ラッセル・クロウ悪魔憑き映画第二弾『ザ・エクソシズム』感想文

《推定睡眠時間:45分》

よくある悪魔祓いエンタメでしかないのになぜか日本でミニブームを巻き起こしヴァチクソなる流行語的略称を生み出した『ヴァチカンのエクソシスト』のラッセル・クロウが再び悪魔憑き映画に挑む! というような触れ込みの『ザ・エクソシズム』であったが完全エンタメの『ヴァチクソ』とは路線的にはかなり異なりなんであろうかたしかにオカルト・ホラーっぽい見せ場はあるのだが悪魔憑き映画の撮影セットで実際に主演役者が悪魔に憑かれ…というメタ構造を持つシナリオは『女優霊』などよりも『脳内ニューヨーク』のようなポストモダン映画に近く、要するにインテリっぽい。

まぁとにかくこちらはシリアスにド真面目の辛気くさい悪魔憑き映画である。最初の30分くらいはずっとボソボソした会話が続くだけで怖いシーンとか面白いシーンが全然こないもんだから早々に寝てしまった。おそらくこの主人公ラッセル・クロウには暗い過去があり、その罪悪感から撮影中にホンモノの悪魔を心に宿してしまうということなのだろうが、悪魔憑き映画の撮影セットが舞台とあって現実と虚構の垣根は徐々に崩れてなにが現実に起こったことなのかわからない。すべては映画の中の出来事だったのだろうか? それとも…という具合なのだが、どうにもプロットが弱く雰囲気任せのところがあるのでジャンル映画的なフックがない。

かといってアート的な面白さがあるかといえばそれもあんまりない。一応問題含みの父娘が悪魔騒動に巻き込まれながら関係を修復していく家族ドラマ的な側面もあるので一風変わった家族ドラマとして楽しめないこともないかもしれないが、それもなんだか微妙というか手垢のついた関係性なので、という。おもしろいとかつまらないとかアクが強いとかいろいろなものがある脳内映画フォルダ的には「とりあえず保留」に入れたい感じである。

しかし俺の中でこれはと引っかかったポイントが1箇所だけある。ラッセル・クロウは近年急速に恰幅の良さを増しているが、役作りなのかそれとも役の作れていなさなのか、この映画におけるラッセル・クロウの太…恰幅の良さはおそらく過去最高である。序盤ではメガネをかけていることもあってその姿はお馴染みぽっちゃり映画監督ギレルモ・デル・トロに衝撃的に似ている。こんなにギレルモ・デル・トロに似ているトトロなラッセル・クロウを見ることができるのはこの映画だけかもしれない。その点で『ザ・エクソシズム』は一見の価値ありと言わざるを得ない。いや、もちろんあの、単に見た目が面白いだけじゃなくてラッセル・クロウの苦悩芝居は重厚で見事だったので、まぁラッセル・クロウの芝居を見るための映画ということで。

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