コレ篠原哲雄監督の映画なんですが、少し前にこの人が監督した『命』(2002)とかゆー映画を観て、それがあまりに粗末な作りだったもんだからやれクソだのウンコだの(同じじゃねーか)篠原哲雄さんのコトをタイヘン悪く書いた覚えがある。
だが後から知ったコトには、なんでもこの人とゆーのは後進の育成にとても熱心な人だそうである。
言われてみれば確かに自主映画コンペの審査員なんかでよー顔を見る気もするが、基本つまんねぇ自主映画をいっぱい観ていっぱい論評して適度に褒めて才能を伸ばしてあげようとすんのはタイヘン面倒くさくて本人にとっては実にならない不毛な仕事である。
そんなエライお仕事をなさってるとは露知らず、テキトーに悪口ばっか書いてしまったコトを、まずはココにお詫びしておきたい。
篠原監督、ごめんなさい!
そんなワケで篠原監督の『起終点駅 ターミナル』観てきたんで、今度は礼儀正しく感想書きます。
まずはあらすじから書きます。
偶然にも法廷でかつての恋人・尾野真千子と再会した裁判官の佐藤浩市。
家族や恋人がいるにも関わらず二人はやがて逢引を重ねるようになるが、そんな矢先、尾野真千子を不幸が襲う。
失意の佐藤浩市は尾野真千子を忘れるべく家族を捨てて一人釧路へ向かう。
そして二十数年後、無気力な国選弁護士として半ば隠遁生活を送っていた佐藤浩市の下になにやら曰くありげな一人の若い女性が現れる…。
繰り返しますが、もうクソとかウンコとか言わないで今度は礼儀正しく書くのです。
ですから丁寧に申し上げますが、篠原監督の映画はやはりとても面白くないのです。
ですが、その責任を篠原監督のような高潔なお方に帰すべきではないのではないでしょうか。
手前、恥ずかしながら商業映画の現場に携わった経験がありませんので、全ては想像でしかないのですが、きっと篠原監督だって苦労したコトと存じます。
やれこんな映画にしろ、やれこんな俳優使え、やれそうすれば絶対売れる、映画のコトなんて何も分かっちゃいねぇウン…いや大便様野郎連中のそんな戯言発注をオトナの対応で真に受けて、自らの職務を真摯に全うしようとした結果が『起終点駅 ターミナル』のような映画なのではないでしょうか。
篠原監督は決して悪くないのです。ただ真面目なだけです。
…若手の育成に熱心な篠原カントクであるからして、こんぐらい擁護してコビ売ったら脚本の仕事かなんかくれるかな、と思ったが、よく考えたら篠原カントクともあろうお方がこんな場末ブログ見るワケないし、見たとしても仕事くれる確率はゼロなので、やっぱ普通に書こう。
えーとね、なんつーかね、面白くない面白くないゆーてますけど、じゃあつまんねぇかとゆーとそれはそれで語弊があり、こーゆーコト言うとバカにされそうだからあんま言いたくないが、極めて「普通」としか言いようの無い映画がコレなのだ。
なんかショック受けるとか心に深く刻まれるとかそんなコト別になく、タイクツかとゆーとそんなタイクツでもなく…とにかく普通である。
普通ってゆーか、よくあるベタな二時間ものテレビドラマみたいな感じだな。
だからアレだ、スマホいじったり食器洗ったり、なんか他のコトしながらテキトーに観るにゃちょうどイイが、1800円払って2時間映画館の椅子に座ってジーッと観るにゃちょっと物足りない感じは結構ある。
まぁ別に、途中寝たからムカついたとかは無いけど。
ほんで面白かったのはね、佐藤浩市、この人やっぱ良かったな。
佐藤浩市が不倫すっとこからこの映画始まんですが、なんつーか、完全に『黄昏流星群』の世界でさ。
少しくたびれたスーツの着こなしっぷりと顔面の皮膚の弛みがハンパなく弘兼憲史のキャラクターで、それがなんかオモロイのよ。
でもって、そのお相手がスナックのママ・尾野真千子ってのもマジ『黄昏流星群』だよな。
チョコっとだけこの二人のベッドシーンが出てくるが、いやホントにエロいんだ、尾野真千子。絶妙すぎるうらぶれ感がまったくタマラン。
この人が熟した瞳で佐藤浩市を見つめながら「戦え、佐藤浩市」って言うトコなんてちょっとウィスキーのCMみたいでもあるが、なんかそんな風に、別に激しいエロとかありゃしないが、ハナっからお子様厳禁の世界なんである。
まぁだから、そーゆー発注なんでしょね。弘兼憲史みたいの作れと、中高年のオヤジが好きそうなの作れと、ヤツら映画館で映画観る習慣もカネもあるからと、まぁそーゆーワケで、当たり前なんですが。
