《推定睡眠時間:2分》
実写映画版『ソニック』シリーズも第三弾、北米での興行成績が上々であることから今後もシリーズ継続は間違いなく、いやぁデカい神輿になったもんだ。アメリカでは第一作目から好評だったとはいえ日本では公開時期がコロナ禍ど真ん中、そのためもあって人影まばらなシネコンで寂しく第一作目を鑑賞、ソニックのデザインがポスプロの段階でファンの苦情を受けて変更(ぜんぜん可愛くなかった)という紆余曲折も知っていたこともあり、ゲームの映画化としては満点といえる出来映えにいたく感動しつつ、もっとみんなにこの映画の面白さが伝わればいいのになぁとガラガラの客席を眺めて歯がゆく思ったのであった。
それが今やハリウッドメジャー・パラマウントの看板シリーズといっても過言ではない作品にまで映画ソニックは成長したわけである。ハコはちょっと小さかったが3度目の正直、今回は客席にキッズ連れのファミリーも多く、ようやく本来の客層にソニックが届いたという感じだ。映画を観ながら俺は今このときにも日本のどこかでシリーズ生みの親にして数年前にインサイダー取引で有罪確定(執行猶予付き)した中裕司が劇場でこの映画を観て客席のキッズ(+往年のセガファン)が楽しそうにしている光景に満足げな表情を浮かべているのかもなと思ったら目頭がちょっとだけ熱くなってしまった。長年研究所に監禁され復讐の一念を帯びて脱走した今回のライバル・シャドウと中裕司の境遇がどことなく重なるようである。
さて今回はソニック×テイルズ×ナックルズのチームがソニックの宿敵シャドウ(ソニックと同じ宇宙音速ハリネズミ)とエッグマンのコンビと戦う。前作では地球破壊規模のケンカもしたがナックルズは脳筋だからすぐソニックと打ち解けて今は音速生物3匹ともに仲良く保護者宅(人間側主人公のふたり)で暮らしているのだが、そこに怒りパワーで激強になったシャドウと復活したエッグマンと…が襲いかかるわけである。
ストーリー性はおそらくシリーズで一番高いんじゃないだろうか。それも日本の少年漫画みたいなアツいストーリーなので、ソニックもテイルズもナックルズもエッグマン(ジム・キャリー)も可愛いし、東京やロンドンを巡るのでキャッチーさもシリーズ随一。ネオTOKYOでのソニックとシャドウの音速バトルもかなり燃える。あとジム・キャリーの悪ふざけもシリーズ最高を記録していて半分『ジム・キャリーはMr.ダマー』に足を突っ込みかけていた。
面白かったがただ前2作がキャラ紹介編の側面があり原作ゲームも大したストーリーがなかったというのもあって軽めの仕上がりになっていたのに対して、今回は原作ゲームがドリキャスの『ソニックアドベンチャー2』、メガドライブとの性能差は如何ともしがたく、地球滅亡がどうだとか家族の絆がどうだとかちょいシリアスな仕上がりになっていたのが、それはそれで面白いのだが、なんとなくソニック的なクールさや爽快感を減じていた気がして、わりと良し悪し。
とはいえアメコミ映画低迷の中でそれに変わる老若男女誰でも楽しめるハリウッドアクションとして見事な出来映えであることは間違いない。今回キャラが多いのでテイルズの口数が少ない(『ハイスクール奇面組』における春曲鈍と奇面組が同じ回に出てくると春曲鈍が喋らなくなる現象と俺は呼んでいる)とか惜しく思ったところもあるが、まぁモフモフだしモフモフは正義、なんちゃら本部への潜入パートではシリーズに登場したキャラ総動員で笑わせられ、年末年始に映画館で観るハリウッド娯楽作として今これ以上のものはないんじゃないかと思います!