《推定睡眠時間:7分》
コレ渋谷のスノッブ映画館イメージフォーラムでやっていて、映画サービスデーでもあった最終日に行ったが、満席。立ち見まで出ていた。
リチャード・カーンとか全く知らなかったが有名な人なんか。オルタナ系ロックアーティストのMV(↑)とかもやってるらしいから、その絡みで興味持ってた人も多かったんだろか。まぁ、どうせ客の半分くらいは上手いことカッコ良さそうなイケてそうなイメージに騙されたんだと思うが。
そんなワケでリチャード・カーンの特集上映です。リチャード・カーン、80年代NYアングラ出身の映像作家だが写真家だかの人。
公式サイトをチラっと覗いてもMOMAだのリディア・ランチだのソニック・ユースだのマリリン・マンソンだのとブランド価値の高そうな固有名詞が並ぶばかりでどんな映画なのか全く分からなかったが(いつもながらのブランド商法)、ジョン・ウォーターズのコメントが載っていたことからつい観に行ってしまった。
結果、インディーズ系犯罪映画の「タランティーノ絶賛!」、アイディア一発低予算ホラー映画の「スティーヴン・キング絶賛!」、そしてアングラ映画の「ホドロフスキー絶賛!」と「ジョン・ウォーターズ絶賛!」の宣伝文句は絶対に信じてはいけないと再確認したのだった。面白い評論家が面白い映画監督ではないように、名監督は別に名評論家ではない。
んでどんな感じかっつーと、なんかH・G・ルイスとかラス・メイヤーとかジョン・ウォーターズのあのポップな悪趣味感覚にパンク/インダストリアルな超攻撃的サウンドトラック付けたりする、俺ってヤバイでしょ? 系の自主映画から出発して、この特集で見る限りは時代を下るにつれて段々とメンヘラに接近、ハーモニー・コリンぽくなってく。
それまでリーゼントをキメてたヤンキーがポエムを語り始める感じだが、ヤンキーは浜崎あゆみとか倖田來未が好きってなワケで、最近はキラキラして甘ったるいギャル路線に転向したらしい。そーゆー系の映像作家さんである。
いやまぁ別につまんなくはないが、っていうかどちらかと言えば好きな系統の映画だったりはしたが、別にあーだこーだと騒いでもしょうがない、よくいる悪趣味系8ミリ自主映画出身の人だよなぁと、寝ながら見てボヤボヤ思う次第なんであった。ホニャラ~ン。
『グッバイ・42nd・ストリート』(1983)
カメラを買って嬉しくなっちゃったリチャード・カーンが(※推測)とりあえずタイムズスクエアを歩きながら撮ってみた。ついでにルイスっぽいチープな血みどろ映像とノイバウテンとかDAFみたいな感じのサウンドを載せて完成。
なんかヤバヤバなイメージを出したかったらしいが、ポルノ屋とか映画館とか美容室の窓に映り込みまくるカメラを持ったリチャード・カーンがとっても自主映画的ほのぼの感です。カッコイイけど。
『ストレイ・ドッグ』(1985)
画家(ビル・ライスとゆー人らしい)に一目惚れした変なオッサン。ねぇアンタ振り向いてよ、とアプローチかけるが相手にされず、悲観に暮れたオッサンはオ○ニーしながら身体がグチャグチャと崩壊してく。とっぴんぱらりのぷぅ。
なんとなくドイツの変態王ユルグ・ブットゲライトの初期短編みたいな感じだったが、撮ってる時期も同じくらいなんで、つくづくアングラや革命やと言ったところで人の想像力なんて大したコトないなと思わされたりしてもた。例によってパンク/インダストリアルな音楽はカッチョイイ。
『ウーマン・アット・ザ・ホイール』(1985)
血みどろイメージと攻撃的サウンドが控えめになって、代わりにちゃんとしたストーリーが入ってきた。凶暴なメンヘラ女の受難のお話。チンマン丸出しです。
なんかジョン・ウォーターズがこんなのばっかやってた気するな。タイトルからルイスの『シー・デビルズ・オン・ホイールズ』とかも連想されたが、アレ酷い映画だったなしかし(関係ないけど)
『サブミット・トゥ・ミー』(1985)
ストリップのパフォーマンス。いろんなバッド・ガールがストリップします、はい。
『ユー・キルド・ミー・ファースト』(1985)
メンヘラ爆発。家に居場所がなくひたすら怒りを溜め込むパンクというかゴスっ娘のメンヘラ少女(ウサギのぬいぐるみだけがお友達)が「ユー・キルド・ミー・ファースト!」と言って家族を撃ち殺す。貴様らみんな死ね!
