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沖田修一さんとゆー監督の映画は『南極料理人』(2009)てぇのを観たコトあるな。南極映画にハズレなし、南極に犬を持ってく『南極物語』(1983)も南極にダッチワイフを持ってく『大人のオモチャ ダッチワイフ・レポート』(1975)も南極に邪教を持ってく『アイス・ステーション』(1998)も南極に殺人鬼を持ってく『ホワイトアウト』(2009)も南極にソン・ガンホを持ってく『南極日誌』(2005)もみんな面白かったんで、南極にラーメンを持ってく『南極料理人』も面白いに違いないと確信。だいたい、南極映画のマイルストーン『遊星からの物体X』(1982)は南極犬の腹が破裂してラーメンが飛び出す映画だった。
そう安直に考えてたが、『南極料理人』は面白くなかった。もう全然面白くなかった。南極だからあえて寒い作風ですと言われたら納得するぐらい寒い映画だった。
なので結論からゆーとその沖田さん監督の『モヒカン故郷に帰る』も全体として見れば肌に合わないコトこの上なかったが、なんちゅーか、面白いトコはとても面白かったがつまんないトコは目を背けたくなるくらいつまんないとゆー極端な映画だったんで、なんかこう一言でどんな映画か言い難いなコレは。
そういえば『南極料理人』もなんとなく面白そうな雰囲気あるが別に面白くなく、それで具体的にどこがつまんないのかと言われても困るよーな微妙な映画だったんで、沖田さんとゆー人は微妙な映画を撮らせたら天才的な人なのかもしれん。
『モヒカン故郷に帰る』、モヒカンのデスメタルバンドの人が故郷の広島に帰る映画です。そのまんま。
アレだ、なにはともあれ柄本明の死期迫る鬼気迫る演技がサイコーなんだよこの映画。そこにボケーっと座って苦しそうに呼吸してるだけで迫真だったりするが、そこに突然と素っ頓狂なユーモアが入ってきたりして。
柄本明はモヒカンの人・松田龍平の父親。久方ぶりに恋人の前田敦子と一緒に帰郷した松田龍平を待ち受けてたのは柄本明のガン告知だった。ガーン。せっかく前田敦子との間に子供できましたよ結婚します報告して家族みんなでご祝儀ムードだったのに…。
とはいえ嘆いても仕方がないんで、松田龍平は柄本明と一緒にのんびり過ごしてその願いを聞いてやって最期を看取るコトになる。そんなお話であるから柄本明と松田龍平の絡みが多くなるが、まぁコレが面白い面白い。どこ切り取っても面白かったなぁ。
なんかいつものヌボーっとした松田龍平節炸裂で、あの無気力無表情の中の鋭利な眼差しと俊敏な身のこなしでもって柄本明の枯山水的存在感に対抗。いや別に平和な映画だったが、どこか緊張感を帯びて目が離せなかったりする。
そういえば去年の『先生と迷い猫』も似たよーな構図だったが、アッチはイッセー尾形VS松田龍平だったのだ。ベテラン演技巧者の老いと熱さに松田龍平の若さとローテンションをぶつけて化学反応を起してみる、とゆー演出技法が日本映画界には存在するらしい(※ちゃんと確認してみたら松田龍平じゃなくて染谷将太だった)
去年の映画、といえば堤幸彦の『イニシエーション・ラブ』は松田翔太の恋人役が前田敦子だった。すると前田敦子は松田ブラザーズを穴兄弟にした大物女優さんとゆーコトになったりするが、しかしコレが…。
ついこないだ観た『のぞきめ』とゆーホラー映画、主演の板野友美がとにかくヒドい大根っぷりとゆーか、いや小さい人だからかいわれ大根なのかもしんないが、それはともかく板野のぞきめの次に観た邦画がこのモヒカン前田だったんで、なんだかAKB出身女優さんのイメージがひと月もしない内に大暴落しちまったぜ…。
しかし別にAKBに気を使うわけじゃないが、ヒドイのはなにも前田敦子だけじゃなく、わりと全体的にお芝居がヒドかった気がするぞコレは(俺は)
とにかく白々しいとゆーかわざとらしい。なんか頑張ってる感あるが不慣れな元ヤン女演技がまったくハマってない前田敦子はもとより、松田龍平のかーちゃん役の(とゆーコトは柄本明のカミさん役の)もたいまさこのお芝居なんぞクサ過ぎてドリフのコントみたい。
