クラスメイトのデブ最高映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』感想文

《推定睡眠時間:8分》

たかだかキラキラ映画のくせに2部作計3時間超とかいう大作っぷりなのは木村拓哉と工藤静香の愛娘であるKoki主演という全世代的な話題性、加えてメイクを題材にした韓国ウェブコミックの映画化ということで韓国コスメに関心の高い若い世代の女性の大量動員というヒット保証が出資側には見えていたためだろうと推測するが(一本分の予算で二本作って二倍稼ごうという算段である)、興行は水物、鳴り物入りで全国のシネコンに送り込まれたがその興行成績は映画.comによれば公開館数321にして初登場9位と相当厳しく、たしかに俺が観た日曜19時ぐらいの回でも都会の一等地のシネコンでお客は6人ぐらいしか入ってなかったと思う。結局第二章が作られることはなかった『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』とは違ってこちらはもう後編を作ってしまったのだから公開はされるだろうが、こう厳しい成績だといったい後編の『女神降臨 After プロポーズ編』はどうなってしまうのかと、映画の中の話ではなく外の話が心配である。メイクの話やから若いチャンネーぎょうさん入るやろガハハという平成的どんぶり勘定はもはや通用しないということだろう。もはやというか、以前から通用しなかったと思うが。

しかしまぁ売れてるとか売れてないとかは映画を観たいだけのこっちからすれば大して関係の無い話。まぁキラキラ映画はキラキラ映画なんでね、それなりに楽しめましたよ。主人公の女子高校生Kokiは顔の作りは悪くないのだがニキビがたくさんある(むろん特殊メイク)ので自分に自信が持てず、しかもその顔のことで中学生時代に同級生女子たちからいじめられて引きこもりになってしまった。いきなり重めな設定だがしかし本人はそう重く受け止めてもいないらしく、学校も行かずにホラー映画を観まくり佐藤二朗が経営している近所のホラー系セレクトショップに足繁く通ってと結構楽しい日々を送っていた(俺かと思った)。しかしそんなKokiにも転機が訪れる。ある日たまたま目にしたYouTubeのメイク動画によってメイクに目覚め、いろいろ小細工をしてみるとアラ不思議なんとあの冴えない顔だった(9割アラレちゃん眼鏡のせいな気がするが)Kokiが道行けば「え、芸能人!?」と通行人にひそひそ話をされるほどの美ガールとなったのだ。そしてそのまま心機一転高校デビューを果たすのだった、が!

なるほどねはいはいメイクが取れそうになる出来事が学校内でいろいろ起こってそれを回避しつつイケメンとウブい恋愛をしながら最終的にはやっぱりありのままの私が良い的な感じでメイクを捨てイケメンもその素顔のKokiを受け入れるみたいなそういうイイ話的な成長物語であろうキラキラ映画だしなとこの導入部から予想したが、案外あっさりメイクの下の素顔がイケメンその1(渡邊圭祐)にバレてしまったので予想外、イケメン2(綱啓永)の方にはまだバレていないのだが、といってメイクバレのシチュエーションがさほどあるわけでもなくKokiもメイクバレにさほど怯えるわけでもないので、容姿に自信のない女子がメイクのパワーで大変身! というキャッチの部分はぶっちゃけあまり機能していない。

そこらへんは原作が韓国のウェブコミックだからなのかもしれない。ウェブコミックに限ったことではないが現代の韓国エンタメというのは一つのアイデアや一つのモチーフをしっかり発展させるよりも、場当たり的なオモシロ要素の逐次投入で面白さを持続させる作劇が体感的には多い。というわけでこの『女神降臨 Before』もイケメン1の方は親が難病でイケメン2の方は財閥の御曹司(韓国エンタメっぽい!)とメイクとは全然関係ないオモシロ要素が盛られており、そこにKokiとイケメンの恋路を邪魔する意地悪な女子高生が数種類投入されるというアゲっぷり。この映画がヒットしなかったのは別に内容のせいじゃないと思うが、しかしキラキラ映画ソムリエの俺としては「か~! わかっちゃいねぇな!」と思う。そういうことじゃない。日本のキラキラ映画というのはその名の通り青春の輝きを捉えたものであり、それを通して主人公の女子高生が内面的な成長を遂げるビルドゥングスロマンなんである。であるからオモシロ要素は過度に盛らず、主人公の心理描写を繊細に、観客である女子高生たちがおめーらこんなにちゃんとした可憐な人間じゃねぇだろうがという俺の心の叫びを無視して共感し涙することのできる、そのようなドラマがキラキラ映画には求められているんである(大ヒットキラキラ映画『あの花の咲く丘で、君とまた出会えたら。』を参照のこと)

Kokiの秘密を知った意地悪な女子高生たちによるメイク落とし作戦(スプリンクラーを使った本格派)などもたしかにそれ単体では面白いかもしれないが、キラキラ映画に求められる面白さとはそういうものではない。青春の輝きを捉えるジャンルであるからして、キラキラ映画では主人公と他の女子高生は基本的にかなり仲良しであり、イジメとかはほぼほぼ発生したりしないのだ。ていうか逆に主人公とイケメンの煮え切らない恋愛を見守ったりアシストしたり適当な何かで落ち込んだ主人公を慰めたりという感じでキラキラ映画に出てくる他の女子高生は良い奴ばかりである(ついでに言えば他の女子高生とイケメンもわりと仲が良かったりすることが多い)

そうしたところをこの映画は読み違えているように思えるし、メイク後のKokiも言うほど女神ではないからまぁ色々とハズしている感じなのだが、ただじゃあつまらないかというとそういうわけでもなく、キラキラ映画的な旨味は薄いがオモシロ要素はやや俗悪的に盛っているものだから面白く観られるし、あとこれはちょっとした発見だと思ったがKokiのコメディ芝居が結構良かった。家の中でのすっぴんKokiのズボラっぷりは中々の見物だったので、その魅力をもう少し引き出した脚本と演出になっていればなぁとか思うのだが、企画ありきのキラキラ映画にそんなものを望んでも仕方が無いので不問。まぁ俺から言えることは、王道のキラキラ映画ではないがそれなりに楽しめる映画、ぐらいな感じだな。ただし教室でKokiの斜め後ろの席に座ってて昼飯の弁当をめっちゃ美味そうに食ってて例のスプリンクラー作戦のシーンではKokiよりも遙かに多くの水しぶきを被弾してサム・ペキンパー映画で撃たれた人みたいになってたクラスメートエキストラのデブは最高に良かった。後編では更なるデブの活躍を期待。

※Kokiがホラーマニアという設定のためKokiとイケメン1を繋ぐのが伊藤潤二の漫画なのだが、他にも「ジャック・ブライトン監督作『アリの回転』」とかいう渋いホラーネタが出てきてた。元ネタはヘンリー・ジェイムズの恐怖小説『ねじの回転』を映画化したジャック・クレイトンの『回転』(誰の趣味なんだ)

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