映画『さよなら、人類』の感想を人生にさよならする前に書く

コレ新生恵比寿ガーデンシネマで観たんだけど、帰りにガーデンプレイスのバーガーキングに寄ったのさ。
んで接客してくれたのが研修中のバイトのにーちゃんで、なんか留学生なんだけど、仕事慣れてなくてものっそい危うい。
レジの操作分かんなくて指を迷わせたり、ポテトを違う容器に入れちゃって、別の容器に入れ直したりとかして右往左往。
でも他の店員誰も助け入ったりしなくて、んでこの人自身もゆっくりだるーく仕事やってんです。

それジーっと観てたんだけど、なんつーかね、そこはかとなくユーモラスでオモロイ。ほんで、なんとなく癒し。
アレだな、こんぐらいユルい方がいいのよ。適当でいいじゃない、適当で。
どうせみんな死ぬんだから。

ロイ・アンダーソンの『さよなら、人類』は要するにそーゆー、っつかそれだけのコメディ映画で、しょうもないオモチャの訪問販売員二人組を軸にして、なんやしょうもない人たちの悲喜こもごものしょうもない日常を脈絡なくダラダラ垂れ流す。
早い話、寝る系の映画。ストーリーとかほとんど無いスケッチ集なんで、どこで寝ても困るコトとか一切無い映画。
ってコトはコレ、ケッ作なのだ。かのドキュメンタリーの名匠・佐藤真も「寝る映画はイイ映画だ!」と言っておった。
(その佐藤真の代表作『阿賀に生きる』(1992)も気持ちよく寝れる映画なのだった)

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http://www.movietele.it
http://www.movietele.it 『散歩する惑星』と『愛おしき隣人』と『さよなら、人類』ですが、果たして区別できるでしょうか…

ところでロイ・アンダーソンつーと『散歩する惑星』(2000)とか『愛おしき隣人』(2007)の人ですが、スゴイよね。
だって全部同じコトしかやってないんだもん。絵面も完璧に同じなんだもん。
上の二つとこの映画のキャプチャ混ぜても絶対どれがどれだか分かんないすよ。
っていうか、三つ合わせたリミックス動画作ったとしても違和感行方不明だよ。

いやさ、徹底的にミニマルで抑制された、統一されたスタイルなんでそーゆーコトになんだろうけど、ならもう新しいの作る意味ある? みたいなトコあるよな。
そらマニアックな人は意図的なマンネリズムが云々、微妙な差異が云々ゆーて擁護するでしょうが、大多数の人は「なにこれ」か「またかよ」じゃねぇの。
相変わらず映像すげーカッチョイイけど、いいかげん飽きてくるぞ。

飽きるっつーとホラ、またぞろストーリーがホント面白くないんだよ。
普通あるじゃん、感情移入が云々とか、登場人物の内面が云々とか、でちゃんと主人公のキャラが立ってて、起承転結とクライマックスがあって、みたいな。
そーゆーの全部無いもんな。全部無いし、その上に既視感ハンパねぇと。
もう、ダメな人には金返せレベルでダメな映画だよ、こんなもん。

なんかアレだな、ネガキャンみたいにしかならないが、実際そーゆー映画なんだからしょうがない。
↓にロイ・アンダーソンのCF貼っときますが、全編通してその作風とか世界観から一歩たりとも出るコト無いんで、なんか、それ観て合わないと思ったら確実に避けた方がイイだろ、コレは。
ホント、↓のCFを50本ぐらい繋げただけの映画です。
予想を裏切るとか100%ないね。

…と悪口ばっか書いといてなんだけど、俺はこの手の散漫で倦怠に塗れた映画が大好きだったりする。展開とか気にせんでゆるーく観れるんでね。
だからコレも滅茶苦茶面白くて、なんか観ながらサティ聞いてる気分になりましたよ。フーっと脱力して、ほんでそのナンセンスに軽い笑いが漏れるっつーさ。
アレだ、家具の音楽ならぬ家具の映画だな。
イスとか机ぐらいしかセットに置かれてないし。

まぁだから面白いんだけど、どこがどう面白いかっつーと説明しにくいよな。
俺はハンマースホイの絵とか好きで、ロイ・アンダーソンの画作りってハンマースホイっぽいからそれだけでもう面白いんだけど、じゃそもそもハンマースホイのあの地味で静かなだけの絵の何がオモロイのって言われたらわかんないじゃん。
それにだな、大体この手の映画は人に面白さを伝えようとしても全く伝わらない。
だって「中年男がビールの蓋を開けようとして心臓発作起すんだけど、奥さんは料理してて気付かないんだよ!」って言われても全然面白く思えないでしょ?
そーゆーコトですよ。

なんつーかな、語れば語るほどダサくなるから語りたくない映画ってあるじゃない。
聞けば聞くほどタイクツに思えてくる映画とかってのも。
コレなんてまさにそーゆー類の映画で、観てると「生きるってバカバカしいなぁ」と思えてくんですが、同様にして感想垂れんのも聞くのもバカバカしくなってくる。
なのでここらで切り上げるが、最後にこれだけ書いとく。
コレね、やっぱすごいイイ映画です。明るいニヒリズムってこーゆーコトだ。救われるよ。しょうもない人生でも苦笑い浮かべながら生きる気になる。

そんな頑張んないでいいじゃない、そんなイライラしないでいいじゃない、そんな悲しまないでいいじゃない。
どうせみんな、結局最後は死ぬんだよ。しょうがないよね、ハハハ。
(逆に言えば、人生楽しくてしょうがない人には死ぬほど無意味でタイクツな映画だろな)

【ママー!これ買ってー!】


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ロイ・アンダーソンの長編映画デビュー作は、なんとカメラがフィックスじゃない! クロースアップが普通に入る! 色調が統一されてない! そしてブサメンと美少女の瑞々しい恋愛映画である!
最近のロイ・アンダーソン映画を考えるとなんかもうそれだけで驚くが、いや別に驚くコトじゃないだろそれ。
つかアレだ、瑞々しい恋愛映画ゆーても結局最後は人生に絶望したオッサンのエピソードに行き着くからね。
多分ベルイマンの影響だと思うが(『野いちご』とか?)、そのへんこの頃からブレて無いのだ。

ところでコレ、中二くらいの主人公カップルがセックスするシーンが普通にある。
アレ、いま局部出てなかったかなぐらいのナマい描写で、いやはやさすがフリーセックスの国と脱帽。

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匿名さん
匿名さん
2017年11月30日 5:46 PM

今日GEOで借りてて観ました 家具映画っていい言葉ですね とりあえずどう観たらいいのかがストンと入ってきました