変身人間映画が密かに流行しているらしく『ミュージアム』の怪人カエル男に続くお魚怪人映画『フィッシュマンの涙』、『ロブスター』『エヴォリューション』に続くシュールコント風革命映画『ワイルド わたしの中の獣』の二本が新たに出現したのでさっそく捕獲。
どちらもこんな社会嫌だという映画でおもしろかったです。
『フィッシュマンの涙』
《推定睡眠時間:60分》
想像するにきっと異形に群がる魑魅魍魎人間模様を通して韓国社会を問う不条理寄りのシニカル風刺喜劇だとおもいますがよくわかりません寝てました。
フィッシュマンとはなにものか。これは起きていたので知っていますが新薬実験かなんかの被験者が変異したやつらしい。そのため『グエムル 漢江の怪物』(2006)が宣伝で引き合いに出されていたがそれはいくらなんでも無理があるだろと言いたいがでも寝てたし見てないところでフィッシュマンが人を食いまくっていたかもしれない。
主人公はテレビ局の(準)新入社員。競争社会韓国の中でもとりわけ競争の激しい業界、コネも学歴もなにもない主人公だったので足元を見られて結果を出せば出世あるからと非正規雇用でコキ使われる。
しょうがないので自己責任で一発逆転の大スクープを狙う。それがネット掲示板で見つけた「私の彼は魚男」の書き込みで、カメラ片手にその「魚と寝た女」に会いに行ってドキュメンタリーを撮り始めたところ…まぁその先は寝てしまったのでよくわかりませんがとにかくみんな大変だということです。
フィッシュマンが社会に飛び出て大騒動! みたいなものかと思ったが違うようで、誰一人としてフィッシュマンに驚かない。主人公がフィッシュマンの父親を呼んできて会わせるシーンがあったのですが、一言ぐらい容姿変化に触れても良さそうなのに仕事はどうしてるとかどうでもいい話題に終始。
映画の方もフィッシュマン本人にはさほど触れず、なんとしても韓国初の自然科学分野でのノーベル賞を! のプレッシャーから生命倫理を逸脱してしまったフィッシュマン生みの親はかせ、なんか知らんけどフィッシュマン事件に噛んできた弁護士(見てない)など続々登場してきていつのまにかフィッシュマン完全に空気。
こちらとしてはそのうえで更に寝てるからフィッシュマンの印象がまるで無くなんか申し訳ない気持ちになりました。勝手に写真とか撮っても怒らないのでたぶん良い人だとおもいます。
フィッシュマン博士が記者会見で画期的な研究を発表。記者が「もっとわかりやすく!」、博士「わかりやすく説明してますが…」。ノーベル賞云々、と何気なく言うとさっきまで興味なさげだった報道陣が急に色めき立つ。
残業してグルメ番組の編集をする主人公のこぼす愚痴など聞いているとなんかどこの国も似たようなもんですね的な感慨が滲んだので諦めムードで日韓友好。
全員まとめて突き放した感じ、好き好き。
『ワイルド わたしの中の獣』
《推定睡眠時間:0分》
「獣」はこれ「けだもの」と呼びたい映画でなんの脈絡もなくある日突然町中で狼を発見してしまった冴えない会社員女性がシーク&飼育に執念を燃やし次第に自分の中の狼を解放していくっていうこれも不条理喜劇(実存系)だったんですがそんなことよりエロくてよかったです。
狼に舐められて興奮した主人公がアパートの階段で手すりオナ! 獣姦はなかったがハードコアよりソフトコアの方がエロく感じる時もあるっていうあれと同じでむしろエレガントに勃つ。
なんかおもしろいかったのはいかにもシネフィル映画然としたところでオフィスの場面での仕事してる感のなさ、とか黒沢清がオフィスシーン撮るとよくこういう感じになったりしますが歯切れの悪い編集とか噛み合わない会話とか記号化された人物や極度の抽象と省略などなどスノッブな映画マニア特有の臭みが充満。
そのうえでエロいのでなんだかロマンポルノみたいの感想出る。または若松孝二が大和屋竺の脚本でこういうのやりそう。アパートの屋上から無人の荒野への飛躍なんていかにもという気がする。
そこから連想したのですがこれは都市のひとりテロリスト物語に連なる映画なんじゃないかということで更に山本政志とか塚本晋也の初期作みたいのとはイメージがダブるところ多かったかもしれない。
都会人のインナー破壊工作。クリーニング工場の中国系女工を雇って狼捕獲用のトラップをこしらえるシーン、爆弾でも製造してるような暗い情念と革命前夜の高揚感が最高だったなぁとおもう。
これぞまさにローン・ウルフ。笑いごとではない。エロイごとでもない…。
【ママー!これ買ってー!】
都市と狼と革命/変身精神ということであれおもしろかったなぁと思いだした映画。『ワイルド』にはリリト・シュタンゲンベルクさんの体当たりヌードがありましたが『ウルフェン』にも狼と同化したオッサンのヌードがありました。
『ウッドストック』の監督の作と知り驚く。