《推定睡眠時間:40分》
『ヴェノム』シリーズには気楽に楽しめる大味アクション映画ぐらいの印象しかなく元々アメコミ映画に興味が薄いというのもありこの『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は観るつもりがなかったのだが東京国際映画祭の隙間時間で観られる映画を探してたらまだ観てないのはこれぐらいしかなかったのでとりあえずということで劇場に入ると上映形態がIMAX、なにも(俺にとって)こんな程度の映画をわざわざIMAXで観るのもなぁ…と思いつつそれでしかやってないので仕方が無くIMAX料金を払ったわけだが、そういえば俺がIMAXで観る映画というのは「これこそは!」みたいじゃなくそんな興味ないけど一応観とくかみたいなわりと雑なB級っぽいのが多い。『イコライザー2』とか。俺にとってのIMAXというのはどうもそういうもののようだった。いやはや何事も縁ですな。
で『ヴェノム』ですがそもそも俺がこのシリーズに期待してないというのは一作目が公開されるときに「最悪のヒーロー誕生」とかなんとか書かれていて中途半端に話を聞くにアメーバ状の人喰い宇宙生物がヴェノムことシンビオートということらしかったのでふーんダークヒーローものなのかなぁとか思って観たらかなり予想に反してアメリカの『ど根性ガエル』というべきコミカル編、たしかにヴェノムは人を食うが勝手にいろいろ食っちゃうわけではなく人を殺したりする悪いヤツだけ選んで食う結構話の分かる生物だったし、あと寄生したトム・ハーディと仲良しでツンデレみたいなやりとりをするので可愛い、ってなわけでそれはそれで面白かったのだがあれ最悪な感じとくに無くない…? と肩透かしを食らったからなのであった。
続く2作目『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は悪役カーネイジ(ヴェノムと同じ人喰い種族)がヴェノムの代わりに狼藉を働いてくれるので人死におよび出血量は前作よりも多く絵面が派手、なのに上映時間がこのご時世に90分台という思い切りの良さだったので空いた時間でサクッと楽しめる快作として個人的には気に入っているが、ハハハハあー面白かったの気分しか観た後に残らないのでとくに次回作が観たくもならず、ラストでスパイダーマンとの対決を匂わせていたものの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で対決展開がキャンセルされてしまうという興ざめもあり、そんなこんなで『ヴェノム』シリーズはもういっか…って感じになっていたんである。
要するに良くも悪くも大味で軽い『ヴェノム』シリーズなのだがその路線はシリーズ最終作が一応謳われている(でもソニーのマーベル映画やみくもに続編化したりしないから本当にこれで終わりだと思う)この映画でも変わらず開幕早々とりあえずヴェノムに「マルチバースはクソ!」と軽口を叩かせそこらへんのワンちゃん虐待ギャングをひとっ喰いするとそうだエリア51へ行こう! というわけでびょ~んと飛んで飛行機の外側にしがみついてそこで今回のヴィランの手下と対決して飛行機墜落(百人ぐらい死んでる)、あんがい手強い手下から逃げながらちょうどいいところに居てくれた馬に寄生して馬ヴェノムで荒野を爆走、するとそこに故あってヴェノムを追っているエリア51のオスプレイ空挺部隊(カッコイイ)が現れ川に流されながらまたしても戦闘…という見せ場に次ぐ見せ場のB級活劇感で、こういうのを昔風の言葉で快調と言うのではないかと思う。
その後もヴェノムはエリア51を目指して旅を続け途中でUFOビリーバー家族と出会ってなごやか交流をしたりラスベガスのカジノで遊んでたらたまたま遊びに来てた近所のコンビニのおばちゃんを見つけて一緒にどんちゃんしたりとまったく軽快、そんな風に遊んでばかりいるのに今回も上映時間は109分しかなくその内の16分はエンドロールだというのだからシリーズ最終作なのにあんま濃いストーリーも大きな盛り上がりもなく、なにか大作アメコミ映画っぽさを期待する人は今回もまた前2作同様に肩透かしを食らうことであろう。
俺としてはこんな軽い娯楽映画は大歓迎なので思ったより楽しめてよかった。後半はもうほぼ完全に寝ているのでいちばん面白いであろうところは観ていないわけだが、それでも前半だけで充分楽しい気分にしてもらえたのだからなかなか立派な「普通の映画」じゃあないだろうか。わざわざIMAXで観るような映画とはやっぱり思えないが、こんな普通の映画をIMAXで観るという無駄な贅沢もまた楽しいもんである。
それにしてもトム・ハーディの一人芝居は撮影中の様子を想像すると笑ってしまう。映画じゃあCGでヴェノム付けてるけどあれ現場ではグリーンバックの前で一人でノリツッコミみたいの延々やってるわけだろ。そう考えたらトムハってば演技派~。アル・カポネの晩年を演じた『カポネ』とかでもかなり芝居作り込んでたからロバート・デ・ニーロみたいになりたい人なんじゃないかしらね。トムハのお芝居を見てるだけでも充分おもしろい映画だと思いますよあたしゃあ。