撮り方とか音の入れ方とかすごくハーモニー・コリンの『KIDS』(1995)だったが、つくづく人の想像力とゆーのは…。
『フィンガード』(1986)
ジョン・ウォーターズが「サイコ野郎どもの究極のデートムービーだ!」とか言ってる。すごく納得するが、「究極のデートムービー」の部分ではなくジョン・ウォーターズがそう言ってるコトにであった。
ところ構わずセックスしてすぐ怒鳴り散らして人を刺しちゃうクソ男とクソ女(リディア・ランチ)のカップルが血と精液と四文字言葉を大量に撒き散らしながらダラダラと田舎を巡るハナシ。ジョン・ウォーターズこーゆーの超好きそうである。
イヤガラセみたいな映画だったが、そこはかとなくユルいユーモアがあったりして、ヒデェなぁと笑いながら観れる人には楽しいデートムービーなんじゃないの。
ってゆーかアレだな、リチャード・カーンの映画とゆーのはあんまマジメに黙って観る映画じゃないだろうコレ。
『X is Y』(1990)
これもストリップ・パフォーマンスだった気がするが、寝たんで覚えてない。
なんか実銃撃ってたな。
『ナチ』(1991)
ナチコスプレのストリップ・パフォーマンスです。
『フェイス・トゥ・パンティー・レイシオ』(2011)
急に最近の映画になる。手にしたカメラももう8ミリじゃなくてDVとかである。なんでもリチャード・カーンとゆー人は十年くらい映像製作から遠ざかってたらしいので、コレがそうかどうかは知んないが、とにかく復帰して撮り始めたのはこんな感じの映画(?)らしい。
でその内容はと言えば、チープなフェチ系ソフトAVとしか言いようがない。こう、カメラをだね、人種も様々なキャピキャピした若い女の子たちの股の下に置いてだね、仰角でパンティーを覗き込む。それが延々続く。
フィルムからデジタルになっただけでも受ける印象は全く違うが、反抗的で挑発的なバッド・ガールをモデルとしてた以前のストリップ・パフォーマンス短編と違ってコチラのモデルはそこらにいそうな普通のティーンの女の子って感じ。しかもあのパンク/インダストリアルのサウンドでなく柔らかいポップソングをサントラに付けてたりすんので、おいちょっと待てリチャード・カーン、お前に一体何があったんだと驚く。と同時に呆れる。
そういえば怒りに満ちた非行少年少女ばっか撮ってたハズのハーモニー・コリンも最近はキャピキャピなビッチがただただ戯れてアブリル・ラヴィーンを歌ったりする『スプリング・ブレイカーズ』(2008)を撮ってたが…。
『クリーン』(2012)
いろんな女の子たちが歯を磨いたりお風呂でシャワー浴びたりするフェチもの。
『FFP』(2015)
もはや覚えて無いが、上の二つとさして変わらないと思うのでどうでもいい。
なにか、身体が云々と批評家どもは理屈をこねそうであるが(初期から一貫して身体を撮る監督であった)、AVはAVだろう。
こんなのアートやなんやとお墨付きを与えてしまったら逆にリチャード・カーンの名を貶めるコトになるっちゅーの。
チープで汚くてロクでもないリチャード・カーンの映画を飾るのはMOMAでなく裏ビデオ屋の埃を被った陳列棚が相応しい(写真の方は知らないが)。
だからコレもしょうもないソフトフェチAVで別にいいのだ…。
しかしアレだな、時系列順の上映は分かりやすくてええが、こんなAVを最後に観て劇場を後にする観客のコトも少しは考えてくれよと思う。どんな顔して劇場出たら良かったの俺は。
なんというか、イメージフォーラムさんには大いに考えて頂きたい。そらもう色々。
(文・さわだきんたま)
【ママー!これ買ってー!】
キンドル版がやたら安かったが、画集とか写真集をデジタル端末で見ても全然面白くないな。
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