なんか同じコト書いてる人たくさんいますが、ベン・スティラーの『LIFE!』(2014)と似たようなハナシだな~と思ったのだった。
向こうの人って好きだよなぁ、こーゆーさ、今の人生に疑問を持った人が世界に触れて幸せを見つけるっていう、行動主義的なハナシ。
別に一概にそれが正しいとは思わんけど、ドラマになりやすいのは間違いないんじゃないの。
俺そっちのが好きだなぁ。半径5メートルくらいの狭い世界の幸せに浸る、みたいなハナシよりさ。
こないだ観た『海街diary』がそういう映画だったんで、殊更そう思うのだった。
つートコで『しあわせはどこにある』観てきたんで、とりあえずあらすじ。
ソコソコ綺麗な嫁さんに恵まれ、金銭的にも余裕充分。ロンドンの精神分析医サイモン・ペッグは幸せな日々を送っていた。
そんなある日のこと、傍目には満たされた生活を送ってるように見えるクセに不幸だ不幸だとグチをこぼす患者に、ペッグはついキレてしまう。
「お前なぁ!良い暮らししといて不幸ぶってんじゃねーよ!いいか?『タンタンの冒険』のタンタンはなぁ!タンタンはなぁ!」
…なぜタンタン?疑問に思ったペッグは、やがて自分が子供の頃タンタンに憧れていたことを思い出す。そして、今まで冒険らしい冒険をしてこなかったコトも。
このままでいいのか?コレで本当に幸せなのか?ってなワケで、ペッグは幸せを求めて一人冒険の旅に出るのだった…。
面白かったナァ、コレ。
二時間たっぷりあるが(二時間すら俺には長い)、いやテンポが良くてさぁ、長さ全然感じないんだよ。
だって15分刻みくらいで次々違う国行くもんね。それで全然知らんヤツに出会ってさ、恋したり裏切られたり死の恐怖に直面したり人を救ったり、波乱万丈。
そのうえ実写がアニメに変わったり、乱気流に揺れる飛行機をチープなミニチュアと書割の背景で撮ったりもして、画がコロコロ変わるから飽きないよ。
絵本みたい。いやタンタンみたいって言うべきなのか。
タンタンとしてるが、淡々としてはいない。
アレだな、自己啓発本だかの映画化らしいんで、ペッグが旅先で見つけて手帳にメモった「幸せ」が画面に手書き風の字幕で入る。
『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)とか『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007)のあの方式なんだけど、そういえばどっちも幸せってなんだっけ?系の映画だなぁ。
マァそれはどうでもいいが、なるほどソレが幸せか、いやいやそりゃ幸せじゃないだろってな具合に、あーだこーだ考えられて楽しい。人生色々、幸せ色々。
俺のお気に入りは「不幸を避けることが幸せじゃない」ってゆーヤツだな。
「不幸を避けることが幸せじゃない」ので、行く先々でペッグはトラブルに巻き込まれたり、変なヤツに絡まれたりする。で、そん中で自分が知らなかった世の中の姿ってぇのが見えてくる。
ナマで見る世界はナカナカ綺麗事ばかりでない。中国の都市と農村の格差だとか、援助が上手く機能せず、麻薬収入ナシにゃ立ち行かないアフリカ(どこの国だったか忘れた)の貧しい村だとか、そーゆーのに触れる。
しかしソレで不幸かと言えば必ずしもそうでないらしく、んな中にもペッグは色んな幸せを見つけんのだった。
いや、ソレなんか白人の傲慢じゃね?って気もするが、基本ヘンに生真面目になったりしないお気楽なコメディなんで、そんなに気になんなかったナァ。
全然精神分析医に見えないペッグの安い風貌と、隙を見ては噴出する躁的バカ演技もあってさ。
(それはそれで嫌味な作風かもしれんが。中国資本が入ってるからかチベットの現実が全く描かれて無いあたり含め、わりとセコいというかペラいハナシである)
あぁそうだ、俺、昔タンタンに憧れてたんだ…ってトコから始まるハナシなんで、ペッグの旅はやがて過去に向かう。
やり残したコトとかわだかまってたコトの清算に向かうワケで、満たされてたように見えて実は満たされてなかった、オトナのようで実はオトナになり切れてなかったってのが分かってくる。
幸せ探し自分探し系映画って大体ソコに落ち着く気がするが、コレも例に漏れずそーやって成長してくビルドゥングスロマンなのだ。
ベタかもしれんが、王道は強い。
ペッグの嫁さんが『ゴーン・ガール』(2014)のロザムンド・パイク。
ペッグは旅先から幾度となくスカイプするが、その度に少しずつエキセントリックになってって笑える。この人はこの人でペッグとはまた別の冒険をしてたんだろなって思わせるんだよ。
アフリカ行ったら麻薬王ジャン・レノがいる。クリストファー・プラマーは脳科学だかの怪しい教授を楽しそうにやってた。
どっちもゲスト出演ぐらいの感じなんだけど、要所要所で現れて映画に華を添える。いいねこーゆーの。
冒険旅行の最重要アイテムは意外なコトにペンだった。
ペッグを色んな人に結びつけたり、命を救ったりするんだけど、そこでペンか!ってなって面白いんだよ。
良い小道具の使い方。ペンは剣より強し。
つかペンに限らないで、コレ小道具とか伏線とかよー考えられてる感じだったなぁ。
色んな国行って色んなエピソード垂れ流してるだけじゃなくてさ、結び付けて積み重ねてって感じで。
最初の方に出てきた「複数の女性を愛すコト」ってゆー幸せが後から他人にほじくり返されてさ、そんときのペッグの反応に思わず笑うんだけど、コレが更に後半の展開を引っ張ってくる。
軽く流すような編集になってる分、余計に「そうきたか!」「なるほど!」ってな展開の連続。
面白いハナシだな~。
国境を越え時空を超え、クライマックスはなんかもうバカSFみたいになる。
いやなにを言ってるかだが、観てもらえれば分かります。
ハイテンションかつ妙に壮大で、大笑い。いや感動的なシーンなんだけどさ。
そしてそのままスっとスタッフロールに入る感じ、実に潔くてグっときたなぁ。
スタッフロールも洒落てるっつーか、悪戯心あってさ、また良い感じなんだ。
感動作?いやいや、そーゆー感じじゃあない。
でも笑ってるだけの映画でもないのだ。
笑ってワクワクして最後はチョット感動の爽やかで幸せな映画。
良い映画だよ、コレ。
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ほとんど姉妹編みたいなんだけど、コッチもコッチで面白いんだよなぁ。
アイスランドのなんもない風景とか荒波に漕ぎ出す漁船とか、映像眺めてるだけで楽しい。世界って広いなー美しいなーってなる。
『しあわせはどこにある』はわりと会話主体なんだけど、コッチはアクション主体って感じ。イギリスとアメリカの違いですかねぇ。
あと、『しあわせはどこにある』はゴリラズの「ダーティハリー」のカバーが使われてて面白かったんだけど、コッチはデヴィッド・ボウイの『スペース・オディティ』の使い方にグッときた(ボウイ好きなので)