《推定睡眠時間:55分》
これは今年に入って最長の睡眠時間だったんじゃなかろか。睡眠時間だいたい55分くらい、対して上映時間が88分とゆーことは半分も観てない。
アップテンポとは言わないが別に眠くなる類の映画でもなくキチンと6時間も睡眠をとり加えて1時間の昼寝とカフェインの摂取も怠らなかったにも関わらずの爆睡に自分でも驚きを隠せない。
その上そんだけ寝たのに帰りも眠かったし今でもひたすら眠いから、なんかこう人間の果てしない可能性を感じますね。
それにしてもスゴイのがこれIKEAがそのまんま出てくるがIKEAが出来たせいで職と妻を失った町の家具職人のお話であり、あまつさえIKEA創業者イングヴァル・カンプラードその人が実名で登場(演じるのはビヨーン・グラナートとゆー役者)して過去にあったナチへの関与を口にする。
…それはちょっとIKEAさん懐デカすぎないすかね! 近所にジャスコが建ったせいで代々の店を畳むことになったシャッター商店街の商店主の映画にジャスコが協力するとは全く思えないぞ! いやジャスコだろーがH&Mだろーがマクドナルドだろーがまず無理だろう、普通は!
そらもちろん俺がちゃんと観てた範囲で言えば「あぁIKEAの創業者も意外と悩んでるんだなぁ」みたいな感じではあったが、IKEAは地元の皆さんを蔑ろにせず創業者の過去の罪にも正面から向き合うクリーンな企業ですみたいな広報戦略なんだろが、それにしたってこんな企業イメージを悪化させかねない…だって家具職人がIKEAディスったり「ナチだナチだうるせぇ!」って逆ギレしたカンプラードがIKEAに放火しようとする映画だぞこれ! 数年前にはカンプラードに抗議すべく反ナチ活動家がIKEAを爆破する事件もあったゆーから、そのネタはいくらなんでもブラック過ぎるだろ…!
ちなみに立川談春ナレーションの日本版予告(↑)では「巨大家具店が…」とかなんとか言って社名ボカしているが、これはやはり日本法人に多少なりとも配慮したんだろか。画面にバンバンIKEA出てきてるから無駄なんじゃないかと思うが…ってかIKEA渾身の自虐ネタをスルーしてやんなよ!
ほんで、とにかく寝たんで場面場面でしか覚えてないんですが、なんか面白かったんじゃないかなこれは。
開始5分ぐらいで既に睡眠ウェーブが来てるからスタート地点すら怪しいが、一代で名を成した老いた家具職人の店の隣にIKEAができたと。したら売り上げ激減で店を畳むことになった、認知症の妻を施設に入れざるを得なくなった、それでショックを受けた妻が死んじゃったと。野郎IKEA…俺の人生と妻の人生をメチャクチャにしやがって…あいつだけは許さねぇ! かくして家具職人はカンプラードを誘拐すべく旅立つのだった、となんかそんな感じのお話らしい。
重そうにしか聞こえないだろが妻がショック死するとことかピョーンと跳ねてそのままポックリ逝くんで案外笑える。そもそも英題で『HERE IS HAROLD』のタイトルと共に憎々しげにIKEAを眺める家具職人ハロルドを指す矢印がチョコンと出るオープニングからして洒落たユーモア。
家具職人がビョルン・スンクェストとゆー人。これが凄くええんです。重厚なお顔立ちで真面目にマヌケなことをする。ユーモアとペーソス。気合の入った太鼓っ腹も素晴しくカンプラード役のビヨーン・グラナートと裸で抱き合う場面のバカバカしさは絶品。予告編で出てきちゃうけどね(もったいないなぁ)。
この人がまぁカンプラード誘拐旅行に出て色んな人に会ってって、その一人がヘの字に曲げた口元がキュートな少女ファンニ・ケッテル。しかしどんな人だったんだろう。出会いの場面はおろかなんか喋ってるであろう場面の9割くらい寝てると思われんので正体不明。気が付いたら雪の舞うお庭で全裸新体操をする女(母親らしい)をスンクェストと一緒に無表情に眺めてた。どんな場面なのそれ…。
IKEA発祥の地スウェーデンのお隣ノルウェーの映画。ノルウェー映画とゆーと…なんとなく毒っ気アリアリのすっとぼけたユーモアのある変な映画ばっかなイメージあるな。『ジャンクメール』(1996)とか『トロールハンター』(2010)とか。これもその手のノルディックジョーク恐るべしな映画なんじゃないか。全部ちゃんと観たらまた印象違うのかもしんないが。
なにはともあれIKEA渾身の自虐映画として他に似た映画とゆーのも無いと思うんで、そこだけでもこれ面白い映画でしたね。
いや結局寝てるけどね。
(文・さわだきんたま)
【ママー!これ買ってー!】
こちらも非行老人の映画。ジジィに銃持たせたらなんでもかんでも面白くなっちゃうのズルくないすか。
こんにちは。舌鋒鋭いレビュー楽しませていただいてます。今回は、私もハロルドの助手席に乗って復讐についていったのに途中で飽きて寝ちゃった、って感じで記憶が飛んでる所があるんですが、改めて予告編を見て、こんなにイカれ(し)た映画だったのか、と思いました。今、じわじわきてます。
普通のトーンでそれ大丈夫なのみたいな際どいギャグを入れてくるので観てる間は普通の映画に見えるんですよね。でも後から冷静に考えたらなんだこの恐ろしい映画! みたいなw