松田龍平と柄本明の交流と演技合戦の傍ら、もう一つの軸として前田敦子ともたいまさこの交流も描かれたりするが、前者は面白くて目が離せないのに後者はつまんな過ぎて見てるのがツライ感じすらあったりしたのだ…。
なんでここまでヒドく見えるんだろと不思議な感じするが、浅く考えた結果、沖田さんとゆー人はあんま演技をつけらんない人なんだろなと勝手に納得した。
柄本明とか松田龍平みたいな演技ができて味わい深い人はなんも言わんでも、とゆーか下手に口出さない方が逆に面白いお芝居やってくれんのだろが、映画のトーンに合わせた若干の軌道修正とコントロールが必要そうな役者さんに対しても放任主義で行ってるっぽいんで、だから面白い役者さんはとても面白いがつまんない役者さんは素晴しくつまんないしヒドいお芝居に見えんだろなとなんとなく思ったのだ(現に、前田敦子も『イニシエーション・ラブ』の時はそんな下手に見えないしなんとなく魅力的な感じはあった)
あと、この人は女優さんに全くなんの興味も持ってないんだろな、とゆーのも前田敦子とかもたいまさことか美保純のお芝居を見てるとなんとなく感じはするところ。『南極料理人』が南極映画らしくオッサンしか出てこない映画だったっちゅーコトにだいぶ引きずられてるが、とにかくちょい汚めのオッサンやキュートな男の子を撮るのが大好きで、女優さんを面白く美しくその魅力を引き出して撮るなんてコトには一片たりとも注力しないのが沖田さんとゆー監督なんだろうと思うが、まぁ個人の意見なんであんま本気にしないよーに。
基本的にはそんな風な映画だったな。なにか、口を出さない映画。ただ流れに身を任せる映画。それが面白く感じるトコもあればつまんなく思うトコもある。
ナチュラル志向が効いてるなぁと思ったところといえば、柄本明と松田龍平が病院の屋上でタバコを吸うシーンなんて素晴しかった。ココ少し段取りを外しているらしく、おそらくはすぐに点く予定だったタバコの火が強風にやられて中々点かずに柄本明なんかちょっと笑っちゃうが、続けて「俺ももうダメだなぁ」とか言うのを松田龍平が少し心配そうに見つめてるのだ。
そーゆー偶然の産物をそのまま使っちゃうあたり沖田さんのナチュラル志向の強みだなぁと思う。地元の老人会とか中学校から引っ張ってきたエキストラの垢抜けない汚い面構えなんて実に味があるし…いやまぁ単純にスケジュールとか予算の都合ですと言われたらそうなのかもしんないが、それで面白い画にはなってんだから別にいいじゃん。
お話自体はなんのコトないハナシだと思ったんで別に書くコトとかない。つか、あんま面白いハナシを組み立てようともしてないんじゃないか。
こーゆーナチュラル志向の映画はあんまハナシを盛り過ぎると逆につまんなく感じるケースもあんので、コレはコレで別に悪くも…と思ったり。なんのコトないシーンはすごく面白いが、逆に面白いだろうみたいな見せ場ほど面白くないし下手(に見えた)
とにかく、柄本明と松田龍平、それにエキストラのご老体や地元中学生の顔を見てるだけで面白い、泣ける、グっとくる、とそんな映画だった。
あぁ、ちなみに笑いのセンスに関しては100%俺とは合わなかったんで、とりあえず俺ん中ではスベりまくっていたとだけ言っておく。
そのあたり『南極料理人』も同じで、そういえばあの映画も笑いを狙ったところは少しも面白くないが、ただダラっとカメラ回してオッサン俳優たちに好き勝手にお芝居してもらってるトコは面白かったなぁと思うのだった。
(文・さわだきんたま)
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ふと思い出したが、『先生と迷い猫』で主人公の老教授の妻役をやってたののもやはりもたいまさこだったのだ。そしてコチラのもたいまさこはしっとり沁みる例の柔らかい存在感を発揮しててすごく良かった。
『先生と迷い猫』、コレ地味な映画だったが面白かったな。イッセー尾形もサイコーだ。いやサイコーだが、いいかげん地方を舞台にして樹木希林かもたいまさこをとりあえず置いとけば癒し系映画っぽくなるでしょみたいな安易な作りは飽きたよとも思うのだ…。