それにしても長いタイトルだな~、『S 最後の警官 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』。なんとなく革命レボリューションみたいなサブタイトルが付いておる。なんか知らんが、どうしても取り戻したい気持ちはバシバシ伝わってくるな、うん。
ほんで、観てきたんで感想書く。
以下あらすじ。
SAT、SITに続く第三の特殊部隊(S)として創設された警察庁特殊急襲捜査班“NPS”。犯人を生きたまま確保することが目的の部隊。
ほんで、えーと、主人公のイチゴさんほか個性豊かな面々が部隊にはおって、まぁなんや色々とみんな悩みとか問題とか抱えてんのだ。
で、そんな折にNPSの小隊長さんの息子が乗ったバスがジャックされ、同時にMOX燃料を積んだタンカーもテロリストにジャックされてしまう。
いったい何事なんだろう? と思ったら、どうもどっちもイチゴと因縁の深いスーパーテロリスト、オダギリジョーの仕業らしい。
こうしてイチゴたちNPSの面々とオダギリジョーの宿命の戦いが始まるのだった。
つーかさ、う~ん、アレだな。コレ、漫画原作ドラマの劇場版だったんだな…。いや漫画はちょっと読んだことあっけど、ドラマは知らなかった…。
しかし作りはとても丁寧とゆーか、観てる人にやさしいので、そんな俺でも最後までドラマ版の存在に気付くことなく普通に観れたりした。
「S」ってなんだろう? と思ったら最初にナレーションで全部説明してくれたし、主要登場人物はみんなテロップで名前出してくれる。
これはやさしい。なんせ航行中のタンカーの映像に「○○丸、MOX燃料輸送中」と(その前のシーンで説明したにも関わらず)テロップ出してくれたりするし、いよいよ特殊部隊が突入とゆー場面で「Aチーム、田中、山本、三浦。Bチーム、大塚、島村…」(名前適当)みたいにテロップでメンバー説明してくれるんだもんな。
ぶっちゃけドラマ観てない俺はそーやって名前出されても全くピンとこなかったが、とにかく話についてけないコトは絶対無い。
とはいえドラマ版観てんのが前提にはなってんので、各々の登場人物をくどくど説明したりはしない。
こんな映画でも2時間近くあるが、そのオカゲでポンポンとシーン変わってハナシ進んでくんで、なんやタイクツとかしないで観れたな。
色々盛り込んであるよ。二つのジャック事件とイチゴ・オダギリジョーの因縁の他にもさ、イチゴの恋人の医者・吹石一恵が同僚にプロポーズされたり、小隊長の息子が死に瀕したり、土屋アンナが007のQよろしく活躍したり、アブない官房審議官が暗躍したり…あぁそうそう、この人、全くどんな人か映画では説明されないが(ドラマでやってんだろう)、「フフフ、例のシナリオは既に出来ております…」みたいな喋り方なので、こんな俺でも即座に悪い人だって分かりました。やさしい。
まぁとにかくテンコ盛りで、あとホラ、アクションもいっぱいあるし…いや、いっぱいあったかな?
…やめよう、物分りのいいコトばっか書くのは。
楽しいよ。楽しいけどさ…コレ映画か?
いや、そんなコト言うとじゃ何が映画だよってハナシになるけど…。
(以下、ネタバレと悪口になる)
いやはや、映画って難しいな。
なんだろな、ホラ、例えばテロップの多用とかさ、いやそれテロップで説明しなくても分かるよ的なトコまで全部テロップ出すんで、なんかそれってダサくね? と。
んでまた、そのフォントとか入れ方とかさぁ、物凄い安いっつーか、フリーの動画編集ソフトで適当に入れたみたいな感じなの。
今なんて色々あるじゃん? 『ナイト・ウォッチ』(2004)ってロシアのファンタジー映画あったけど、アレ英語字幕付いててさ、それがシーンに合わせてグラグラ揺れたり弾けたりすんの。
いや別にそこまでとは言わないけど、なんかさ、もっとソコ拘ってくれても良かったじゃん。それだけでも大分カッチョイイ感じになるんじゃないの。
ってか、全体的にダセェんだよな。いやダセェっつーか…正直アホだろ!
いやね、アブない官房審議官が出てきてさ、んでこう独り言いうワケですよ。
「オヤオヤ、シナリオにない行動ですねぇ…」
…あるか? このセリフあるか? プロが書くセリフかこれは!?
普通アレだろ! なんかソレっぽい仕草とか微妙な表情の変化とかでそういうの示すんじゃ…いやなにが普通かって言われても困るが、なんぼなんでも中二過ぎんだろ!
