映画『シークレット・オブ・モンスター』『ヒッチコック/トリュフォー』睡眠感想文

架空の独裁者の少年時代に実存と第一次大戦後のドイツの歩みを託した『シークレット・オブ・モンスター』、フランソワ・トリュフォーによる伝説的インタビュー『ヒッチコック 映画術』をベースにしたドキュメンタリー『ヒッチコック/トリュフォー』…という要約が難しかったくらい爆睡のため見れてない二本立て(本当にそういう内容だったのかもわからない)
でも二つ合わせて映画一本分の夢を見ているから実質三本観たようなもんじゃないですか? 得したかも!

どんな映画か知るにまったく役にたたない感想です。

『シークレット・オブ・モンスター』

《推定睡眠時間:80分》

政治家100点父親0点の放任オッサンと過保護な美しい教育ママの板挟みで息苦しくて仕方がなかったお子様のお話とのことで原作がサルトル『一指導者の幼年時代』だそうですが難しいことなくあぁはいはいあるある、みたいな案外とっつきやすい「大人は判ってくれない」映画。

にも関わらず寝てしまったのは気持ち左翼舞台劇的な映画なのでつまらない政治談議とか長々と聞かされるから。そりゃあこんなのばっかり聞かされてたら大変だよね。俺は寝たからいいですけどこのお子様は不眠症、そして自分の中に潜む自分でないものとおそろしい予感に囚われて次第におかしくなっていくのでした。
これは同情するのでよかったね独裁者になれて、とすら思ってしまった(でも独裁者のか細い声は大人になっても彼の不安は消えていないのだろうと想像させる)

とにかく印象に残ったというかほぼそこしか見れてないのが独裁少年トム・スウィートくんのスウィートな裸体でありましてオブラートに包んでもしょうがないから正直に言いますが超エロい。この危険な蠱惑エロスに『ベニスに死す』(1971)のビョルン・アンドレセンを勃起せずにはいられない。すいません想起です。
彼の幻視する光景も謎めいて忘れがたく…なにやら宮殿のようなところ、輪転機のようなもの、上下に動き続けるなにかしらのメカニズム…その正体は後々判明してなるほどだったのですが、無気味なメカニズムの幻視というところで芥川の『歯車』がふと浮かんだりしておもしろかったです。
独裁者の心理とか絶対わかるタイプの人だと思いますね芥川とか。

『ヒッチコック/トリュフォー』

《推定睡眠時間:70分》

見た目はおとなしい『シークレット・モンスター』なのですがサウンドトラックは攻性音楽。この不穏になにを思うかといえば『サイコ』のバーナード・ハーマンによる例のテーマ曲であり、『大人は判ってくれない』(1959)と『サイコ』(1960)で図らずも『ヒッチコック/トリュフォー』の下地が用意されてしまった。
これは観に行くしかないので『シークレット・オブ・モンスター』を見たその足で新宿シネマカリテに向かう。結果、一時間くらい寝てしまったし後からサントラ聴いてみたら全然『サイコ』じゃなかった。なんなの。

それでもうこれぐらい寝ていると内容がわからない(本の方も読んだことない)のですが、うーん、なんかヒッチコック映画の映像がいっぱいでてきてたな。有名な映画監督もいっぱい出てきてたな。デヴィッド・フィンチャー、オシャレだな…若い頃のトリュフォーは非モテっぽい…イギリス時代のヒッチコックはどことなくオーソン・ウェルズみたいだ…等々。
おもしろいかといえば別にそんなにおもしろくないっていうかDVDの特典とかで家で見るようなやつだと思いますがいやなんせ寝てるからね本当はすごいスリリングだったりなんかしておもしろいのかもしれませんが…。

ちょうどいま午前10時の映画祭でやっている『めまい』(1958)、どうやら映画の中でそれなりに大きく取り上げていたらしく(他の人のレビューに書いてあった)、そういうことになると俺べつに『めまい』とかどうでもいいしなみたいな感じになってしまう。っていうか終わってから気付いたのですがヒッチコックに格別の興味がなかった。

なんすかねヒッチコックでおもしろかったの…『鳥』(1963)、『鳥』はおもしろかったか…ゾンビ映画の原型のひとつだし…最後の黙示録的光景はどれだけ真似されただろうと…あと『バルカン超特急』(1938)とか…これよかった笑いもスリルもなんでもありの幕の内弁当みたいな娯楽巨編…それから『フレンジー』(1972)は本当にえげつない酷い映画でとにかく怖かった…『ロープ』(1948)、『ハリーの災難』(1955)、超胸糞悪ぃ! 人を不愉快にさせる天才だなヒッチコック…そんな感じか。
ちなみにトリュフォーの方はそもそもあまり観てないし観たのは全部おれにはつまらなかったからおぼえてない。

だったら観に行かなきゃいいのでは。

【ママー!これ買ってー!】


大人は判ってくれない/あこがれ Blu-ray

最後のあれを見ると振り向いてんじゃねぇよ海入っちゃえよとか言いたくなるので俺はトリュフォーに向いてないんだとおもう。

↓その他のヤツ

定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー
水いらず (新潮文庫)
↑『一指導者の幼年時代』収録

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