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マーベル・シネマティック大学(MCU)付属アベンジャーズ高等学校にマーベル童貞の俺が転校してきたのは昨年7月『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)の頃だったが、どいつもこいつもアベンジャーズアベンジャーズ言うから俺も入学さえすればキラキラ学園生活が待ってるのかと思いきやそうではなかったのだ。
…一人も友達ができない…全然学園生活に馴染めない! しかもなんか知らんがクラスの空気が悪い! 派閥争いが勃発してる!
アイアンマン…こいつは確か生徒会長だ…意識が高く学園の風紀にやたら厳しい…キャプテン・アメリカ…こいつは一匹狼の番長だろう…仁義に厚く男らしいが硬派ゆえ未だ童貞だと聞いている…ハルク…よく知らないがたまに登校したと思ったら暴れて保健室に直行するからたぶん複雑な家庭環境の人だ…ブラック・ウィドウ…オタサーの姫的なメンヘラらしい…スカーレット・ウィッチは不思議系でついてけない…マイティ・ソー…こいつが一番分からないが…何故か問題を起しても誰も叱らないから権力者の息子かもしれない…ホークアイ…何年も留年している…。
まとまるワケない…このクラスまとまるワケないよ!
いや、こっちから話しかければ友達になれるかもしんないが…こんな険悪な空気で無理だろ! 派閥争い巻き込まれるしハルク暴れるし!
従って文化祭で撮ったらしい『アイアンマン』(2008)も『キャプテン・アメリカ』(2011)も見ていない。もう無理だ、この学校俺には無理だ…。
入学早々にしてそんな暗澹たる心境になってしまったが、それでも俺が登校拒否に陥らずに済んだのはひとえに『アントマン』(2015)のおかげだった。
アントマンよ…アントマンよ! お前だけが俺の友達だ! アベンジャーズ高校唯一の友達だ! 転校してきてくれてありがとう! あとマイケル・ペーニャも!
…などと白々しい茶番が続いたが、前作前々作と観てないしあらすじすら知らないが唐突に『キャプテン・アメリカ』シリーズ三作目の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を観る気になったのはアントマン活躍の声を聞いたからなのだった。
万引きがバレて停学にでもなったのか今回マイケル・ペーニャは不在だったがアントマンはちゃんといる。良かった…蚊帳の外もいいとこだが俺も蚊帳の外だからちょうどいいぞ!
それにスパイダーマンもいる! スパイダーマン…俺の知ってる『スパイダーマン』(2002)と違う…『アメイジング・スパイダーマン』(2012)で高校デビューを果たしたと聞いてたが俺にリア充は無理だなと悟り再び非リアに戻ったのか…お互い色々あったんだなこの十数年! とりあえず久々の再会を喜ぼう! お前が母親に隠れて自分の部屋で白い糸出してたのはブラック・ウィドウには秘密にしとくから安心しろよ! お前の元カノがブサカワブサカワと蔭で言われてたのも黙っとくからな!
…だからいつまで続くんだよこの茶番は!
ほんでまぁ『シビル・ウォー』ですが面白かったなこれは。適宜アクションが入るとはいえキャプテン・アメリカのこじらせ童貞を反映してか辛気臭い絵面が延々続くんでツライが、終盤ホークアイとアントマンの酒気帯びコンビとスパイダーマンが出てくるや突然空気が和らいでお祭り騒ぎになだれ込むから別にいい。
空港大乱戦、面白かったですね! キャプテン・アメリカ来た、そこにアイアンマン殴りこみかけた、ウォーマシンも連れてきた、ホークアイ来たブラック・ウィドウ来たスカーレット・ウィッチ来たファルコン来たスパイダーマン来たアントマン来たシュワルツェネッガーもスタローンもヴァンダムもチャック・ノリスもみんな来た! ハルクは引きこもってる!
なんか違う映画も混ざった気がするが、こう次々と出てきて戦ったらもうなんでもいいよね! これはもう『ビーバップ・ハイスクール』(1985)の電車内大乱闘ですよ! いやこのフェスティバル感は『暴走パニック 大激突』(1976)かな! 『シビル・ウォー』、『暴走パニック 大激突』になります!
待てよ『暴走パニック 大激突』といえば…キャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーの関係性…これは『県警対組織暴力』(1975)じゃないか!