ほんでさ、コレはなんだろな、俺の理解力が無いのか、それともドラマ観てないからかもしんないけど…バスジャック全然意味ねーじゃん!
いや、なんかテロリストのオダギリジョーとイチゴは因縁あるんで、そのイチゴの属する部隊の小隊長の息子が乗ったバスを襲撃するのは復讐とか挑発的な意味があんのかもしんないが、それだったら息子を直に襲えばいいだろ。
いやそれとも、アレかな。オダギリジョーは「お前にこの国が守れるのか!」みたいなコトをイチゴに言うんで、隊を試そうとしたのかもしんない…ってそれなら尚更タンカーのシージャックだけでいいっつの! 脚本的に! オダギリお前、スーパーテロリストのくせに計画に無駄が多すぎるよ!
つか、マジでコイツの計画杜撰なんだよ! MOX燃料積んだタンカー乗っ取って、んで燃料容器に加熱装置まで付けたワケ、オダギリ一派は。んで、東京に向かってると。
そんなもん無敵じゃん。下手に手ぇ出せねぇじゃん? でもコイツら特殊部隊に正面から侵入許すんだよ! 侵入許すけど加熱装置起動させないで、オダギリは船内ウロついてんだよ! いつでも起動ボタン(スマホアプリ!)押せんのに!
いや、もちろんもちろん、ここでもオダギリの目的はイチゴ(と国家)を試し、イチゴとの因縁にケリをつけるコトにあったのだ(『劇場版パトレイバー2』(1993)の人みたいなもんか)。それにテロ仲間はあくまで金が欲しいだけなので、実際に加熱装置起動させて被爆する気なんて更々なかったのだった。
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なんつーか、お前らやる気あんのかと問い正したいが、でも対する特殊部隊の面々もとてもやる気が無いので、別にオダギリ一派だけに非があるワケではない。
NPSの連中にどれぐらいやる気が無いかというと、国家の存続に関わるであろう作戦中に「息子さんの意識が…回復しました!」という連絡が小隊長に入って、狙撃手と一緒に嬉し泣きしてるぐらいなのだ。
いやそこは作戦に集中しろよ! つか、オペレーターお前なにタメ入れてんだよ! 「意識が…回復しました!」じゃねぇよ!
そんな具合に強烈にやる気が無いので、そもそもちゃんとした作戦とか立ててない。
いよいよオダギリが加熱装置を作動させると、もはや終わりかと隊員たちは途方に暮れる。そこに鶴の一声、土屋アンナから連絡が入る。
「加熱装置は電源で動いてるわ! 電源ケーブルを切断するのよ!」
そんな当たり前のことを後から言うな。そして隊員たちは試行錯誤の末、結局は手持ちの装備じゃケーブルを切断できないコトに気付くが、事前に用意しとけっつの!
こんなヤツらじゃもうどうしようもない。「お前らに国が守れるのか!」みたいなコトをオダギリが言いたくなるのも分かる気がする。もう日本終わりだな。
そこに再び土屋アンナの鶴の一声。
「加熱部を撃って破壊するのよ!」
そこでハっと気付いた狙撃手はバンバンと拳銃を加熱装置に撃ち込んで、ようやっと加熱装置は止まるのだった。やったー。
一応言っておくが、コイツら突入する前から加熱装置の存在をちゃんと知ってたのだ…。
なんか「こんな特殊部隊はイヤだ!」みたいなコトになってるが、コイツらそもそも見た目からして信用ならんヤツらだったりする。
いや別に大森南朋が隊長とか綾野剛がSATとかは分かるよ、なんか。でも狙撃手がいつもメイクバッチリ決めた新垣結衣って、どうなの?
特殊部隊の女狙撃手ってアレだろ、ミシェル・ロドリゲスとかだろ(偏見)
いや別に新垣結衣でもなんでもいいけど、もうちょっとソレっぽく誤魔化すコトは出来なかったんだろか…。
イチゴ役は向井理で、コイツはコイツで命令無視して怒鳴りながらすぐどっか飛んでくしだな…いやはや、特殊部隊って、なに?
あとさぁ、ポリティカル・サスペンス謳っといて権力の絡み合いとか権謀術策駆使して~とか微塵たりとも無いのはもう別にいいにしても、テロリストが「ワレワレハ、テロリストデース!」みたいな映画的訛り日本語(いつの時代の映画だ?)使うのもいいにしても、そいつらが「ウッヘッヘー!」ってずっと笑ってる超分かりやすいバカテロリストなのもいいにしても…いいにしてもだな!
