田中圭ベストアクト候補映画『あの人が消えた』感想文

《推定睡眠時間:5分》

田中圭が脇役で出ているのだがたぶんはじめて田中圭の芝居を良いとおもった。『そして、バトンは渡された』などこれまで映画では二枚目ポジションでの登板が多かった田中圭だが今回はカスみたいななろう小説を書いてる配送ドライバーとかいう役柄のコメディリリーフ、人は悪くないのだが頭は悪いそこらへんのあんちゃん感がリアルだったし、主役格ではなくバイプレイヤーとしてたまにちょっと面白いことを言う、ぐらいのところがたぶんこの人には合ってるんじゃないだろうか。「ありがとうございます、コップンカップ」には不覚にもちょっと笑っちゃったよな。どこでその台詞が飛び出すかは言うまでもなく観てのお楽しみだ。

でその田中圭の同僚が主人公の高橋文哉、この人もなろう系小説のしかも転生系のファンという設定なのだがある日のこと配達先のマンションで大好きななろう作家本人らしい人と出会ってしまう。興奮のあまり「もしかしてあの作家さんじゃないですか!?」と配送員にあるまじき発言をしてしまいなろう作家らしき北香那を困らせる高橋文哉。そのマンションは彼の担当エリアなのでこれからも憧れのなろう先生に会えるのか~と有頂天であったが、あくる日同じマンションに荷物を届けに行くとそこには例のなろう先生の家のドアをガチャガチャやる不審な男・染谷将太がいた。俺だったら「恋人とかなんだろうな~」と軽くスルーすると思うしだいたいの人もそうだと思うがなぜかその行為一つだけで高橋文哉は染谷将太をストーカーではないかと疑い始め、配送員としてまったくあるまじきことにその立場を利用して染谷将太の正体を探り始めるのであった。お前の行動の方がストーカーっぽいだろ!

まぁ結論から言うと楽しめる映画ではあったけどなろうが重要な小道具として出てくるぐらいなので三文小説的おもしろさという感じでなんというか『かまいたちの夜』のメインシナリオだけじゃなくていろんなサブシナリオも遊んでる感覚になる映画だった。序盤は一応正統派のミステリーの体裁を保っているが中盤からはどんでんどんでんどんでん返しの連続連続大連続。ジャンルもあっちへ行ったりそっちへ行ったりで某タレントが出てきた時にはピンクのしおりかと思っちゃった。なんでお前が出てくるんだよあお前とか言ってごめんなさい。とにかくそういう映画だ。

そりゃそういうことをされたらね楽しいは楽しいよ。安っすい娯楽だな~とは思うが目まぐるしく展開もジャンルも変わっていくわけだから飽きる暇がない。スベってるように感じられた箇所は決して少なくないが何もやらずスベらないよりは何かをやってスベった方が娯楽映画としては正しいよな。観た後に確実になんも残らないとしてもともかく106分ずっとなにかしら面白い(ような)ことが起こり続けるので暇つぶしとかストレス解消にはなるだろうし、まったく何も知らずに観たら案外サプライズかもしれない。その意味では『サマータイムマシンブルース』とかの枠の映画かも? というのは言い過ぎだろうか。う~ん、言い過ぎ!

ネタバレ可ならもう少し書けることはあるがネタバレをしてしまうと面白さが半減する映画なのでネタバレを避けたいやさしい俺に書けるのはこんぐらいだな。テレビ的なわかりやすさ最優先の演出はチープでだせぇと思ったし、役者陣も染谷将太や菊地凛子など実力派を揃えているわりにはその良さを引き出せているとは言いがたいけれども、観客を楽しませてやろう楽しませてやろうという意気込みはバシバシ伝わってくる映画だったので、その意気込みが空回りしている感はやや強めだが、悪くはないとおもいます。

※なんかこれ原作なしのオリジナル脚本であることを売りの一つにしてるぽいんですがそんなのことが売りになるってメジャー邦画の行き詰まり感すげぇ。

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