2024年この映画よかったベスト10+1!

明けたね! おめでとう! いやー! 去年はいろいろあったなー! までも毎年いろいろあるかー! あはははは! ていうことでね! 毎年俺恒例の誰も待ち望んでいない年間俺ベスト映画10本の発表です! 発表というかblueskyには3日ぐらい前に書いちゃったし大晦日にはYouTubeの配信でもやってるから改めて記事にしたところで感もあるのだが、まぁこういうのはしっかり文字にして残しておくのが大事です。やっていきましょ(なお例年通り10本それぞれベスト理由が違うのでランキング形式ではありません。見出しの部分は公開時に書いた感想文のリンクになってます。ので、ここではごくごく短評しか書きません!)

【本気度ベスト】
『フィスト・オブ・ザ・コンドル』

本気度ベストといえば今年は『ボルテスⅤ レガシー』という超強敵もいたのだが、なんだかんだ結構なお金をかけて作られた大作が『ボルテスⅤ』であり、それと比べるとこちら『フィスコン』は明らかにお金がかかっていない分だけ作り手の本気度が画面に剥き出しになっていたので、その裸一貫姿勢により本気度ベストはやはりこれかと審査員(俺)は語ります。往年の香港カンフー映画を俺たちだって作りたい…完ぺきにその一心で主演マルコ・サロールほかチリの格闘バカたちがカメラ片手に山奥にこもって撮ったと思われる映画であり、はっきり言って面白くないが、面白いとか面白くないとかそういう問題じゃない。このソウルを感じられないならいったい何のために映画を観ているのか。そうとまで言いたくなるガチすぎる映画である。面白くはない。

【ジャンル映画ベスト】
『フューチャー・ウォーズ』

ジャンル映画ベストとはまた大きく出たなと自分で思ってしまったが、2024年に公開されたすべてのジャンル映画の中で一番面白かったとかそういう意味ではなく、正確に言えば「ジャンル映画として一番丁寧に作られていた映画」という感じ。どのジャンルかというと時間SFすかね。ネタが限られているし見栄えがしないからか今あんがい時間SFの映画って少ないんですが、これはそのSF映画マイノリティをとにかく最大限面白く作ろうとした映画、オモシロSFアイディアが盛り沢山で楽しいし時間SFとしてのストーリーも思わず唸らされる完成度。こういう映画がヒットすればいいのに!

【人生を感じたベスト】
『胸騒ぎ』

これどこが良いかっていろんな場面で「あるわ~あるある~」ってなっちゃうところでとくに終盤の最悪に煮え切らないシーンなんかもう最高、映画なんだからお前映画らしい行動をしろよと主人公を説教したくてたまらない気分になるわけですが、でもリアルな人生ってこんなもんだよな~こんな風にままならないよな~っていうのがね、そこが素晴らしい。そういう人生の真理みたいなものが描かれているので最近言うところの胸糞映画ではあるんですが、怖いとか痛いとかだけじゃなくてホロどころではない激苦いユーモアさえ感じるのがこの映画のオリジナリティですよね。とか思っていたからその「あるわ~あるある~」が全部改変されて現実にはほぼ絶対ない展開になっていたハリウッドリメイク版『スピーク・ノー・イーブル』を観てアメリカ人の超ガサツさを絶句しながら再確認。

【現実の厳しさベスト】
『人間の境界』

難民を銃弾代わりとしたベラルーシ/ポーランド間の非人道的な「ハイブリット戦争」(人道的な戦争などないでしょうが)に材を取ったすごいヘビー級の力作。銃の撃ち合いとかはほぼないがこれを現代の戦争のひとつの形だとするなら2024年の戦争映画ベストでもある。近年この映画や『アイダよ、何処へ?』などヨーロッパから映画史登録レベルの戦争映画の傑作が次々飛び出しているが、重い映画に客が入らないのはある程度仕方の無いことだとしても、シネフィルでさえさして話題にしないのはどうなのよ?

【笑ったベスト】
『デッドストリーム』

2024年に公開されて俺が観た映画の中ではたぶんこれが一番笑ってる。チラシとかを見る限りではPOVホラーっぽかったからジャンプスケアたくさんのいつものやつかなっていう先入観を相当良い方向に裏切ってくれたスーパーバカコメディです。主人公も幽霊もどっちもバカなのがスゴイ!

