渋谷ハロウィンのバカ騒ぎに脱法ドラッグ的なのキメたクズが乗用車で突っ込み、浮かれた連中を血祭りにあげてくシーンから始まる。
多少ズレたが、そんな映画をこの時期にブッキングした配給の人は優秀である。
んで、その映画『グラスホッパー』観てきたんで感想書く。
以下あらすじ。
渋谷ハロウィンの大惨事に巻き込まれて恋人を失った生田斗真。
さて一年後、失意の日々を送る彼に何者かからメッセージが届く。
「真犯人は別にいる。フロイラインという会社を探れ」
かくして渋谷を拠点にアヤシゲなダイエット商品を売り捌くフロイラインに潜入する生田斗真だったが、やがて変な殺し屋連中の諍いや策謀に巻き込まれてしまい…。
ところで冒頭の渋谷大虐殺とゆーのは当然のコト秋葉原連続殺傷事件をネタにしてるんで(原作読んでないが、そっちはハロウィンとか関係ないと思われる)、息も絶え絶えの被害者を無神経にもパシャパシャと写メで押さえる連中なんかが出てくる。
一人の男が「本物の死体だぜー!」とニヤニヤ笑いを浮かべながら死体写メをLINEで送信すると、そのスマホにバッタがとまる。
で、バッタが飛び立つとカメラはそれを追ってって、スクランブル交差点の空撮になる(クレジットにドローン空撮担当の項があったから、ドローン撮影かもしんない)
うじゃうじゃと人の群がるスクランブルの混乱。その上空に一匹また一匹とバッタが飛来してきて、やがてスクランブル上空を埋め尽くしてしまう。
スクランブル大惨事の描写自体はヌルく、別に人がポンポン撥ねられて血がブシャブシャいってるワケじゃないが、そうは言ってもこの不穏なアバンタイトルには結構イヤな迫力がある。
もちろん連想されんのはハリウッド大惨事映画『イナゴの日』(1975)であり、なんとなくこの監督は映画マニアっぽいから、そのあたり意識したんじゃなかろか。
なかなか、尖った映画である。
…と思っていたが、結論からゆーと不穏で尖ってんのは最初の方だけで、展開と共にどんどん緊張感が薄れてアホっぽくなってく。
でもって、なんとなくイイ話的に収まるトコに収まる映画なのだった。
色んなアヤシゲなヤツとか出して結構風呂敷広げたりするが、それを物凄く小さく畳んで100円ショップに陳列するよーな、そんな感じ。
アバンタイトルのバッタの群れが印象的だが、なんか意味があるかとゆーと別に無いとゆー、そんな映画なんである。
伊坂幸太郎の原作。なので一応ドンデン返しみたいのあるが、正直ものすげーどうでもよい。
っていうかこの脚本の人とか監督はどんでん返しとかあんま興味無かったよーに思え、謎を謎としてクロースアップしないでカッチョイイ(と作り手は思っている)殺し屋のシーンとかばっか強調すんので、ほとんどドンデン返しが意味を成してない気がすんのだ。
終わりの方、殺し屋の浅野忠信と山田涼介のちょっと印象的なシーンが出てくる。
なんとゆーか、いかにも黒沢清とかが好きな映画マニアがやりそーなシーンだったりするが、たぶん監督の人はソコで映画を終わらせたかったんじゃなかろか。
実際はその後にどーでもよいドンデン返しとホロリな結末が出てきて切れ味悪くなってるが、もしソコで終わってたら面白かったのになぁ。
そんなワケで、極端なハナシ『スモーキン・エース 殺し屋がいっぱい』(2007)とか『殺人狂時代』(1967)みたいな殺し屋いっぱい映画とか、あるいは『レザボア・ドッグス』(1991)みたいな犯罪映画やら香港ノワールやらをこの監督の人はやりたかったよーに思え、なにが面白いって殺し屋の絡みが面白いのだ。
浅野忠信が眼力で人を自殺に導く殺し屋。しかも自罰意識から殺した人間が見える。
Hey!Say!JUMPの山田涼介がシジミ大好きなナイフ使いの殺し屋。耳鳴りに悩んでて、誰か殺すと耳鳴りが止むんでつい殺しちゃう。
吉岡秀隆が大人しくて真面目な会社員風殺し屋。規則正しく淡々と人殺して、家に帰れば温和な家庭人。
こーゆー殺し屋が入り乱れる。
ぶっちゃけタランティーノとかガイ・リッチーみたいのを狙ったような気取ったセリフ回しとか超ダセェと思うが、ゆーても謎の殺し屋ばっかやってる気がする安定の浅野忠信と、言われてみれば確かにアブナイ目をしている吉岡秀隆が殺し屋ってだけでなんとなくグっとくるもんがある。
お二人も良かったが、しかし最大のサプライズは山田涼介で、そのキレのあるアクションに驚いてもた。
そらジャニーズなんだからダンスできんのは分かってたが、こんだけ動けるとは思わなんだ。
山田涼介のアクション・シーンは結構用意されていて、最後は浅野忠信と闘うが、そーゆーのがお遊びじゃないちゃんとした殺し合いに見えんのは最近の邦画を考えればナカナカ凄いコトなんじゃないだろーか。
浅野忠信のオヤジに宇崎竜童、極悪犯罪組織のドンに石橋蓮司、山田涼介の相棒に村上淳と、それにしても渋い顔の俳優ばっか集める。
フロイラインのドS社員が菜々緒。ベテランに囲まれるとこの人の固い芝居は浮く。
真面目っぽいシーンでもちょっと笑っちゃったもん、この人が喋ると。
だからなんですか、コレ結構面白いんだけど、ハナシがさ…ハナシはメチャクチャ雑だったんだよなぁ。
アレだ、フロイラインに新入社員として潜入した生田斗真に菜々緒が会社の秘密ベラベラ喋るトコとかそうだし、「アイツは殺し屋だ! 追え!」とか無茶でアホみたいな命令して、んでその後で殺し屋を追って横浜に行っちゃった生田斗真を見失って怒り狂う、とか。
ほんでコレがまたドンデン返しに絡むトコでもあり、菜々緒が生田斗真を見失うトコも含めて実は誰かさんの策略なのだが、こんな不確実でバカバカしい策略ってないだろう(観れば言ってる意味が分かる)
でもって、フロイラインってのもホントにバカみたいな会社で、ココはなんと中毒性のあるダイエット飲料売って人々を廃人にしてるんである(!)
