【ユーネク】『パンダザウルス』感想文

※いつもはここに予告編を貼りますがこの映画の予告編は見つかりませんでした。

《推定ながら見時間:65分》

再生ボタンを押すとこの映画の制作プロダクションであるところのポロニア・ブロスのロゴが出てなにやら少しだけグッと来る感じになってしまった。マーク・ポロニアといえば世間的にはいわゆるZ級サメ映画職人として知られている映画監督だろうが、俺がマーク・ポロニアを知ったのはポロニア最初期の作品にあたる自主スプラッター『Hallucinations』でのこと、この頃ポロニアはマークとジョンの兄弟で映画制作を行っていたためマークの単名ではなくポロニア兄弟としてその名が脳のごくごく浅いところに記録された。その後もポロニア兄弟は精力的にC級ホラーを作り続けるのだったが2008年にジョン急死。かくしてマーク・ポロニアは単独で映画制作を行うようになり、Z級サメ映画の雄として名を馳せることになるのであった。

もうジョンはいないのに今でもポロニア・ブロスの屋号を使い続けているなんて。そりゃあまあプロダクション名なんてフルムーンでもなければそう頻繁に変えたりするものでもないだろうが、それでも今もマーク・ポロニアの映画にはジョンの血が通っているのだなとか思えてイイ話である。イイ話じゃない。全然ない。映画が始まったらそんな感慨は粉々に粉砕された。なんだこれは…なんだこれはああああああ!!!!!

筆舌に尽くしがたいヒドさである。こう…これはどこから文句を言ったらいいのだろうか? パンダっぽいカラーの恐竜パンダザウルスのストップモーションがヒドいとかそういうのもあるが…いや、そんなことはむしろ些細なもので、もはや映画の体を成していないという根本的な問題になにはなくとも言及すべきだろう。パンダザウルスを作った動物園の経営者夫婦の一応フェイク・ドキュメンタリーの体裁を取るこの映画だが、フェイク・ドキュメンタリーといってもPOVではなく、テレビのバラエティ系ドキュメンタリー番組のフェイクといえば伝わるだろうか、ほらあれだよつまり『世界まる見え テレビ特捜部』のフェイクみたいな感じだな。

そういうやつなのだがそういうやつで統一されているわけではないのでシーンごとに普通の劇映画っぽくなったりフェイクドキュメンタリーっぽくなったりするしコアアイデアがパンダと恐竜が合体したら強そうというめちゃくちゃ頭の悪そうなやつなのにシナリオにまるで整合性がないのでめちゃくちゃ頭が悪そうなのに観ててもストーリーがよくわからない。ストーリーがわからなくてもまぁパンダザウルスが暴れていろんな人を食うシーンとかがあれば別にいいのだがそういうやつもほぼほぼ無い。ていうかパンダザウルスが暴れない。パンダザウルスは粘土で作った人形なので動かすのが大変でアクションシーンとかは撮れないのだ。だから映画の三分の一くらいはモノホンの動物園で撮ってきたパンダとか鳥とかの映像で残りの三分の二はずっと人(ポロニア本人含む)がよくわからない長台詞を話しているシーンである。なんで作ったの?(映画を)

ジョンとマークが一緒に作っていた頃のポロニア映画は安いなりに創意工夫や可愛げがあって結構面白かったが『パンダザウルス』ともなるとそんなものもう微塵も感じられない。それだけジョンの存在が大きかったということなのか。でもジョンの存在ったって死んでからもう十数年だしその間にマーク50本くらい映画撮ってるんだから普通そしたら上手くなったりするだろ映画が。なんで逆に下手になってるんだよ。下手どころか映画の基本形すらできてねぇじゃねぇか。あと映画は全然面白くないのに機材は最近のものを使ってるからポロニア兄弟時代より遥かに高画質になってるのがなんかムカつくよ!

パンダザウルスとかいう発想も観客の目を度外視した画作りもまるで幼稚園児が無邪気に画用紙に描き殴ったおえかきのようなのである種の前衛映画として観れば価値を見出せるかもしれないが…いや、これはもう感想を書いても仕方が無いな! 絶対伝わらないからこのヒドさは! みんなにも観て欲しい! 観て心から後悔してほしい! 本当にヒドい映画は文章化できない! そう思えば力のある映画と言えないこともない! ウソです!!!!!!

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ぬのぶくろ
ぬのぶくろ
2024年9月22日 12:12 AM

こちらの記事で興味を惹かれて観賞しました。こういう形での未知の映画との出会いというのは得難いものがありますね。つらい。とてもつらい。ありがとうございました。