クライマックスの特殊部隊VSテロリストのアクションシーン、カットバックで吹石一恵が同僚のプロポーズを断るシーンが入るのは…コレどう考えてもおかしいだろ! 核の危機と吹石一恵の恋愛事情は同列の問題なのかよ! つかせっかくの特殊部隊アクション台無しじゃねぇかよ!
いや、あるよ、そーゆーの! ホラ、なんだ、『ゴッドファーザー』(1972)だかのクライマックスのさ、ギャングの襲撃と結婚式のカットバックとか、『ドッグ・バイト・ドッグ』(2006)のクライマックス、刑事と殺し屋の宿命のバトルと殺し屋の妻の出産のカットバックとか、あるじゃんそーゆーのたくさん!
でも核の危機とイチゴの恋人の恋愛事情のカットバックは無いよ! それでアクション盛り上がるとか無いよ!
っていうかそもそも、なんとなくアクションやってる風なだけで、ちゃんとアクションやってるシーンとかほぼ無いよ!
脚本ガバガバ過ぎてサスペンスとかも無いよ!
じゃあ何があるんだよ!
最終的に吹石一恵の恋愛だよ!
どんな映画だよ!
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…アレだな、戦艦ミズーリ号を占拠したトミー・リー・ジョーンズ率いるテロリストたちと単身戦ったセガールの功績は、この映画の前で水泡に帰す。
知力と腕力と勇気を駆使して戦う必要など無かったのだ。ロクに考えも苦労もせずに土屋アンナ(と吹石一恵)を頼って突っ込めばそれだけで事件は解決したのだ…。
いやセガールだけではない。『ダイ・ハード』(1989)のブルース・ウィリスとか、『コン・エアー』(1997)のニコラス・ケイジとか、『パッセンジャー57』(1992)のウェスリー・スナイプスとか、『エアフォース・ワン』(1997)のハリソン・フォードとか、『ディテンション』(2003)のドルフ・ラングレンとか、『エグゼブティブ・デシジョン』(1996)のカート・ラッセルとか、『東京湾炎上』(1975)の藤岡弘、とか、なんなら織田裕二すら『ホワイトアウト』(2000)であの手この手を駆使して必死にテロリストと戦っていたというのに…!
曲がりなりにもテロリストものであるし、特殊部隊ものでもあるワケでしょ。
SEAL全面協力の『ネイビーシールズ』(2012)とまでは言わないけど、あの『エクスペンダブルズ』(2010)でさえ最低限の作戦は立てて行動してたんだぞ。大丈夫かなー、作戦上手くいくかなー、あーやっぱり失敗しちゃった! どうしよう! みたいな、そーゆー面白いトコあったじゃない。
緻密な作戦行動の面白みとか、個と組織・国家との間に生ずる倫理的葛藤とか、研ぎ澄まされた肉体やら射撃技術やらの凄みとか…なんかよぉ、なんかそういうのあるだろうよぉ、特殊部隊ものなんだからよぉ。
無いんだけどさぁ、この映画にはさぁ。
…とまぁそんな映画だったワケですが、ただもっかい言っとくと、結構面白かった。
面白かったけど、これじゃテレビドラマと変わんないじゃんみたいな。
テレビドラマの映画化が全部悪いとか思いませんけど、映画は映画なんだし、テレビと違って高い金も払ってんだから、もっと色々ちゃんと作って欲しかったよなぁ。
脚本もそうだしさ、ホラ、例の雑なテロップとか、平坦なカット割りとか構図とか、役者さんの演技とか、そーゆーの色々。
あぁでも、オダギリジョーとか大森南朋はさすがにカッチョ良くて面白かったな。って別にそれテレビ版でもそうなんでしょうが。
しかし思ったな。なんつーか、ドラマ映画だから当たり前ですが、作家性とか拘りとか無い分スゴい経済的な映画だなぁと。
観る側にしてもさ、適当に観てるだけで頭に入ってくるから余計な体力使わなくてイイし、テレビ版でポイントになってた部分は全部入ってると思われるんで、ファンの人は文句とかあんま無いんじゃねぇの。
そう考えると、ちゃんと需要と合致したウェルメイドな製品になってんだろな。
こういう映画は文句言う方が悪い。AV観て「なんだコレは! エロいじゃないか!」って言うようなもんだ。
それは分かってるんだけどさぁ…あぁ…。
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特殊部隊ナメんなよ、とゆー映画。
あとアメリカ万歳な映画。
撃たれた子供はNPSの小隊長の子供じゃねぇ
出直してこい