人でも喰わなきゃやってられん映画『人肉ラーメン アンカット版』感想文

《推定睡眠時間:30分》

人肉ラーメンというが最初の方のおそらく人肉で作られたなにかしらの麺料理を男が食べてるシーンを見たらなんかモツみたいなどっしり感のある麺だったのでこれラーメンなのか? と思ってタイ(製作国)の麺を検索してみるとセンヤイという幅広でもっちりしたほうとうの米麺バージョンみたいなのがタイにはあるようなのでラーメンかどうかは結局よくわからなかったがこの映画の主人公はセンヤイ麺を使った料理を店で出しているらしいということがわかった。俺などは軽度の小麦アレルギーがあるので生煮えの博多とんこつラーメンや太麺など小麦感の強い麺を食べるとお腹を下しがちであまり食べられないのだが、太麺といっても米麺ならアレルギーの心配なし、今度タイ料理屋さんでセンヤイ料理食べてみようと思います。それでう~ん美味、これは作ってくれた人にお礼を言わないとなと思って調理場にこんちわーって入るとギャー生きた拷問された人間が鍋の上に宙吊りにされててそこから垂れる何かしらの液でダシを取ってる! みたいなそういうことになるんだね。これはそういう映画でした。そういえば昔『探偵ナイトスクープ』で自分の汗で塩ラーメンを作って食べるとかいうスカトロみたいなネタがあったよ。

まぁ人肉でいろいろ作ってみるグルメホラーというのは映画も齢100歳を超えておりますからそれなりにありますと書いてはみたものの思いつくのが人肉で肉まんを作る『八仙飯店之人肉饅頭』と人肉でハムを作る『ヴィーガンズ・ハム』と人肉の姿焼きを作る『コックと泥棒、その妻と愛人』ぐらいしかなかった。『香港人肉竹輪』のタイトルも頭に浮かんだがあれはたしか人肉で竹輪を作るわけではなく人間を串刺しにしたら竹輪みたい(?)という映画だったんじゃないかな。『香港人肉厨房』は『実録・幼女丸焼き事件』と記憶が混ざっているがあれも人肉料理を作る映画ではなかったはずだ。直接的な描写はほぼないが脳みそでシチューを作るのは『アナザヘヴン』。こうして見ると人肉料理ものの映画は1990年代に集中している気がするがあの時代の映画界にいったい何が起こっていたのだろうか。

で他はともかく『八仙飯店之人肉饅頭』の影響はおそらくあるだろうというのがこの『人肉ラーメン』、人肉といっても人肉で米麺は作れないので捕獲した男を拷問して出てきた汁をスープに入れたりしているらしいが、『八仙飯店之人肉饅頭』が人肉で肉まん作ったら美味いやないかという料理人の美食追求の結果として人肉まんを作ってたわけでは全然なく単に行き当たりばったりの殺人犯が死体処理のために人肉をミンチにしてついでに肉まんに詰めて売ってただけだったように、『人肉ラーメン』もどちらかといえば死体処理というか、殺しはしないで拷問して汁を取るので厳密には死体処理ではないのだが、ともかく降りかかる火の粉を振り払う感じで主人公の薄幸ウーマン料理人は男を捕獲し拷問汁でなにかしらの麺料理を作っているのであった。

「これがわが一族に代々伝わる秘伝の調理法…」などと冒頭におばあちゃんのナレーションが入るが、これはなんというか主人公が人喰い一族ということではなくまぁ寝ていたからよくわかっていないが男のせいで苦労をさせられたらその男を拷問して汁取って麺料理にしてしまいなさいというこの一族の女たちに伝わるサバイバル術のようなもののようで、そのため『八仙飯店之人肉饅頭』と違ってちょっと切ない。そうやね…カス男は拷問して汁取ってスープにでもしないと生きてかれんわ…そんなことはない気もするが、恵まれない境遇ゆえそう思い込んでしまった女の人の悲劇の物語なのでこれでいいんである。

そんなことよりも今回の上映バージョンはアンカット版ということでゴア描写だ。『人肉ラーメン』自体は結構前に日本でDVDリリースされているがその際のバージョンはゴア描写をトータル5分ほどカットしたものとのこと。そっちの方は見てないので詳細な比較はできないが、まぁどのへんがカットされたかは大体わかる、中でもこれは確実にカットされたであろうと思われるのは捕獲した男が逃げないように両手十本の指の爪に釘を打ちつけて床に磔にするショットだろう。いて~! 磔にするなら手の平とか手首とかもっと外れにくい部位があると思うのだがわざわざ指の爪! 釘が爪を貫き赤黒い血が噴き出すあたり実に嫌だが、そんな外そうと思えば外せないこともなさそうな箇所に釘を打つので磔にされた食材男が頑張って血でぐしゃぐしゃになりながら釘を引き抜こうと手を上下させ爪および指先が崩壊、したところに主人公が現れもう一度同じ箇所に釘を打ち直してもう指先ぐっちゃぐちゃ! 素晴らしく陰湿なゴア描写であった。

タイといえばデモなので唐突にデモ隊と警官隊の衝突のシーンになってなにやらクラブ的な音楽とMV風の演出になるなどよくわからんところも多いが(抑圧と抵抗を表現したかったのだろうか?)ゴア描写はさすが死体写真の国タイなので気合い充分、陰鬱な物語も今風に言えばエモい…と言えなくもないこともないかもしれないしフェミニズム的と言えなくもないこともないかもしれない気もしないわけではない。まともかく残酷な映画が観たいとか人肉シリーズは全部観たい! という人ならきっと観て損のない映画ではないでしょーか。

Subscribe
Notify of
guest

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments