銀河は渦を巻いているとゆーのは学校じゃなくて『映画ドラえもん のび太と銀河超特急(エクスプレス)』(1996)のエンディング曲で知ったのだ。
映画ドラえもんといえば武田鉄矢の曲だが、ココでは海援隊名義。以後武田鉄矢は映画ドラえもんから離れるコトになるので、せっかくだから最後は海援隊で…みたいな感じあったんかもしれん(後に『映画ドラえもん のび太と人魚大海戦』(2010)にも曲を提供している)
そう考えるとなんか感慨深いが、今となれば藤子・F・不二雄先生に捧げられた曲のようにも思え、ちょっと胸に迫ってくるもんがある。
『銀河超特急』の最後に海援隊が「あなたは星より遠い人…」と歌ったこの年、F先生はずっと遠くへ旅立たれたのであった。
…って全然関係ないが、とにかく『螺旋銀河』と『Dressing UP』とゆー映画をハシゴして観てきたんで感想書く。
どっちもCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)助成の女性映画です。
CO2ってなに? って感じですが、詳しくは公式サイトでも見てください。
よーするに若手映画作家を発掘してやろうとゆー、ぴあ的なアレだろう。
『螺旋銀河』
映画学校とかシナリオスクールでいっちゃん最初に言われるのは身の回りのコトをシナリオに書けとゆーコトで、素直とゆーかなんとゆーかその教えを忠実に守ったような映画が『螺旋銀河』だと思ったりした。
主人公はシナリオスクールに通う性格の悪いソコソコ美人で、この人が書くシナリオは結構面白いらしいが、ちょっと問題がある。
「他者がいないんだよな、お前のシナリオには」とは講師の評。そんなワケで主人公は渋々ながら共同執筆者を立てるハメになんのだった。
で、共同執筆者の地味地味OLとの静かなバトルが始まんである。
この映画の脚本自体が草野なつか監督と高橋知由の共同名義なんで、なんでしょう、それ半分くらいお前の実体験だろう的な映画だと思われる。
で、自分だけの狭い世界に他者を招き入れたコトから生じる軋轢と成長が描かれる人間ドラマとゆー、劇中のシナリオ講師の言うコトを間に受けた「物の分かった大人に喜んでもらえそうな」よー出来た感じの映画でもあんのだ(そして実際に色々と映画賞獲ってんのだ)
上手いが、それよかしたたかさを強く感じるなコレは。あぁ、女性監督はコワい…。
ほんでね、面白かったのはアレだな、主人公のクソ女と地味地味OLが夜の街を歩いてんのを後ろから撮ったトコですよ。
なんとなくピョコピョコっと歩いててキュートでさ、こう、主人公は自信過剰な人なんですけど、地味地味OLと並んで歩いてる後姿は負け犬のソレなんです。
主人公が地味地味OLと一緒にご飯食べるシーンとかもそんな感じあって、主人公と地味地味OLの格闘と同化のドラマっつーより、なんでもない日常風景の中に気取り腐った主人公の素の部分が微妙に見え隠れする感じが面白かったなぁ。
って考えると、脚本作りをネタにした映画だが、脚本とかどうでもいいじゃんみたいなトコあっかもしんない(そもそも面白味の無いハナシだし)
ほんでもって演出に力入ってるよーに見えるトコほどタイクツに感じちゃったりしたんで、監督ってなんでしょねと思ったりしなくもない。
他者が問題にされるこの映画だが、他者とゆーのはドラマの中に意図して描きこまれたもんでなく、その外にはみ出ちゃった捉えられないモノを言うんじゃかろか。
それ他者性っつーか素人性か。でもソコがちょっと面白い映画なのだ(むしろ、可能な限りその部分を追い出したウェルメイドな作りを狙ってるように思えるが)
あと、どんどん主人公に同化してく地味地味OLの澁谷麻美が良かったです。最初は素人かなぁと見えて、映画が進むにつれて女優の顔になってくのが面白いのよ。
『Dressing UP』
なんでも人から聞いたハナシでは、CO2で選ばれたからと意気揚々と大阪に乗り込んだ自主監督(その人も女性)がおったそうな。
CO2から出るのは助成金60万円と製作の補助(機材協力とかそんなんだろう)
