映画『独裁者と小さな孫』の感想を小さな孫になったつもりで無邪気に書く

コレ自体はイラン映画じゃないが(いろんな国製作)、監督イランの人モフセン・マフマルバフ。なのでとてもイランイランしてます。
お子様が出てくる。イラン映画ってよー出るよな、お子様(なんや知らんが制度的な理由らしい。イラン政府は教育映画を推奨していた)
無駄を省いたシンプルで寓話的な作劇。そうそう、イラン映画ってそんなんばっかだよな(それも検閲をすり抜けるためとかそんな理由らしい)
とってもイランな映画なのです。

ってなワケで『独裁者と小さな孫』観てきたんで感想書く。
あらすじをどーぞ。

どっかの独裁国家。そこにはエライエライ大統領さんが君臨しとって、コイツ子供だろうがなんだろうが「反乱分子っぽいヤツは片っ端から処刑してまえ!」みたいな恐ろしい人だが、まだ幼い孫の前では優しいおじいちゃん。強権発動で街の電力供給を止めたり再開したりして孫と一緒にキャッキャと遊んだりする(迷惑だなぁ)
だがそんな折、クーデター勃発。こうして権力の座を追われた大統領と孫の逃走劇が始まるのだった。

https://www.youtube.com
https://www.youtube.com キュートな映画なのです。

観るの楽な映画って好きなので、冒頭、「どっかの国」のテロップ。続いて煌びやかな首都を走る車からのキラキラした映像。ほんでその街を孫と一緒に見下ろす大統領とお孫さんの画。どんな設定の映画なのか一発で分かる単純明快なオープニングにニヤニヤってなる。やった、楽な映画だ!
楽な映画なので、はい爆発起きました、の1カットでクーデター勃発の表現。無駄が無い、無駄が無い。字幕観なくてもハナシ全部分かる映画。楽。イイ。

そのあたりいかにもイラン映画(じゃないけど)っぽいが、イラン映画ちゅーとオレ的にはやたら淡白で抑揚の無いイメージがある。
イラン映画の大物キアロスタミの『桜桃の味』(1997)なんてあれ、90分くらいオッサン二人が車ん中で話してるだけってゆー、それでミニマリズムかとゆーとそんな感じでもなく、ホントにただ(軽く思弁的な)日常会話をずっとしてるだけってゆー、おいおいよくそれで映画成立したなみたいな、なんかそんなんだった。

それ考えっとコチラ『独裁者と小さな孫』はマコト展開に波乱万丈感あり、むしろアップテンポなので意外に思ったりする。
大統領と孫の逃避行が始まってからはサスペンスの連続で、たとえばホラ、貧乏床屋に二人が隠れるシーン、窓の外を自動小銃をブッ放しながら反体制派のトラックかなんかがガァーっと通り過ぎる。ココはコワい。「逃げろ! 反体制派のヘリだ!」なんて派手なシーンもあり、かなりハラハラドキドキだったりする。

んでさ、そーゆー緊張の中に笑いがいっぱいあんのが面白いトコで、さすがイラン映画(じゃないけど!)らしく風刺の効いた政治寓話。
笑いっつっても、しかし相当微妙な笑い。大統領カーの中で喧嘩しながらも外の民衆に向かっては満面の笑顔で手を振る大統領の二人の娘、こーゆー分かりやすいギャグもあるが、基本は緊迫した極限状態に置かれた大統領その他の人々の、ちょっと間が抜けてたり過剰だったりするセリフや行動にクスっと笑える、ぐらいの感じ。
こーゆーのがハラハラドキドキの合間合間にあって、イラン映画らしからぬ緩急のついた映画だなぁと思ったりするトコだったりすんのだった。

映画が進むにつれて次第に数を増していく反体制派の軍勢。このあたりアナーキーな高揚感アリ(そしてやたら生々しい)
孫が回想する独裁政権下での豊かで幸せな日々は、ちょっとしたファンタジーだ。コレとてーも可愛らしい(そして悲しい)
硬い映画かと思ったが、そんなワケで結構アツくて娯楽性の高い映画なのだ。

http://www.makhmalbaf.com
http://www.makhmalbaf.com どこで撮ったのか知らんが、現実感の無い荒涼とした大地の映像がスバラシイ。風景をたっぷりフレームに入れてくるので、一枚一枚の画がすげーダイナミックになってます。

なんやインタビューではモフセン・マフマルバフ、「独裁者より独裁者を作り上げる構造が問題なのだ」とか言ってるらしい。
なるほどとゆーか、たぶんそんな理由で映画は反体制派に追い詰められる独裁者と孫の視点で進むんだろう。
ほんでその視点で見ると、この独裁的な大統領さんとゆーのも軍服脱がせりゃ普通の人で、この人はこの人で独裁を生む土壌の犠牲者だったのだとゆー、なんかそんな風な感じになってくんである。

でもアレだな、それ伝えるためにすげー分かりやすく作られてるワケで、ラストなんてアレちょっとやり過ぎだろうと思ったりはする。
なんつーかな、ネタバレはしませんが、まぁなんか反体制派の民衆やらさっきまで体制の味方してたハズの兵士さんたちがギャーギャー言い合うワケです。
「燃やせ! 大統領を燃やせ!」「いやそんなの生ぬるい! 首吊りだ! もっと苦痛を!」「貴様! さっきまで我々を弾圧してたじゃないか!」みたいな。

ほんで、その一人にこんなコト言わせたりする。「憎しみは憎しみを生むんだ!」
そりゃそうだろうと思うが、わざわざセリフで言わせにゃならんかったくらいマフマルバフの問題意識は切実だったとかそーゆーコトだろか。
このあたり、それまでの緊迫した空気が一気に消えて急に説教くさい演劇みたいになっちゃって、オレ的にはエーって感じなのだった。

まぁ、寓話だからって言っちゃえばそうなのか。知らんが、子供に見せるの想定して作られた映画なのかもしれん。激しい暴力シーンとか無いし。
そこらへん、やっぱイラン映画ってことか。
それだけ真摯な作りの映画ってコトか。
なんにせよ、面白い映画だったな、コレは。

…でもまぁオレ寝てるから、実際どんな映画か知らんけどね。

(文・さわだきんたま)

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そーいえば観よう観ようと思って観てないヤツ。コチラも独裁テーマの政治寓話。

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