ジェリー・ブラッカイマー爆発映画『アンジェントルメン』感想文

《推定睡眠時間:70分》

ジェントルメンなんか一人も出てこない『ジェントルメン』を撮ったガイ・リッチーが今度は『アンジェントルメン』を撮ったという冗談のような話だが(原題も『THE MINISTRY OF UNGENTLEMANLY WARFARE』=非紳士的戦争省)エンドロールにデカデカと踊るのはジェリー・ブラッカイマー・プロダクションのロゴであり、ハリウッド共和党アクションのタカ派プロデューサーにして手掛けるどんな作品も山盛りの火薬と死体と爆破で真っ赤に染めてしまうジェリー・ブラッカイマーのかほりがあまりに濃厚、皮肉な会話であるとかエンニオ・モリコーネのマカロニ・ウエスタンものをパロディにしたような音楽にはガイ・リッチーらしさを感じるものの、ムショ上がりのならず者部隊がひたすらドイツ兵とイタリア兵? を殺し爆破し殺し爆破し殺し殺し殺して爆破爆破爆破するクライマックスの野蛮さはジェリー・ブラッカイマー本人が現場で監督してたんじゃないかとすら思えてしまうブラッカイマー映画っぷりであった。

ネタ元になっているのはおそらくならず者部隊映画の金字塔『特攻大作戦』。それを元ネタにしたタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』の影響も強めにある感じで、どちらもそんな好きな映画ではない俺としてはこの『アンジェントルメン』にもうへぇとなってしまった。なにせ殺しすぎである。いや、戦争なんか結局人が人を大規模に殺すだけの営みなのでこれで正しいのだが、たとえば先に挙げた『ジェントルメン』や『キャッシュトラック』といった最近のガイ・リッチー映画にあったようなブルータルなバイオレンス描写に伴う批評性が、おそらくブラッカイマー汁の影響でこの『アンジェントルメン』にはなく、最終的にならず者部隊がチャーチルに褒められてヤッタネ! みたいになる感じがちょっとイヤなのだ。

どうせ戦争映画なんだからいくらでも殺してくれて構わないしいくらでも爆破してくれて構わないし、ってかむしろそれは観たいのだが、正義の英米が悪のドイツ兵を容赦なく大量に殺しまくったおかげで世界に平和がもたらされましたイエー的な映画をウクライナ戦争継続中の今やられてしまうとう~んクサいねそれはクサいよ~! 思想がクサい! ガイ・リッチーの戦争映画だとついこのあいだには厭戦感強めの『コヴェナント/約束の救出』が公開されてたので、こう好戦的な戦争映画が今頃来るとは思ってなかった。それほどジェリー・ブラッカイマーがジェリー・ブラッカイマーだったということだろうか。まぁでもガイ・リッチーも別に深い考えとか持って映画撮るタイプじゃないか。

しかしCGなんかには頼らない生の爆破の迫力はやはりすごく、本年度アカデミー爆破賞にノミネートすることは間違いない。昨年はハリウッド爆破不作の年でアカデミー爆破賞がまさかのノミネートなしだったからな。ひさびさに映画館の大画面で観る大爆破は爽快&痛快。倫理的にはどうかと思うが、この大迫力の爆破、そして戦争下での容赦の無い殺しの数々には、なんだかんだ抗いがたい魅力がある。そんなブラッカイマー映画の新作であった。

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