【2024年に観てよかったベスト】
『お隣さんはヒトラー?』

2023年にイスラエルのガザ侵攻が起こってなければ発想の面白さと落語的な語り口の面白さで見せる佳作良作の1本という感じだったと思うが、終わる気配がないどころかガザ侵攻から中東戦争へと戦争規模がスケールアップして事態進行中(更にはトランプ再選でこの傾向が加速すると思われる)の2024年にホロコーストを題材にしたイスラエルの映画の中でこういう形の「赦し」を見られたのは良かったなとつくづく思う。こういう映画は今後しばらくイスラエルでは作られないかもしれないっすね(※これは2022年の作品)

【刺激的映像体験ベスト】
『チャイコフスキーの妻』

挑発的なんだけれども露悪的じゃなくて前衛的なんだけれどもロシア映画の伝統も感じさせてっていう現代ロシア映画の最高作の一つじゃないだろか的な1本なんですがこの監督キリル・セレブレンニコフはドイツに亡命しちゃったしロシア映画界はしばらくこのレベルの作品を作ることはできないかもしれないっすねぇ。いやはや戦争は映画を腐らせるから良くないものだ…。

【曰く言いがたいベスト】
『たとえ嵐が来ないとしても』

これもなかなか奇天烈で面白い映画なのだがそも面白さというのは画面の空気感に依るところが大きいように思われるのでなかなか文章で面白さを伝えるのが難しい。少なくとも2024年に日本で公開された中ではもっともオフビートな映画の一つ、災害を題材にしたものとしては間違いなくいちばんオフビートな映画だった。てかほかの災害題材ものはまず絶対にオフビート・コメディとしては撮らないので。こちらは『ボルテスⅤ』もアツかったフィリピンの映画です。

※2024年は前年のハリウッドストの影響でアメリカの大作映画が少なく興行収入が伸び悩んだというが、アメリカ映画が減ったことで多種多様なアメリカ以外の映画が劇場でたくさん公開されて俺は楽しかったので、ハリウッドには今後もずっとストやってて欲しいとおもう。

【世界の希求ベスト】
『SUPER HAPPY FOREVER』

2024年は日本の若手監督による映画が盛り上がった年で振り返ってみれば『夜明けのすべて』『悪は存在しない』『ぼくのお日さま』『HAPPY END』『ナミビアの砂漠』『侍タイムスリッパー』など話題作がたくさんあったが、興味深いのはこれらの映画が閉じた世界を志向しているように思えるところで、良くも悪くもなのかもしれないが微視的で手先が器用、ディテールに拘りを見せる一方で自分の手に余る大きなものには触れようとしない。邦画ブームと喜ぶ人もいるが俺はそのへん不満であった。だから『ルート29』とか『SUPER HAPPY FOREVER』みたいなたとえ手に余っても世界に触れようとする若手監督の邦画…この場合の世界というのは海外の国々ということじゃなくてもっと抽象的なものなのだが、そういう意志が見られたものは面白かったし嬉しかった。『SUPER HAPPY FOREVER』はその上でシナリオ構成が巧く撮影も芝居もレベルが高かったので、ベスト。

【風刺が巧みベスト】
『お坊さまと鉄砲』

なんかblueskyの英語圏のいいねが多いポストのフィードを見てたらツイッターから避難してきたSNSリベラルの人たちが年末年始なのにマスク叩きトランプ叩きで盛り上がっていてあんたら年末年始ぐらい政治のことを忘れなさいよと呆れてしまったのだが、こんな風にblueskyの英語圏のみ(いやまじで英語圏のみなんですまじで)が異常に荒れているのはトランプの大統領就任が間近に迫っているからなんだろう。そのようなアメリカのトホホ政治状況を洗練されたユーモアで実に嫌味なくさらりと風刺したのが『お坊さまと鉄砲』だったので、これは2025年も引き続き人に勧めていきたい映画であります。

【リバイバルベスト】
『帰って来たドラゴン』《2Kリマスター完全版》

前述のとおりハリウッドストの影響でアメリカ映画の新作が少なかった2024年は旧作のリバイバル上映もさかんに行われたわけですが、その中からよくぞこの映画をリバイバル上映してくれました!と1本選ぶとすれば『帰って来たドラゴン』《2Kリマスター完全版》しかない。これはもう三つぐらいの意味ですごかった。倉田保昭のアクションもっと観たいので2024年も倉田カンフー映画のリバイバル上映第二弾を頼むぞ江戸木純!

Subscribe
Notify of
guest

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments