《推定睡眠時間:0分》
あぁ久しぶりだなクレヨンしんちゃんの映画。最後に観たのなんだっけ、アレか、スパイのヤツか。調べたら2011年の作とあるから思ったほど昔じゃなかった。
そんで新作ですけど、面白かったよコレ! バカバカしくて。ギャグにキレがあって。
こんな面白くなってたのか映画クレヨンしんちゃん。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』(2007)までは毎年観てたが、あのあたりのムトウユージ版しんちゃん映画はあんま面白くなかったんでほとんど興味を失ってまってた。なんか損した感あるな・・・。
ってなワケで『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』感想書く。春日部の住民がみんな連日の悪夢に困ってたんで、かすかべ防衛隊が悪夢を追い出すべく夢の中に入って戦ったりバカやったりするってお話。
ところで今回は夢の世界が舞台なんでかすかべ防衛隊の見るお馴染みのバカドリームの数々が笑いを誘ったが、ディック脳であるからバカドリーム数珠繋ぎといえ躁&バカサイド・ディックの躁々しい代表作『虚空の目』が頭に、いや虚空に浮かぶのだ。
あるいはなんでもありの悪夢世界の光景にルーニーテューンズのシュールな傑作『『幻のドードーを探せ』がチラついたりするが、だからなんだと言われても困るよね。
んでね、脚本に劇団ひとりがクレジット(声の出演は無しとゆー珍しいパターン)されてんのと関係あっか知らないんすけど、ギャグを出し惜しみしないな今回は。
冒頭から飛ばしてる。スーパー企業戦士と化したひろしの夢、城咲仁と不倫するみさえの夢、スラリと手足が伸びて草原を走り回るシロの夢…とこうバーっと並べて、タイトルクレジットを挟んで即座に新聞を読むひろしとしんちゃんの「空港で運行停止、100人が足止め?」「うんこ停止!?」みたいなやりとりがあったりする。
わはは、くだらなーい。なんとなく笑いの打率はそんな高い気しないがとにかく投げられたボールは全部打ってくぞ的な感じ。同じネタを何度もしつこく重ねたりして、こんだけギャグを乱打されると若干食傷気味だったりもするが、このクドさがイイんです!
しかしギャグはクドイがスピーディな映画なのだ。これは、この高橋渉さんとゆー監督の人は見せ方が上手いんじゃないか。一つ一つのカットが短くてあまり間を作らない。絵を見せたら後は余計な説明セリフなんかいらんでしょとパッパパッパとシーンを切り替えてしまうので、躁病的に乱発されるバカギャグも相まってなんかドライヴ感すごい。
そんなワケでお話は強引で説明不足っぽくもあるが、なにどうせお子様向けのギャグアニメなんだ、それに夢の話なんだ、理屈なぞ気にせず最後までバカのまま突っ走ってしまえ! みたいな潔さ。グっとくる。
そういえばゲストキャラも珍しくキマってたな。今回はとにかく明るい安村と城咲仁とあと誰かが出る。
テレビで見るリアルとにかく明るい安村では笑ったことないが、いやこの人がこの映画だと実にイイとこで出てきて笑えるんだよ。城咲仁のリムジンは荒廃した悪夢世界で廃車と化している。わはは、なんて悪意あるユーモア!
あともう一人のゲスト、これは笑った笑った。「え、あれを食べるんですか!? …じゃあすいません、ちょっと失礼します」。観てない人はなんのことだか分からんだろうが、ここ必見。いやー、下らなくてサイコーだよこれは!
ちなみに、バカバカ言ってるがちょっと泣いている。敵役の孤独な少女とかすかべ防衛隊のクソ生意気なガキども(とくにネネちゃん)のストレートな交流っぷりはオッサンの胸に響いたぞ…!
アレだな、しかしギャグ100連発はいいが色々詰め込み過ぎじゃね的な印象あり、途中で間延びするとゆーか空回りする感はあるなこれは。やたら勢いはあるがストーリーラインが未整理なんであんま展開で引っ張れない、とゆーよーな。良し悪しか。
いや、それは置いとくとしてもしんちゃんが後半で良い子になってしまって家族愛を打ち出して泣かせようとゆーのは、別にこれだけじゃなくてある時期からのクレしん映画のお約束なのかもしんないがちょっとイヤだったんだな俺は。
泣かせる仕掛けとゆーのも『ヘンダーランドの大冒険』(1996)あたりだったらもっと上手にクサ味なく織り込んでたのに。随分とあざとくなったよなぁ。
夢の世界が舞台とゆーのは長いシリーズものアニメ映画の定番だろが、クレヨンしんちゃんの宿敵ドラえもんにはドラえもん一行が夢の中を冒険する『のび太と夢幻三剣士』(1994)があった。あの映画面白かったな。夢の中って設定をどれだけ一貫したストーリーに組み込めるか、仕掛けを作れるか。ラスト10分ぐらいの展開には大いにヤラれた。
しかし今回の映画クレしんとゆーのはそれより今敏なんかの横に並びそうな気がしなくもない。いや別にあんな風にエグいワケもないが、『パプリカ』(2006)とか『妄想代理人』(2004)をちょっとマイルドにしてお子様にも見れるよーにしたらたぶんこんな感じになるんじゃなかろか。
そういえば『東京ゴッドファーザーズ』(2003)のパロディとドタバタの感覚(+オカマ)は絵柄さえ変えれば案外クレしん映画と近くなりそな感じあり、『妄想代理人』は『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001)との関連で語られることもあるが、してみれば今敏は大人のクレヨンしんちゃんだったんだろかといらんことが頭によぎる。
『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』はなんかそんなよーな映画だった。
その他、かすかべ防衛隊と敵役の少女との交流にスポットが当てられた構成はなんとなく新鮮だった、ひまわりやら城咲仁やらの脇役の使い方が中々にニクかった、ボーちゃんの必殺技に驚いた、などなど(子どもみたいな感想)
そうだ、敵役のキャラクターはちょっとだけ『オトナ帝国の逆襲』のケンとチャコのイメージなのかもしんない。それはそれで見比べてみると面白そうな感じある。あと、今回パロディとかあんま無いです。
まとにかく、おもしろかったよ!
(文・さわだきんたま)
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『のび太と夢幻三剣士』はおもしろい。夢テーマゆーてもクレしんとは夢の扱いも語りも(当たり前な気もするが!)まったく違って比べるとおもしろい。
旧映画ドラえもんの中でもアクションが多くて軽い娯楽編だから、これは今の作画技術とテンポで新映画ドラえもんとしてリメイクして欲しいなぁ。