『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』とかいうワンちゃんの映画を観た。
これは寝た。30分ぐらい寝た。そしてぶっちゃけあんま面白くなかった。
でも寝てるせいもあんので、あんま信用しないように。
以下あらすじ。
なにやら複雑な家庭に育ち、愛犬とトランペットだけが心の支えな少女がいた。
だが、ある日のコトその愛犬が捨てられてしまい、少女は大ションボリ。半ば自暴自棄気味になりつつ、愛犬を想いながらトランペットを吹き続けるのだった。
一方、捨てられた愛犬はと言えばクソ人間どもにさんざん虐げられた末、ついに保健所送りになってしまう。
愛犬を求める少女のトランペットの調べに導かれるように、愛犬は仲間とともに保健所を脱走。
にっくき人間どもを食い散らかしながら少女の下へ向かうのであった…。
開幕早々、無人の街を少女が走ってるシーン。どうも異常事態らしい。
やがてワンちゃんの群れが少女の前に現れ、このワンちゃんたちが街を襲ったんだと分かる。
っていうか予告編で言ってたからそれは知ってたけどな。
予告編といえば、その時点であんま面白くなさそうな雰囲気はあんのだった。
地味ぃな画が続いてさ、「これは犬版『猿の惑星』だ!」みたいな文句が出んの。
そんな大上段に構えちゃいかんっつーの。絶対観たらガッカリすんだから。
んで、どういう映画かっつーと要するにアート方面からアプローチしたアニパル・パニックみたいな映画で、ワンちゃんの群れ大暴れと言えば『怒りの群れ』(1977)、『ドッグ』(1976)、個体だと『クジョー』(1983)とか、あとなんかあった気がする。あぁいうの、アートっぽくしたヤツ。
少女と愛犬のハナシでもある。子供+ペット+アニマル・パニックだと二十日鼠と少年の『ベン』(1972)とかあった。なんにせよ、ありふれた映画ではある。
いや俺がムカつくのはさ、こんなのがカンヌのある視点部門(どの視点だよ?)で賞もらってるコトなんだよ。
だって、コレがある視点で評価されんなら『ベン』だってある視点から観ればケッ作だろ。
『ホワイト・ゴッド』はパルム・ドッグとかいうカンヌ最高賞パルムドールをもじったジョーク賞みたいのも獲ってるが、なコトいったら『クジョー』の狂犬病セントバーナードだってカンヌ出しても恥ずかしくない大熱演だっつの。
エラそうな賞にもエラそうな批評家にも完無視決め込まれたが、結構面白いワンちゃんパニック映画はいままでたくさんあった。
果たしてどの視点から見て『ホワイト・ドッグ』がありがたーい賞をくれてやるに充分だと審査員どもが判断しやがったんだか知らねぇが、仮に「斬新!」とかそんなだったらソイツは単なるバカである。
エラそなアートっぽい映画ばっか観てるからそんなトンチンカン言えるんだ。こんなトンチンカン受賞になるんだ。
カンヌの審査員一同は反省して、歴史の中で忘れられていった無数のB級アニマル・パニック映画でも見てろ! コレよか面白いのいっぱいあるっての!
でもアレだな、ワンちゃん大脱走のシーンとか迫力あったよな、やっぱ(コロコロ主張を変える)
しかし迫力はあんだけど、ワンちゃんのお芝居超立派なんだけど、撮り方が下手なんだよな、コレ。
ワンちゃんに襲撃されて逃げ惑う人々! みたいなシーンの演出とかさぁ…いやホント、ジャンル映画をちゃんと観て学べよこの監督はって思うよなぁ。
ワンちゃん来る、人々がキャーって言って逃げる。それだけ。コレ、なんだかとてもアホっぽい画だ。
アート系映画からアプローチしたからこうなるんだろか。たぶんジャンル映画の職人目線で撮ったらこうはならない。
ワンちゃん来る、人々逃げる、そこにワンちゃんに噛み付かれて喉笛パックリ血がブーブーなショットを入れて、パニックになった人々がなんらかの事故を勝手に起したりするショットも入れて恐怖を煽る。
なんなら耳の悪い老人がパニックに気付かず優雅にお茶してる、ワンちゃんの群れの中にチワワが混ざってる、なんてユーモアも入れる。そうした方が面白いんだから。
でもこの映画は違うワケで、なんも面白くないしバカっぽい。エキストラの動かし方とかもすげー雑だ。
「君、それは君の見方が悪い。なぜならこの映画はゲージツであり、下品な見せ場なぞ入れる必要はないのだよ」
と誰かエラい人が言うのかもしんないが、やっぱ納得できん。
ワンちゃんの暴走が見せ場じゃないなら何が見せ場か。主人公の少女とワンちゃんの交感か。
だとしてもだな、ソレのネズミバージョンなんて『ウィラード』(1971)と『ベン』でやってるじゃないか。別にやっててもいいけど、面白けりゃ新奇性なんてどうでもいいけど、ハナっからアート映画にあぐらをかいて観てる人を楽しませる気のない作りしてんだとしたら傲慢そのものだぞ。
っていうか冒頭の無人の街も撮り方も面白くない。予算の問題なんて良い訳すんなよな、コレより遥かに予算のないジャンル映画で、もっと面白くワクワクドキドキするように無人の街を撮ってんのあんだろ。『地球最後の男』(1964)とかさ。
警察VSワンちゃんのアクションシーンも全然盛り上がらない。盛り上がらないなら盛り上がらないなりに、『ゾンビ』(1979)に出てきたゾンビ討伐隊みたいに風刺でも込めて一つ面白くやればいいのになぁ。
しかしそんなの、全部俺の観る目が無いだけかもしれん。人間どもに執拗にいたぶられるワンちゃんたちの悲劇とか、そういうの主眼の映画かもしれん。
それにしたって類型的な悪人の数々は単純でつまんないし、コレならそれこそ『猿の惑星 創世記(ジェネシス)』(2011)とか、あるいは動物愛護系ドキュメンタリー映画のひとつでも観た方がよっぽどタメになるし楽しめ…とか悪口言ってたら終わらないのでこのあたりでやめとく。
とにかく、俺にはつまんない映画だった。
ただアレか、ワンちゃんたちが人間どもに反旗を翻す映画ですが、その迫真の演技は逆にワンちゃんたちがいかに人間どもの厳しい厳しい訓練を受けてきて、そして今でも従順に従ってるかを物語るので、そのあたりなんか皮肉で面白かったです。
あーあ、ワンちゃん飼いたーい!
(文・さわだきんたま)
【ママー!これ買ってー!】
藤子F不二雄先生の超能力コメディ漫画『エスパー魔美』、この巻収録の「サマードッグ」はシリーズ随一のケッ作エピソードとして名高い。
コチラも飼い主の勝手な都合で捨てられたワンちゃんたちが徒党を組んで人間に復讐するハナシで、ラストの皮肉とドライな余韻には実にグっとくんのだ!
↓その他のヤツ
ドッグ [DVD]
ホワイト・ドッグ~魔犬 [DVD]
言ってることは概ね同意。
でも「雑種犬にだけ重税を課す」というSFディストピアものでもあるので、同じような犬だらけなのは仕方がない、ということになってしまうのかと。