すごくどうでもいいハナシだったりするが、コンビニ夜勤やってたときに会ったクレーマーのコト思い出したりした。
そのオッサンの客、無気力な学生バイトの会計ミスに腹を立て、結構な剣幕で怒鳴り散らす。学生バイトの方もふてくされちゃって謝ろうとしないんで、一向にハナシが収束しない。
そのうち誰が呼んだか警官が十人くらい来て(お客さんの通報らしい)、オッサン今度は警官と揉め始める。テメェらふざけんな、俺がなんかしたか、名前を名乗れ、署長にハナシさせろコラ、となった挙句、じゃ一緒に署まで行きましょうっつって、オッサンは警官たちと共に店を去るのだった。
さてオッサンが帰っても、今度は学生バイトの怒りが収まらない。つーコトで俺は言うワケだ。あんなのお笑い芸人みたいなもんだから、気にしない方がいいよーっつって。和ませようとして。
いやまったく痛恨のミスだ。こーゆー余計なコトは言ってはいけない。ただ一言「気にしないで」で良かったのだ。
学生バイトもとっくに帰って、スッカリほとぼりの冷めた深夜。プルルルっと店の電話が鳴る。出ると、第一声はこうだった。
「知り合いが店にいてよ、お前の言ったこと聞いたって言うんだよ。誰がお笑い芸人だ?」
『孤高の遠吠』の中に、自宅でくつろぐ主人公格のカミオくんに電話がかかってくるシーンがある。相手は見ず知らずの不良。カミオくんの知り合いの不良から番号教わったらしく、いったい何事かと慌てるカミオくんだったが、意に介さず相手はこう続ける。
「最近、原付乗り回してんのお前だろ? おい、窓の外見ろよ」
で、カミオくんが窓の外を見ると、ソコにゃ軽トラが停まってる。
「乗れ。乗って俺んトコ来い」
面白いシーンいっぱいある『孤高の遠吠』だが、とりわけココにグっときた。深夜の電話。予期せぬイチャモン。あの戦慄。分かる。超分かる!
別に俺の場合は窓の外に軽トラが停まってるワケじゃなかったが、代わりに「今から行くから外で土下座して待ってろ!」なのだった。
ってなワケで『孤高の遠吠え』、コレとても面白い映画だった。
出演者ほぼ全員リアル不良、助監督もリアル(元)不良、脚本は不良たちの証言をまとめた実録形式。
不穏だなぁ、不穏不穏。いやブォンブォンか? バイクのハナシだし。
いやそれはどうでもいいが、不穏な映画には違いないとしても、けっこう笑えるトコも多くて愉快な映画でもあったのだ
ほんでもって、ヤバイ事に巻き込まれないための教訓を得られる映画だなこりゃ。不良ばっか出てくるが、むしろ不良に縁の無い人ほど観るべきじゃなかろか。
えぇと、こーゆーハナシです。
焼きそばじゃなくて喧嘩の名産地・富士宮。
そこに暮らすユヅキ、カミオ、リョータ、ショーヤの不良じゃないがちょっとイキった四人組は、軽ーい気持ちで不良の先輩から原付を買ってみる。
深夜の富士宮を原付でカッ飛ばし、束の間の非日常を楽しむ四人。
だが、やがて恐い先輩に目を付けられ、こうして彼らの不良地獄巡りが始まるのだった…。
あんま軸になるハナシとか無いな。実録不良エピソードの数珠繋ぎだな。そういえば主人公っぽい位置付けだったカミオくん、途中から出なくなるなぁ…。
と思ったら、なんとカミオくん、撮影中に不良イザコザに巻き込まれて富士宮から追われてしまったのだった。
ラスト近くでまた戻ってくるが、助監督で出演もしてるユキヤ先輩の不良ネットワークに引っかかって連れ戻されたとのこと。
不良ネットワークの恐さは映画にも出てくるが、いやそれにしても「ストーリーが緩いネェ、軸が無いネェ」みたいな上から目線のクソ批評を無化する素晴しいエピソードである。
んな映画なんで、いかに音声が粗くてセリフが聞き取りにくかろうと、いかに下っ端不良の演技が棒読みだろうと、マイナスどころかプラスになってるように思う。
不明瞭なセリフは逆に不良言葉を強調してる気がしたし、下っ端不良は棒読みでも本当に恐い先輩の演技なんて堂に入っていて、そのあたり意図せざるところだとしても不良としての格の違いの演出になってるようでオモロイ。
普通の映画の常識なんぞこの映画にゃ通用しないのだ!
