ペンパイナッポー的に連結すると『ブレアウィッチ・エボリューション』。それっぽいタイトルになる二本立て。
共通点は気味悪い、よくわからない、足とか手とか体の末端が超痛い、ですかね。
あとはラブクラフトの近接領域、というのも。
『ブレアウィッチ』
《推定睡眠時間:0分》
今更になっての正統続編、らしいがやってることの基本は同じっぽいんでリメイクに近いのかな。
つまりこうです。見せない出さない、大きな音でびっくらかし。それだけ。それだけの映画。
ということは…めっちゃ怖かったですね! そんな、夜の森で大きな音出たら怖いに決まってるだろ! なんか画面に映り込んでる気がして怖いに決まってるだろ! なんだぁ!? 最後に出てくるオバケ屋敷、あの内装ホラーすぎるだろ! 絶対行きたくない!
あえて他愛のない映画だと言っておきますが、そこは強調しておきますが、俺は所々で目をつむりそうになりましたということも言っておきますはい。
でちなみになんですけれどもこの魔女(?)、最初は早起きさせないで昼過ぎまで寝させるの呪いという限りなく地味な嫌がらせをしてたんですが(俺も呪われてるな)、途中から回りくどいことやめて大木をなぎ倒した雷雨を降らせたり(?)して襲ってくる。このアクティブはたぶんオリジナルにはなかったですよね。
遠くの方から微かに何かの音が近づいてくる…みたいのがオリジナルの恐怖描写だったと思うんですが、そのあたりだいぶ別物。色んな意味で躊躇いがなくなった。
音、好きなだけ大音響でやります(監督アダム・ウィンガードの自作)。ブレアウィッチの森がペンデレツキのコンサート会場のようです。叫び声、みんな好きなだけ出します。出しますが出しながら泣きながら明らかにより恐ろしい方に怯むことなくテメェから向かっていく根性あります。
足痛ぇ! だが気にしねぇ! 穴狭ぇ! だが後には退けねぇ! カメラ降ろせ! いや死んでもカメラは手放せねぇ! オリジナルが純心霊ドキュメンタリーならこちらは敵の見えないPOVバトルホラーか。工藤Dこれ、こいつらとタッグ組んだら面白いの撮れるぞ。
終盤のうるさい展開など、魔女云々を通り越してコズミックなホラーのスケール感。続編があるならまぁコズミ狂気に振り切れてくれたら面白いよなとか思いますね。なんか、人間の脳みそ集める宇宙人とか出てきたりしてね。
『エヴォリューション』
《推定睡眠時間:本編15分+併映短編5分》
一言でいえばポール・デルヴォー風『恐怖奇形人間』(1969)。『ブレアウィッチ』は川で足を切ってイテェ映画だったわけですが『エヴォリューション』は海で手を切ってやっぱイテェ映画です。イテェが、こっちはちょっと美しかったりしますわね。
それでまぁわけのわからない映画で、謎の島があり、そこにゃクローンのようなシングルマザーたちとその息子たちがいると。父親は一人もいないと。それで海で貝採ったりなんかするだけの牧歌的かつ薄気味な生活を送ってると。で、この息子たちがある年齢に達すると謎病院に送られると。そこで主人公の少年が体験する恐怖と。なんかそういうお話らしいんですが。
これ本編前に同じ監督の短編が上映されていて、そっちもちょっと寝ちゃったんですが、なんか蜂が出てくる。蜂が出てきて、女王蜂みたいな女の人が出てきて、蜂の巣みたいな集合住宅に住む人たちが出てくる。
タイトルは『ネクター』。『ネスト』と勘違いしていましたがもっと甘そうなタイトルでした。いやそれはまぁどうでもいいんですけど、こうやって二本続けて観るとこの監督の人、変態詩人というかむしろSF寄りっていう気がしますね。
ラストの光景をどう受け取るか問題とかあるわけですが、だからサイバーパンク的に考えればいいのかもしれず。安部公房『第四間氷期』とティプトリー『楽園の乳』が接続されるところがあのラストかもしれず。そこから、ダナ・ハラウェイの視座に立ってわけわからんお話を俯瞰できるのかもしれず。
隠喩だらけ暗喩だらけのシュルレアリスム映画と思わせといて実は見たまんまの意味しかないストレートな願望SFじゃないかと個人的には思ったので、悪夢とかファンタジーとかあとリンチ成分を期待してたところはちょっと裏切られた感。
だって、幕間音楽がリンチの『インランド・エンパイア』(2006)だったんですよ! チラシにもデヴィッド・リンチうんたらって書いてあるから期待しちゃうじゃんそういうの!
ヒトデとかウミウシとかヤモリとか軟体系動物いっぱい出てきておもしろかったからなんでもいいか。 あとこんなに飯が不味そうな映画観たことないッ!
【ママー!これ買ってー!】
1じゃなくて2の方が遥かに面白くなった珍しいPOVホラー。ギミックいっぱいの不思議の病院ダンジョン最高なので『ブレアウィッチ』こういう方向の続編待ってます。
『エヴォリューション』の子供から見た性のグロテスク関連で『柔らかい殻』面白かったよなと思い出したんですが、そういえばこの映画のフィリップ・リドリーもポスト・デヴィッド・リンチ的な扱いだったよな。