いかん前回から10日ぐらい間が空いてる。このままでは未完のまま年をまたいでそのまま忘れそうなので慌てて書くことにしますカナザワ映画祭2024感想その2。今回は短編6本。期待の新人監督枠の4本を含む残りの6本は次を待て! たぶん頑張って近日執筆! まぁ、そう書いといて来週以降とかでしょうね俺の場合は。
『ここにある天国(On Earth,as it is in Heaven)』(2023)
《推定睡眠時間:0分》
アメリカの映画。時はチラシによればゴールドラッシュの頃、汚いオッサンが目覚めたら木に繋がれてたかなんかで服は血に汚れてるしいったい俺は何をしたんだ? と記憶を糸を辿る。台詞が極端に少なく小綺麗な映像だけで見せる雰囲気映画の観が強くあんまり面白くはなかった。監督のマイケル・カドリッツという人は結構ハリウッド活動歴の長い役者さんらしい。
『ジュムリ・タライヤン(JHUMRI TALAYIAN)』(2023)
《推定睡眠時間:0分》
なにこれ! わけわからん! エロビデオ大好きオッサンがエロい妄想ばかりしていたら地方から楽器かなんか売りに来た人がたまたま脳天を破壊されて発狂、革命を目論む秘密結社の記者会見に紛れ込みその場に居合わせた人々を虐殺する! エロオッサンと発狂虐殺のエピソードにまったくが関係ないのでリアルに途中で違う映画になったのかと思った(短編は何本かまとめて上映されるため)。テイスト的にはクリストフ・シュリンゲンズィーフの『ユナイテッド・トラッシュ』が近いかも。わけはわからんがシュリンゲンズィーフ同様に現代の自国社会に対する怒りやラディカルな批判のようなものはエログロナンセンスの中にひしひしと感じられるインド産スラップスティック・スプラッターのパワフルな怪作、俺の中ではこれが今年のカナザワ映画祭短編部門のグランプリだな。監督はウトカルシュ・トゥクラルという人。
『魔物(DEMONS)』(2023)
《推定睡眠時間:0分》
こちらもインド映画。ジャンキーの若者が知人の持ち込んだ新しいブツを試したら大爆発して室内が『ブレインデッド』ぐらいめちゃくちゃな血と臓物の海になる。実はその知人はジャンキー撲滅団の一員であり、腐ったジャンキーどもを一掃するために人体爆破ドラッグを配り歩いているのであった。人体爆破ドラッグという点は『吐きだめの悪魔』を彷彿とさせるが凝った室内美術や圧巻の血の海描写で『吐きだめ』的なチープ感はなし、雰囲気も迫力もしっかりある力作なので、インディアン・スプラッターなんて聞いたことがないのだが(規制とかあるんだろうか)、この監督アーデシュ・プラサドにはぜひとも長編のスプラッター映画を撮ってもらいたいとおもう。
『バットシット・クレイジー(Batshit Crazy)』(2023)
《推定睡眠時間:0分》
これまたインド映画。中国系ぽい見た目の人が夜の街で不良たちに追いかけられているがこの人はインド北部の中国系っぽい見た目の民族の人で、時はコロナ禍ということで「中国人のせいでこうなった!」と憤る野蛮人たちに中国の人と勘違いされて追われているのであった。だがいくら「俺は中国人じゃなくてインド人なんだって!」と説明してもわからない不良たちにやがてインド北部の中国系っぽい見た目の民族の人ブチギレ、決死の反転攻勢に出たところ思いがけない結末を迎える。コロナ禍と人種差別、バイオレントなアクションとユーモア、そしてちょっと驚くオチをブレンドした好編。
『ジャーロ(GIALLO)』(2022)
《推定睡眠時間:0分》
『バットシット・クレイジー』と同じヨゲシュ・チャンデカールという監督のコロナ禍映画第2弾(他にもあるかは不明)。夜道を歩いていた女の人がコロナウイルスのマスクを被った男に執拗に追われ…という、なんか新型コロナの啓発CMみたいな映画で、ジャッロ映画のスタイルで新型コロナの恐怖を描く。当然ながら神出鬼没の殺人鬼は新型コロナウイルスの安直なメタファーだが(殺害手口が窒息なのはCOVID-19の直接の死因がほとんどの場合呼吸困難だからだ)実は殺人鬼から逃げ惑っていた主人公が無症状の感染者であり、彼女の行くところ行くところに殺人鬼が現れるのは彼女自身がコロナウイルスを振りまいていたからなのだ…というオチは気が利いていてナイス。散りばめられたバーヴァ、アルジェント、フルチといったジャッロ・マエストロたちのオマージュも楽しかった。
『蹄の悪魔(HOOVES)』(2024)
《推定睡眠時間:0分》
スリランカの映画でスリランカの民間伝承をモチーフにしているらしい。精霊とかそういうスピっぽいのは信じないよと言っていた都会派な男の車が田舎道でパンク、そこに近づいて来た老人の正体は…。監督のアカシュ・スナクマラさん曰く自然を大切にしてほしい的なことを伝えるために作った映画とのこと。ホラーとしてはそう怖いものではないのであまり面白くないが、自然保護の映画と見れば現代人への警鐘はなるほどストレートに伝わってくるので、どちらかといえば『もののけ姫』みたいなダーク・ファンタジーとして理解すべきかもしれない。FLASH的なヘタウマ残酷アニメで描かれる過去パートは味わい深くて良かった。