冒頭、雪の降りしきる寂れた駅に佇む佐藤浩市。『鉄道員(ぽっぽや)』(1999)だよね。オヤジが好きそう。
回想で佐藤浩市と尾野真千子が学生運動に関わってた頃のシーンが入る。これもオヤジが好きそう。
尾野真千子と一緒に家族も失って、北の地で傷を抱えながら孤独に生きていた佐藤浩市の下に、かつて尾野真千子が犯したのと同じような過ちを犯そうとしている本田翼が弁護の依頼をしにやってくる。
あのキャピキャピした肢体と笑顔で本田翼は佐藤浩市に抱きつき、言う。
「先生! 先生!」
…オヤジは間違いなく喜ぶだろう。
結局、オヤジどもの不倫してーな願望、オヤジどもの若い子に慕われてーな願望、そしてオヤジどもの「俺だって苦しいんだ! 全てを捨てて北海道で静かに暮らしたいんだ!」とゆー切実な心情を全部反映したよーな映画なワケで、なんだろな、感動作どころかあんま品性の感じられない下衆い作りである。
それをしらばっくれて感動作が如く売る、とゆーのもこの手のオヤジ映画の基本なので(『愛の流刑地』(2006)とか)、別にムカつくワケでもない。
大したコトなかったりロクでもなかったりするコトをさも高尚であるかのよーに語りたがるのがオヤジであるからして、むしろ客の求めるモノに忠実なんだろう。
オヤジの欲望をテンポ良く喚起させて歓喜させる作りになってんで、オヤジにとっては結構ヌキどころのある映画なんである。
だから、とにかく「普通」の映画としか言いようが無いのだ。
「普通」のオヤジ映画なのだ。
本田翼がガクっと佐藤浩市の懐に倒れこんで、
「大丈夫か!」
「なんだか急に力が…」
「ね、熱がある! 医者を!」
…みたいなシーンのある、「普通」の。
それにしても、佐藤浩市がメシばっか食う。しかもザンギとかイクラ美味そうなの作って美味そうに食う。
不倫したい願望に若い子に慕われたい願望に旅行行きたい願望に美味いメシ食いたい願望に…ってホントにオヤジ性に忠実だなおい。
そして気付いたが、コレ疲れたOLの願望とかなりの部分が一致すんじゃないか。
そうか、疲れたOLはオヤジだったのか…。
閑話休題。
北海道の美味いもんをやたらアップでキレイに撮るあたり、オヤジ客の欲求と同時にスポンサーの要求をも満たす作りになってんので、普通普通ゆーてるが、映画的にではなく商品的な意味でとてーも良く出来た映画ではある。
個人的に面白かったのはアレか、佐藤浩市がイクラを食うカットが意図してかせずかお茶漬けのCMのパロディみたいになっちゃってたあたりとか、半ばビル・マーレイ化している佐藤浩市の仏頂面とか、なんかそんなどーでもいートコであった。
佐藤浩市の仏頂面、面白かったが、商業とゆーか産業監督の篠原哲雄はそんなもん興味無かったので映画の中ではスルーされる。
ソコもっとフィーチャーしてれば単なるベタなオヤジ映画になんなかったと思うが、そうする理由も別になかったんだろう。
オヤジはベタを好む。オヤジにさえ売れりゃ、いーんである。
先にも書いたが、最近あんまり映画観て寝るコトなかったのに、ちょっと風邪気味で体調悪かったコトもあって久々にこの映画は寝た。
だいたい十分ぐらいだが、そんだけの睡眠でもアラ不思議、目が覚めたら体調回復。
だから映画の内容とは全く関係無いが、イイ気分で劇場を後にできたんで、『起終点駅 ターミナル』とゆー映画と篠原監督には感謝しとこう。
ありがとう! だから俺に仕事よこせ篠原哲雄!
【ママー!これ買ってー!】
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そういえば現代のハナシなのにスマートフォンもパソコンも出てこない『起終点駅 ターミナル』であるが、コレもオヤジに配慮した結果だろう。
どんだけダメなオヤジをターゲットにしてるんだ! と思わずにはいられないが、世の中そんな映画も必要である。
ダメオヤジになったつもりで観れば、こーゆー極度に意識の低い映画もオモロイもんだ(そうか?)
ところで極度に意識の低いオヤジ映画といえばセガール映画は外せないだろう。
生意気な若造をブチのめし、説教し、そして何故か慕われる……理想だろう! これオヤジの理想だろう!
でも『沈黙の鉄拳』(2009)はオヤジ映画とか関係なく、最近のセガール映画で一番面白かったので誰にでもオススメです。
観てね!
↓その他のヤツ
起終点駅(ターミナル) (小学館文庫)