果たして彼女がどんな映画をやろうとしてたのかは詳しく知らんが、インディーズとはいえ映画祭上映(そしてなんなら劇場も)を視野に入れた中長編映画を予算60万で製作すんのはタイヘンなので、結局監督がソコソコの額を自腹で賄うコトになり、スタッフもみんなボロボロになったんだとか。
それで名を成せば下積み時代の美談となるが、そうでもないらしいので、映画ってタイヘンだなぁと思うだけなのだった。
さて、『螺旋銀河』とこの『Dressing UP』は晴れてミニシアターで一般公開と相成ったワケですが、その陰には一般人についぞ知られるコトのない無数の無名映画(と監督)が死屍累々とゆーワケで、まぁ結果的にちょっと面白かったとはいえ『螺旋銀河』のウェルメイドな作りには腹が立ったりもすんである。
人は人、自分は自分。認められなかったのはアンタに才能無いからでしょ。…と言われればそれまでだが、なにやら怨念めいた無名映画たちの悲痛な叫びを忘れないでくれよと思うのだ。
CO2の助成を受けてるからにはその歴史も背負ってるハズで、あんな当たり障りの無い映画に逃げないで批判を恐れずトンデモナイ映画やってくれよ、じゃないと色々チャレンジしたりしなかったりな無名映画たちが、先に挙げた無名監督みたいな方々があまりに浮かばれないじゃないか…。
(別に私怨ではない)
んで、『Dressing UP』はそんな風に思ってる時に、例によってポスターだけ見て内容知らずに観た。
するとどうだ、コレが…いや、変な映画だなぁ。少なくともコレ観ればCO2に破れた怨霊たちも成仏できそうである。
「なるほど、確かに俺(映画)より面白いな…」と。
映画の情報なんて大抵ネットで手に入る時代である。であるからして「絶対にオチは言わないで下さい!」みたいな懐かしい売り方はもうほぼ通用しないと思われるが、こんなインディーズ映画は基本誰も知らないんで別である。
コレに関しちゃなんも知らんと観た方が面白いので、ちょっとでも興味あって、たまたま近くで上映されてたらとりあえず観とくといいんじゃないかと思う。
たぶん、ポスターから想像されるような映画じゃなくてビックリする。
ちなみに俺がポスターに写った主演の女の子(祷キララ)を見て思ったのは黒沢清『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(1985)の洞口依子みたいだなぁとゆーコトで、『Dressing UP』とゆータイトルも考えるとソッチ系の青春映画だろうとゆーコトなのだった(なんか少女が女に目覚めるとか、そんな感じの)
実際観てみるとハズレもハズレ、大ハズレだったりしたが、監督の安川有果さんも黒沢清の影響を公言してるよーに、クロキヨ的な感じは結構あんである。
なんつーか、どこに着地するか分かんない緊張感とか不安感とか、その他諸々。
あんま内容書きたくないんで、本筋とは関係ないが面白かったトコを一つだけ。
「ブリーフ隊が行く!」とかいうブリーフ一丁のお笑い芸人たちがバカなコトするテレビ番組が劇中出てきて、アホらしくて笑えるが、このブリーフ隊とゆーのはデヴィッド・リンチ映画に出てくる小人とか精霊みたいな立ち位置なんである。
なに言ってるか分からないでしょう。でもホントなんだよ! ウソだと思うならとにかく観ろ!
そしてこのブリーフ隊、実はカットされた登場シーンが結構あるらしいので、DVD出るなら頑張って特典に入れてくれ!もっと観たいぞブリーフ隊!
あとアレだ、主演の祷キララさん、あどけなさの残る顔立ちにクールで鋭い眼光が宿って、すげー良かったです。
まぁなんつーか、映画もそんな感じだな。ダルい空気の中に得体の知れないもんが漂ってて、カマイタチよろしくシャーっと切り裂かれるような瞬間があるっていう。
コレは、変な映画。そして面白い映画。
【ママー!これ買ってー!】
『螺旋銀河』は二人の女優さんの同化と離反のハナシ。
なるほど、『マルホランド・ドライブ』と同じだな。
『Dressing Up』は変なブリーフ隊が幻想に誘うハナシ。
なるほど、『マルホランド・ドライブ』と同じだな。
なので『マルホランド・ドライブ』です。
(ただ単に好きなだけ)