警官とヤクザ、立場は違えど漢の契りを交わした菅原文太と松方弘樹…だがクリーンな警察を標榜する新署長・梅宮辰夫の赴任によって二人の関係に亀裂が入る…俺は警官だ、だが激動の時代を共に生き抜いた松方弘樹は裏切れない…組織と仁義の狭間で苦悩する菅原文太…まったく同じ話じゃないか!
ロバート・ダウニー・Jrは梅宮辰夫だったのか…クリス・エヴァンスは菅原文太だったのか…アントマンのポール・ラッドは川谷拓三だったのか! 確かに川谷拓三ちっちゃくなるもんな暴力取調べで!
すべて分かった。MCU作品はほぼ見てないがアベンジャーズ高校のすべてが分かった。もう置いてけぼりになることはないだろう。
MCU作品は東映作品であった…アベンジャーズシリーズは深作映画であった…『シビル・ウォー』は『仁義なきシビル・ウォー/ソコヴィア死闘編』であった…!
今日の感想はやたら白々しいですね。
これはでもアレだな、なんか物知りな人のストーリー解説聞いたらもっと面白いんじゃないすか。
なんですか、アイアンマンとキャプテン・アメリカの対立っぷりとか共和党が民主党がみたいな意味なんだろたぶん。国連ビルの攻撃でアベンジャーズ分裂大混乱って911後のアメリカがとかISのテロで欧州世論真っ二つ移民憎しとかそんな感じだろう。アベンジャーズのせいでソコヴィア民衆がエライことに…イラク侵攻と無人機爆撃か。中国は国連を尊重しますよとこっそりアピールしてる場面もあり、物語とは別の水準でなにか色々感じさせてもくれる。
なんかそんなんだらけだろたぶん掘ると。そ-ゆーの町山さんが話してるだろうから聞いたらええんじゃないか気になる人は。MCU全部観て原作まで見たら微妙な関係性とか伏線とか至る所に仕込まれてるはずの小ネタとか見えてきてもっともっと面白いんだろな。
もう、でもそーゆーのどうでもいいな。アントマン出るからな、ホークアイ出るからな、しかもカッコよく出てきて見せ場さらうからな。こいつら出てきたらそれだけで面白いんで別にお話とかどーでもよい。ホント、この辛気臭い映画にあってくたびれオッサン二人だけが癒しだな。あとスパイダーマンもな。
他のMCU作品は知らんが俺が『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』観てノレなかったのはどいつもこいつも浮世離れしすぎだったからなのだ。辛うじて心を繋げることができたホークアイは大して活躍しなかった。それどころかヴィジョンなんてまたぞろ新しい浮世バナラーが出てきてしまった…しかもコイツもこじらせ童貞だった…!
オッサン大事。所帯持ち大事。一緒に酒飲んで楽しそうな生活感のある人大事。そもそもこれほどまでに事がこじれたのはやはりアベンジャーズの面々が仕事にしか興味のない独身もしくは童貞だったからだろう…お前らキャバクラでも行け! あるいは趣味の時間を確保しろ!
そういえばウォーマシン、ドン・チードルのヘボ感。アントマンがホークアイがと言ってるがラストのチードル・ジョーク&スマイルはやはり素晴しかった。メインどころなんでどうでもいいからアントマン、ホークアイ、それにチードルが飲み屋でアイアンマンとキャプテン・アメリカの愚痴をこぼすだけの映画観たいのでマーベルさん是非作って下さい。需要濃いと思います。スパイダーマンは未成年だからオレンジジュースでも飲んでヘラヘラしてろ。
飲み屋基準で考えればマリサ・トメイの登板も重要だろう。スタローン、ブコウスキー、フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、そしてミッキー・ロークと数々の不器用ダメ中年と酒を酌み交わしてきたマリサ・トメイが万年アベンジャーズ平社員の集う赤提灯に華を添える。
スカーレット・ヨハンソンじゃ飲み屋遍歴が圧倒的に足りない。あいつきっとホークアイとかが愚痴り始めたら「ねぇ、もっと楽しい話しようよ」とか言って不機嫌になるだろう…アベンジャーズに必要なのはヨハンソンよりも経験豊富なマリサ・トメイだ!
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、アイアンマンのオフィスより新橋のガード下が似合う中年たちに癒される東映映画であった…。
【ママー!これ買ってー!】
マーベルはアメリカの東映だろう…東映は日本のマーベルだろう…レオパルドン!