かようにリアリティ皆無で笑うしかないバカ設定をキッチュとしてでなく真面目にやっちゃってるんで、こんなん笑うしかない。
フロイラインの黒幕は石橋蓮司だったりするが、この人率いる極悪犯罪組織も含めて、なんかショッカーみたいな設定である。
こーゆーのは果たしてどの程度まで映画の作り手が悪かったのか判断しかねるところで、伊坂幸太郎の小説とゆーのはいつもハナシの根本の部分とかディティールがテキトーでアホなのだ。
なんや面白いキャラクターをその世界で遊ばせる、とゆーコトに主眼が置かれてんだろうから別にそれでいいのかもしんないが、面白いキャラクターっちゅーても所詮は気取り腐ってアタマの悪い中二丸出しセリフを吐くバカ連中である。
『ラッシュライフ』の中にカッチョイイ(と伊坂は思っている)泥棒とその弟子の、こんな感じの会話が出てくる。
「俺、すげー法則発見したんすよ! リンゴって木から落ちるじゃないすか! アレ、なんらかの力が働いてんすよ!」
「ほぉ、凄いじゃないか。ニュートン先生」
…どう受け止めるかは人によりけりでしょーが、俺に言わせればこんなアホ会話をストレートに書く作家はすべからく無能である。
何がダメかって、こーゆーアホをリアルでカッチョイイこととして捉えてしまってるあたり、サイコーにダメ。
逆にホンワカとした童話の構造の中で似たようなハナシを展開した処女作の『オーデュポンの祈り』とか中高生が読む分にはオモロイ小説だと思うけどさ。
だからアレだ、結局いつまで経ってもティーン向けのおとぎ話でしかないんだよ、この人の小説は。
なのでこの映画も原作がそもそもダメだとも言えるが、そう考えると原作のワリには結構、いや大分、いやいや相当面白いんじゃなかろか。
…なんか伊坂ディスになってるが、生田斗真とか吉岡秀隆が伊坂幸太郎の世界観を体現してんので、伊坂好きな人も面白く観れんじゃないすかね。
知らんけど。
(文・さわだきんたま)
【ママー!これ買ってー!】
Spike The Best 428 ~封鎖された渋谷で~ (PS3)
Spike The Best 428 ~封鎖された渋谷で~ (PS2)
実写取り込みの渋谷群像劇ゲーム『街』(1998)の姉妹編。今回は『24 Twenty Four』(2001)をパクったようなテロと戦う渋谷群像劇です。
どうせゲームだからとリアリティとかハナシの整合性とか無視して変なキャラクターやらシチュエーションを連発、伏線に伏線を重ね、その全てがラストのテロ事件に収斂してくのが快感。
なんつーか、ダメな部分も含めて伊坂幸太郎の小説とよく似てる気がするが、でもゲームって媒体だとダメなトコがあんま気になんないからオモロイもんっすね。
結局、見方の問題か。アレだな、伊坂原作は実写映画じゃなくてアニメとかゲームにしたらイイんすよ。
↓その他のヤツ
グラスホッパー (角川文庫)
原作読んでないのに、原作がダメだ。というのが、おかしいな。と思いました。映画は、原作から離れたストーリーになっていますよ。
うーん、確かにそうですね。
原作も読んでみます。
あんたそりゃ「ダメ」なんじゃなくて「嫌い」なんだよ、あんたが。あるいはあんたに伊坂がダメなんだ。水と油。根本的に合ってない。確かに伊坂は無能だろう、あんたを喜ばせるというジャンルにおいては間違いなく。
ははは、いやマジその通りっすよ。しかも「嫌い」に「やっかみ」まで入ってますからね、俺。タチ悪いねぇ。
結局、伊坂さん売れてんだから才能あんのは間違いない。
才能あって売れてんだから俺みたいな売れないヤツは多少文句ゆーてもよかろうと、んなこじらせた捻じ曲がり根性で書いとるワケです。
あの軽い文体はやっぱ売れ線で魅力的なんだろな…俺もそう書かないと売れねぇよバカヤローチクショー、とか思いながら。
原作知らないのに語るな
特にグラスホッパーなんか原作と映画で話の内容大分変わってくるのに
伊坂幸太郎嫌いなら何故観たのか
嫌いな作家の映画を観るほど暇なんですかね
まぁどうでもいいけど
「すべからく」って、「全て」っていう意味ではないかと。
よくある誤用だけど、カッコつけて使ったり、批判する文章で使っちゃったりすると、恥ずかし過ぎてつらい。
「すべからく無能である」っていう罵倒はかなりつらい。。。
確かに「すべからく」は「すべて」という意味ではないけれど、「すべからく無能である」という文章を「罵倒」と捉える感性はどうかと思います。
「罵倒」という言葉の意味、わかっていますか?
映画観てないけど原作読んでモヤモヤしてたらココを見つけました!的確かつ辛辣な感想!スッキリしましたよ〜^ ^アレを面白いって言う人にどう面白かったのかの感想が聞きたいです。