それにしてもイイ顔した不良ばっか出てくるよ、ホント。
富士の狂犬ジンギ先輩(ユキヤ先輩の親友らしい)の面構えなんて凄まじいインパクトだし、暴走族総長のマキヨシ先輩と副総長ナカニシ先輩のコンビが並んだときの画、コレ良いんだよ、実にメリハリ効いてて。二人はリアルでもツルんで悪さしてるらしく、コンビネーションも抜群なのだ。
硬派で恐い不良ばかりかと思いきや、リョータくんみたいな軟派な不良もいる。リョータくん、とりあえず映画の中ではいつもヘラヘラしてて簡単に友達を売るサイテーな人であるが、恐い先輩を前にしたときの表情は別の意味で不良のリアルを感じさせて素晴しかったなぁ。
こーゆー不良たちを映画は群像劇的に描いてく。恐い先輩諸兄を通して富士宮不良社会が重層的に浮かび上がるって寸法で、そう考えるとかなりの社会派映画である。
ところで、もっとバイク飛ばしまくる暴走系映画かと思ったら意外とダラダラしたトーンで、次から次へと恐い先輩が出てくるワリにはスケールの小さいハナシだなぁと思ったりしたが、この倦怠感とせせこましさが不良のリアルなんだろうなぁとゆー気がしないでもない。
映画はカミオくんとユヅキくん(顔がよく見えなかったんで自信ない)がこっそり家を抜け出して、原付で深夜の街に繰り出すシーンから始まる。
コレすげー美しい良いシーンだ。ツマンネェ日常から逃げ出したかったんだろうなぁって気がして。旅立ちと反抗の高揚感あって。
でもその先にあんのは不良の、いままでとは別の種類だとしてもやっぱり日常で、倦怠に塗れたツマンネェ毎日からは結局抜け出せない。
今は不良の世界から足洗って建設業やってるらしいユキヤ先輩の醒めた眼差しは、そんな不良の諦観を感じさせてとりわけ印象的だった。
切ない映画なのだ、本質的に。でも、その上でなお反抗を称揚するんだけれども(ソコにちょっと感動してしまう)
感じ『狂い咲きサンダーロード』(1980)とか『爆裂都市』(1982)みたいなトコもあり、『仁義なき戦い』(1973)とか『アウトレイジ』(2010)みたいな感じもあるが、ワリとそーゆーのと違うなぁと思ったのは、どっかテレビっぽい意匠があるトコだったりした。
なんかね、テロップとかで遊ぶんすよ。工場の実景に「絶対安全工業地帯 ファック・ファクトリー」とか出したり、窃盗団メンバーの不良ラッパーがヘタウマ・ラップやるトコで歌詞出したりして(コレ笑った)
ジンギ先輩と相棒のマコト先輩が富士宮に攻めてくる後半は突然不良版『隣の晩ご飯』になったりして脱線しまくるが、その被写体に合わせた臨機応変予測不能な展開にユーモアを交えた語り口の面白さ、バラエティ的っていうか、『進め! 電波少年』みたい。
リアルとフィクションの垣根が限りなく低い映画だったりするが、セミ・ドキュメンタリーとも呼べないようなその作りが、なんや微妙に演出の入ったバラエティのロケ企画を思わせんのだ。
出演者みんな不良! とゆー触れ込みからするともっと不良視点の映画に思えっかもしんないが、そんなワケで距離の取り方絶妙なのだった。
別に不良を美化するワケでもなく、蔑むワケでもなく、といってナチュラルに不良の世界をそのまま切り取るワケでもなく、不良に聞いたオモシロ不良エピソードを不良に演じてもらうっていうメタでネタな作り。予想に反してとても人を選ばない楽しいエンターテインメント。
でもって、コレ今っぽい映画だと思う。その距離感とか、なんでもネタにしちゃう感覚が。でもソコになにやら鬱屈した心情も隠されてて、ある瞬間に突然爆発してしまうような、そういう感じが。
だから不良云々とか関係なく、今を描いた今の娯楽映画って感じでみんな観たらいいんじゃないのと思いますよ、こーゆーの。とてもオモロイ。
っていうかまず、どっか普通に公開しろよバカ野郎…(続編観てみたいが、こーゆー特殊な作りだと無理かなぁ…)
※普通に公開されましたしビデオにもなりました。
【ママー!これ買ってー!】
この感想を書いたのは2年くらい前なのですか、最近この映画のことを考えていて新たに思いましたのは犯罪動画をyoutubeとかに投稿してしまうヤンキーとかこういう心情なのかもしれないなってことですね。
ある意味でそれが外の世界との唯一の繋がりになっているのかもしれず、などと考えると切ない。