まったく意味がわからない映画『ミュージック』(2023) 感想文

《推定睡眠時間:45分》

まったく意味がわからなかった。とにかく意味がわからない。あまりにも意味がわからない映画だったのでわからないということしか感想が書けないのに逆にわざわざ感想を書く気になってしまった。本当に意味がわからないのだ。最初はたくさん寝ているから意味がわからないのかなと思ったがどんなストーリーだったのだろうと映画感想サイトのフィルマークスで他の人の感想を読んでみたら8割の人が意味がわからないということを書いていて残りの2割はなんかポエムみたいなのを書いていたから寝ていなくても意味がわからない映画らしかった。

意味がわからない映画にもいろいろある。説明が足りていないから意味がわからない映画。これはインディーズのホラーとかにたくさんあるが一つ例を挙げるならばダリオ・アルジェントの『インフェルノ』とかだろうか。いやあれはわからせる気がない意味がわからない映画なのか。カルト的な人気を狙ってかあえて意味をわからなくしている映画もある。この種の映画ですぐに頭に浮かぶのは『サウスランド・テイルズ』だな。あえて意味をわからなくして観客に考察を要求する映画は鼻持ちならないものも多いが『サウスランド・テイルズ』は意味のわからなさが面白いし音楽がカッコイイのでわりとオッケーな方。そもそも意味を考えていない映画というのもある。これの代表格といったらやっぱりシュルレアリスム映画の『アンダルシアの犬』。意味から逃れることを目的としているのだから意味がわかってもらってはむしろ困るというアート映画である。

しかしこの『ミュージック』は…どの意味のわからなさなのか? それさえもわからないので本当に意味がわからない映画である。人が現れては一人また一人と消えていく。なにかしらのストーリーはあるようだがシーンの繋がりが不明瞭にもほどがあるので全てのシーンがどのような意味を持つのかわからない。台詞はほとんどなくたまに名前を呼ぶぐらい。『ミュージック』というタイトルだけあって所々で登場人物が歌う。映像はわりかし整っているがアート的に完成されているというわけでもない。まるで映画になる前のイメージボードのような映画である。このような映画をゴダールという人は無駄にたくさん作っていたからタイトルはゴダールの『アワーミュージック』に倣ったものかもしれない。だからなんなのか? だとしたらなんなのか? まったく意味がわからない映画である。

ここまで意味がわからないといっそ清々しさすら感じてしまう。いくら寝ても意味のわからなさに変わりはないのでいつ寝ても構わない点で睡眠導入映画として使える。赤ちゃんの情操教育などにもいいかもしれない。そう思えば必ずしも悪い映画ではないし、実際、映画館を出た後はまったく意味がわからなかったが不思議と晴れ晴れした気分になったものだ。意味はわからないがなんとなく「とりあえず大丈夫」的な感じが漂っていたからだろうか。意味がわからなくても人生とりあえず大丈夫。とにかく何度も書いているが意味がわからない『ミュージック』。意味がわからないだけの気分になりたいときにはちょうどいい映画かもしれない。

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