サイバー黙示録映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』観たんで感想書く(ネタバレたぶんなし)

《推定睡眠時間:15分》

観た人の感想とかそういうの検索してみたりするとわりと俺が観た『シチズンフォー』と印象が違う…。
寝るには寝たが15分くらいだし大体の場面はちゃんと見てたはず。その15分に印象を覆すなにかあるのか。具体的にはスノーデンが香港から脱出する前後あたりだと思うが…久しぶりにもっかい観てみよかなと思ったなこれは。

スノーデン、告発のためコンタクトを取ったのがドキュメンタリー映画監督のローラ・ポイトラスとジャーナリストのグレン・グリーンウォルド。スノーデン事件の当事者ポイトラスがその舞台裏を克明に記録したドキュメンタリーが『シチズンフォー』ってんで、これはとてもニュース価値の高いすごい映画じゃないすかね。

もうほらあのスノーデンが暴露した内容はみんなだいたい知ってるわけですし殊更書くよなこともないというか書けるよな知識ないんで誰かにお任せしますがこれはあれです煽る、とにかくヤバイぜ感を煽る超サスペンスフルなサイバースパイ映画で面白かったなぁ。
カッコイイんだよねいちいち。暗号化されたメールが画面いっぱいに広がってね、それがデコードされてく映像とかイメージビジュアル的に入ってきたりして。インダストリアル、あのスロッビング・グリッスルが最初のアルバムでやってた方のインダストリアルみたいな音楽もメチャクチャ不穏で良くて。警戒してんのか基本インタビューは当事者のみで部外者に近寄ろうとしないんですが、そのおかげでこっちまで告発に加担してる気分になって臨場感とスリルありありとこうなる。

ほんでこれスノーデンの映画ではあるがポイトラスさんが言うところの911三部作の最終章に位置づけられてる映画でもあるらしいんで、なんか色々撮ってくっつけるわけです。建設中のNSAの施設を定点観測的に撮ったヤツとか、活動家にサイバー護身術を講義するハッカーとか。これが911後にアメリカが行き着いた場所だとそのよなことを言いたいらしいんですが。
だからスノーデンが凄いのは告発の内容よりも告発を裏付ける資料を全部持ち出したことだと読んだことがあるんですが、そのあたり映画だとわりとどうでもよくてこれは結構サイバー黙示録なイメージでグイグイ押してくる。

「まだこんな事実がある」と盗聴を防ぐため紙になにか書いてグリーンウォルドに手渡すスノーデン。「まさかこんな…なんてことだ!」驚愕グリーンフェルドの視線の先にある文字は…そっからエンドロールに入ってトレント・レズナーがやってそうな凶暴なインダストリアル・ロック(『イヤー・ゼロ』とかあのあたりの)が流れ出すというわけでこれはもう怖い怖いそしてカッコよい、怖がらせながらも民衆に蜂起を促すかのよなアゲアゲエンドなのでした。

ところでスノーデン、なんとなくアクション映画に出てくるテロリスト一味のエキセントリックなコンピューター担当みたいな風貌でカッチョよいなと思っていたが、実際に動くスノーデンを見るとますますアクション映画に出てきそう感が強まった。
毛布を被ってラップトップをいじるスノーデン。なにしてんのと聞けば魔法の毛布さとの答え。「魔法の毛布が盗撮を防いでくれる」。
香港のホテルでの撮影中、廊下で火災ベルが鳴る。なかなか鳴り止まずフロントに電話するとテストですとの答え。このタイミングで? おかしい…きっと盗聴ができなくて怒ってるんだなとジョークを言いながらも電話に盗聴器が仕掛けられてないかついつい確認してしまうスノーデンなのだった。

地底世界が云々とか言っただの言わないだのと変な話ばかり真偽不明の三文記事で読み、いやこれはスノーデンの評判を貶めるためのちょっとした情報操作の一環なんではあるまいか、本当はものすごく冷静沈着で真面目な人なんではあるまいかと思っていたが…まぁでも別にスノーデン技術屋だしな経験したことない巨大なプレッシャーで内心焦りまくってたんだろな(実際いろいろ漏れてる感あるが)

ほんであれっすね知らんがスノーデンって『ニューロマンサー』とか絶対好きだと思うね。ポイトラスさんはなんかそういうの興味なさそな感じあるが親和性は高いんですよこの映像感覚からすると。するとサイバーパンクだなこれは。ランドスケープとかじゃなく思想がサイバーパンク。
だってもう香港のホテルでNSAの内部告発者と密会の展開からして完全にウィリアム・ギブスンの世界ですよ。『ニュー・ローズ・ホテル』かっつーの!

とまぁそんな映画と俺は思ったのだ。サイバーパンクだサイバーパンクだ言うといや違うこれは現実なんだお前はなにも分かっちゃいないと意識の高い人から怒られそうな感じもあるが、でもほらバックドア搭載と噂の激安中華スマホとか使ってるような人間だしな俺…。
プライバシーを守れ個人情報を守れっつってもあれだろ、やろうと思ったら別に監視システムなんぞ使わんでも毎日出してるゴミ漁るだけでどんな生活送ってる人間かとか筒抜けだしな。個人情報はどうせ守れないなんてみんなある程度分かった上でのうのうと日常生活送ってるわけだろ。そういうもんだろその程度だろ普通人の想像力。つかそんぐらい鈍感じゃないと健全な社会生活営めないだろ。

なので、お前らにゃ口で言ってもわからんとポイトラスさんはサイバー黙示録絶賛進行中、恐怖せよ抗議せよとあえて客観性ガン無視で観てる側を煽りまくる映画にしたんじゃないかとなんかそんなことを思うのだった。

(文・さわだきんたま)

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ニューローズ ホテル [DVD]

その影響力のわりには数少ないギブスン原作の映像化の一つで役者さんも良く雰囲気も良くギブスン感もなんとなく出てる気はするがただこれ全然おもしろくないなもう本当に全然おもしろくないな。ちゃんと言ったからな俺は!

↓その他のヤツ

暴露:スノーデンが私に託したファイル
※映画に出てくるグリーンウォルドさんの書いた記事まとめた本。副読本にどうぞ。

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ノリック007
ノリック007
2016年6月28日 11:38 PM

国家は、あなたを監視してる。

「ということは、逆もまた可能ではないのかな」と思いました。

あなたは、米国政府が直面している課題に対する唯一の解決策を
インターネットで公開できます。
米国政府は、あなたがインターネットに公開した唯一の解決策を
監視し、採用せざる得ないということです。
あなたは、国家を操り、支配することも可能です。

君は自分の手で歴史の歯車を回してみくないのか?