもゲーム的だよね。そういうところもB級的な面白さに寄与してるんだろう。それにしても今回の感想にはやけに:の付くタイトルが出てくるな!
宇宙世紀の底辺労働者たち(その寄宿してる星は『ブレードランナー』風のデザインなのだが、それはリドリー・スコットが『ブレードランナー』の没カットで『エイリアン』と『ブレードランナー』の世界を接続していたからだろう)が主人公なわりにはどいつもこいつも身綺麗で労働のニオイが少しもしないところなんか役者の汚しメイクがひとつの特徴だった『エイリアン』シリーズの新作としてどうなのかと思うが、まぁそういう美術面のこととかはアクション&サスペンス&ホラーの連続で面白いから大抵の人はどうでもいいところだろう。うむむ、いや、しかし、独特のビジュアルで魅せるというのはこのシリーズの核心だったのではあるまいか…まぁいいか。フェデ・アルバレスの映画にそんなもん最初から期待してないし。
それにしてもゼノモーフはシリーズを重ねるごとに弱くなるな。最初は全然倒せなくて次は宇宙海兵隊が壊滅に追いやられてその次はたった1匹の犬エイリアン(ディレクターズカット版では牛)に十数人ものオッサンたちがひたすら怯えていたのに、『ロムルス』ともなると銃を触ったこともない素人の若造がパルスライフルで撃ち殺し放題である。宇宙最強の生物とはいったいなんだったのか…B級SFとして確かに面白いが、なんかいろいろと考えさせられてしまう映画だったなこれはー。
そういや自分はこれ観てLILY-C.A.T.を想い出しちゃったなあ…
観たことないからわからないですけど検索したら面白そうっすね…そういうのこそ配信してくれたらいいのに!