ハゲのジョニー・デップは『ラスベガスをやっつけろ』(1998)で見たコトある。ハンター・S・トンプソン役。その後は頭髪の豊かな役ばっかだった気がすんので、久々のハゲー・デップです。ハゲてます。
ハゲてるだけならいいがアタマがおかしい。おいやべぇぞ、イタリア系のマフィアがここサウスボストンでハバを効かせてるぞ、ウチらFBI的にヤツらなんとかしねぇとマズくね? つって、冴えない系FBI捜査官は思い立つ。そうだ、そういや幼馴染がアイリッシュ系ギャングのプチ親玉やってた。そいつと手ぇ組んでさぁ、イタリアン・マフィア壊滅させちゃおうよ!
で、捜査官はプチ親玉のジョニデとこっそり手を組むが、この人アタマおかしかったんでタイヘンなコトになるとゆー、そんなハナシが『ブラック・スキャンダル』なのです。わー怖い。
しかしアレだな、ジョニデっつーと変な役ばっかやるよな。『シザーハンズ』(1990)でしょ、『エド・ウッド』(1994)でしょ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003)でしょ、あとホラ、あとなんか色々あるだろ。
変な役っつーか、周囲から浮いてる系の人の役多い。天然っつーか、イタイちょっと手前っつーか。だいたい友達のいない人の役ばっか。フリーク。
フリークなジョニデが『ブラック・スキャンダル』じゃ暴力的でそのくせやたら几帳面だったりする偏執狂の変なギャングやる。コレ、怖い。そしてキモい。
この人がFBI捜査官のお宅に入り浸ったところ「なんで毎晩アイツ呼ぶのよ! いい加減にしてよ! プライベートもクソもないじゃない!」とFBI捜査官のカミさんは怒って部屋にこもってしまった。するとジョニデお部屋に訪問、「君は旦那に恥をかかせてるんだぞ…」と説教し初めてカミさんを怯えさせ、かと思えば「風邪には気をつけないといけないよ…」とか言って髪を撫で回す。これはキモい。
ところで、キモいはいいが怖いはいいが、いやジョニデ相変わらず面白いが、しかし思うのだ。この人、全然ギャングの親玉に見えない…。
サウスボストンでは誰もが彼を好いていた、とかつての手下は語る(映画は手下の回想から始まるのです)。ジョニデがヨボヨボのババァに優しくするシーンとか入ってくるが、その物腰がなにやらいかがわしい。
暴力的な偏執狂だが地元愛が強くて仁義を重んずるギャング、みたいなキャラなんだと思うが、なにかが欠けている。なにか? いや知らんけど、貫禄とかそーゆーのじゃなかろか。あるいは、本心がふっと見える瞬間とか。コイツ狂ってるけど、でも友達になったら面白いかもなぁとか思うトコが無い。そーゆーの無いと見てるコッチはあんまギャングの親玉に納得できんよな。
アレだ、この映画のジョニデ爬虫類じみた演技だったが、『その男、凶暴につき』(1989)の凶悪殺し屋・白竜とかアタマに浮かんだぞ。あの映画の白竜が地元ギャングのボスやってる姿を想像してみたまえ。できんでしょう、君。いや、できるかもしれないが。どう想像するもみなさんのご自由ですが!
フリークのジョニデはやっぱりフリークで、人を率いる感じの人じゃなかったんだなぁと、そーゆー感じか。なんか安心したような、ガッカリしたような。色んな役ばっかやってるワリに、ジョニデの引き出しは少ない。
だからスターなのだ、とも言えるが。
ほんでさ、じゃあそーゆー作りにしちゃえば良かったのにって思うのよ。つまり、この映画ジョニデの元手下の回想ベースで進むワケだから、手下の回想に徹しちゃえば良かったじゃんと。
色んな元手下が出てきてジョニデの人となりとめくるめく犯罪行為を披瀝してくんだけど、語っても語ってもジョニデがどんな人間なのか結局全然分からないっつー、そーゆー作りにしちゃえば良かったんですよ。そしたらジョニデのキワモノ演技も引き立つじゃん?
なんか、変にジョニデに肩入れする。手下の回想ベースで進むのに、ジョニデ主観のシーンがたくさん入ってくるって構成。コレ歪だよな。
実録モノだからなにか大局的に語ろうとしたのかもしんないが…つか、だったら回想形式にしないで普通に編年体でやりゃいいんじゃね?
淡々と事実を積み重ねてその表面をなぞるだけの展開はとても盛り上がらん気がするが、かといって表層に徹するワケでもなく、だからといって回想によってなにか悲劇性を強調するワケでもなく、とゆー作りは結構中途半端で面白くない。
実録モノの脚色は難しい、とゆーコトでもあろうけれど。
しかし微妙なトコで、面白くはないがつまらなくはなかったりした。映画が中途半端なら感想も中途半端だ。いいじゃないか、中途半端。中途半端で何が悪い。
要するにBな映画なのだ。セガール映画、あんなん面白いすか? 面白くないでしょ? でもつまんなくはない。テレビでやってたらつい観ちゃう。それがBってコトじゃないかな。
盛り上がらないが、見せ場はいっぱいある。成長株の俳優さんがいっぱい出てきて、こう、ちょっとイイ顔を見せつけ合う。演技合戦とゆーか顔面力合戦。しかしそこまでイイ顔でもない。暴力シーンはそれなりにエグイ。でもなんか迫力は無い。緊張感あるトコもあって面白いが、中だるみする。
あぁ中途半端。あぁB級。観て損したかと言われれば、損はしてない。ダラっと観ればそれなりにケッ作。これは、在りし日の新橋文化か浅草中映で二本立てで観るべき映画だ。新橋・浅草案件のB級映画、嫌いじゃないです。むしろ好き。
ジョニデが実在のギャングを、とゆーとマイケル・マンの『パブリック・エネミーズ』(2009)があった。あれはあれで面白くなかったが、つまんなくはなかった。
ジョニデがギャングをやると新橋・浅草案件になる宿命なのか。だがギャングじゃなくても別に、ジョニデの映画は基本的に新橋・浅草案件のBな映画が多い気もするが。『ツーリスト』(2010)とか。そういうの好きなの? ジョニデ。
やっぱこの人、フリークだな。
(文・さわだきんたま)
【ママー!これ買ってー!】
全然関係ないですが、こないだ観て面白かったんで。スコセッシ印のハイテンション・ギャング映画です。監督が『インファナル・アフェア』(2002)とかの人。