まぁ、武侠映画って言うんか、こーゆー映画。紀元前50年ごろ、前漢時代の…と解説に書いてあったが、歴史の概念が存在しない俺の脳みそであるので、そう言われてもピンとこないコトこの上ない。
しかし別に分かる必要もなく、昔々、シルクロードはあんな部族こんな部族がシノギを削る激戦地で、それじゃ困るじゃんっつって中国でシルクロード防衛隊みたいのが結成された。そのリーダーがジャッキー・チェン。で、なんやかんやあってこのジャッキー率いるシルクロード防衛隊は辺境の関所に左遷と相成り、しかもエライ人にハメられ無理難題吹っかけられた。ほんでどうしよっかなって困ってるトコにジョン・キューザック率いるローマ帝国の部隊がナゼかやってきて…とまぁそんな感じのカンタンなお話らしい。歴史知識とか別にいらんでした。ヨカッタヨカッタ。
実際のところ珍しく開始一時間経っても寝てないが、それでちゃんと見てるかと言えばそうでもなく、最初の十分ぐらいはボケーっとしてて字幕を読んでいなかった。念のため言っておくと中国語は全く知らない。しかしながらそれでもちゃんとお話に付いて行けるバリアフリーな優しい映画である。さすがジャッキー映画だね!
だが、字幕は読まないがとりあえずずっと起きてはいた、とは残念ながら言えず、結局途中で寝てるんである。しかもローマ軍とジャッキー部隊とあとなんか砂漠の民みたいのがチャンチャンバラバラしてるいちばん楽しそうな場面でちょうど寝ている。
コレを観に行った映画館でかつて俺は親父に連れられて『プライベート・ライアン』(1998)を観たのだが、思えばあの時も映画中最大の見せ場である冒頭のオマハ・ビーチの激戦で寝ている。
最近気付いたが、どうも俺は画面が動くと疲れて寝てまうらしいのだ。その証拠に画面が全然動かない一般的に眠い系の映画ではほとんど寝ない。端的に言って、それはそもそも映画に向いていない。まぁ、それでも俺は楽しいから少しも問題はないのだ。ふふん。
さてこの『ドラゴン・ブレイド』、ジャッキーが出演してアクション監督して製作した、要するにジャッキー印の素朴なアクション訓話なんであった。
争いよくない、平和がいちばん、昨日の敵は今日の友。そして祖国への愛も遺憾なく描かれ、愛国者であると同時に人類愛の人ジャッキーの昔からなーんも変わらぬメッセージがまた聞ける。
変わらぬといえば、冒頭、砂漠の民みたいのとシルクロード防衛隊(だったかな? あんま見てないから知らん)がなにやら喧嘩しており、平和を愛するジャッキーはそれを諫めるために砂漠の民の女族長とタイマンを張る。ジャッキーの両の手が偶然にも女族長のオッパイを鷲掴みする形になってしまったのはその最中のコトであった。
そしてもちろん、「しまった!」とゆー表情で固まるジャッキーを女族長が平手打ちなんであるが、あまりにもコテコテのギャグであり、いったいジャッキー映画はもとより香港喜劇で何回そのシーンを見たか分からない。
コチラとしては腕を組んで頷きながら「うむ!」となるか、あるいは待ってましたと小さく拍手。はいはい、ベタベタ。いーんだよベタでジャッキー映画は!
その後、アンタさっきアタイを負かしてくれたね、ふん! さぁ好きにおし。アタイの命、アンタに捧げるよとおもむろに全裸になる女族長(むろん背中しか映らない)を見て慌てふためくジャッキー、などとゆーやはり何度も見た牧歌的なギャグを経由してジャッキーはジョン・キューザックと遭遇。コレはなにか、異文化の衝突がシビアかつアクション満載で描かれていくのか、などとはそもそもボケっと見てるんでまったく思いもしなかったが当たり前のようにそうはならない。
見せ場になんのは実に大らかなローマ人とチャイニーズの交流っぷりであり、ローマ人が一糸乱れぬ戦闘陣形を披露すればシルクロード防衛隊は演武を披露、互いにガハハ、ワハハ、やるじゃねぇかとこうソリッドな感じで親交とリスペクトを深めてく。人類に言葉の壁などなし。ただし、映画ん中ではジャッキーとキューザックが普通に英語で会話する(やはり英語はグローバルコミュニケーションに必要である)
すっかりお友達になったキューザック隊とシルクロード防衛隊の面々であったが、その幸せも長くは続かない。キューザック(の連れてる執政官の跡継ぎ)を追っていかにも悪そうな執政官の息子エイドリアン・ブロディが強大な軍勢を引き連れてやってきたのだ。
ってコトでキューザックとジャッキーはブロディと闘うのだが、そのあたりの集団アクションとかザックリしててやはり大らか。ジャッキー自身もう昔みたいに動けないからみたいのもあんのかもしんないが、色んな軍勢が雄大な砂漠ん中を砂ぼこり上げて移動して人種と衣装が入り乱れてるだけで面白いよねみたいな、なんかそんな感じであった。
実際、アクションの凄みとか全くと言っていいほどないが、なんか見てるとワクワクして楽しくなっちゃう。まぁ寝てたからその大半見逃してますが。
要するにそんな映画であり、これはもう安定感安心感しかない。砂漠の風景、キレイですね。関所のセット、おっきいね。衣装、とりどり。人がいっぱい、うわーなんか楽しいけどすげぇってなるほどは楽しくなーい。そんな映画である。
逆になにが悪いのかと我々(誰?)は諸君に問いたい。見た目にほどほど楽しく勇気と友情と仁義を重んじ、反戦と平和を朗らかに訴えかける。朗らかとゆーにはちょっと悲劇的な結末ではあるが、別になんか心を抉ったり皆無なんで朗らかである。ジャッキー映画なんだから朗らかである。
たまにゃあ政治信条、男女の心情、大人も子供も身長関係なくどなたさまでもそれなりに楽しめてネガティヴィズムに陥る可能性ゼロの、素朴な娯楽映画とゆーのもたまにゃイイもんじゃあありませんかと思うのでしたとさ。
…ところで、悪い人のエイドリアン・ブロディが良い人のジョン・キューザックを拷問にかけながら「鏡を見るとお前が頭に浮かぶんだ…」みたいなセリフ言うシーンがある。映画の中ではブロディの屈折したキャラクターの表現だったが、それとは関係なく物凄く腑に落ちる感があり、なんとゆーか、俺ん中でナゼかブロディとキューザックは見分けがつかないんである。
面長とゆー点を除いてこの二人に共通点があるようには思えないが、どうしても同一脳内ファイルに格納されてしまい、なんかの映画でブロディかキューザックの姿を目にする度に「こいつキューザックかな? いやブロディかな?」と脳がしばし停止する。脳内セキュリティ・ホールである。
ちなみにこの脳内ファイルにはクライブ・オーウェンも格納されているので、三人が一つの画面に並ぶと世界が崩壊します(俺ん中で)
(文・さわだきんたま)
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とくに何も頭に浮かばなかったんでニコラス・ケイジとヘイデン・クリステンセンが中国に来てなんか色々する系アクション史劇貼っときます。
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