ガチだった実録ニコケイ映画『パシフィック・ウォー』感想ですネタバレあります

《推定睡眠時間：60分》

なんか知らんけどニコラス・ケイジが苦悩する安い映画でしょのざっくりイメージで観に行ったらガチだったんですがガチでこれでいいのかと思いつつガチゆえに悪く言うのも失礼に当たるのではとやっぱり真面目な性格なので考えてしまう扱いに困る映画だったんですが一時間くらい寝たの事実が既にして充分に失礼なのであまり気にせず感想です。ここまで一息。ネタバレあります。

いやもう参りましたよねオープニングのCGエフェクトの安さアサイラムじゃないですか、アサイラム級じゃないですか。それは確かにテレフィーチャーとかVシネだったらまぁそうだよなみたいになりますけれどもシネコンのスクリーンでこれ攻めてくるとは思わないよな…。
後半になるとアサイラム的なCG殺人鮫が船から放り出された兵士をバクバク食っていく。その豪快な食いっぷりに思わず笑ってしまったのですがこれは太平洋戦争末期に原爆を輸送しその後日本軍の潜水艦に撃沈され多数の死傷者を出した巡洋艦インディアナポリス号の実話ということでもうもう全然笑えない笑うどころじゃない。でも…でも…。

映画のDVDとか出る時に劇場公開版に映像を追加したディレクターズカット版とか入ったりするケースよくありますが、観ながら俺が思っていたのは安CG全部抜いた版作ってくれないかなぁということでしたね。
わかったもう鮫はいいから。鮫はアサイラム鮫でいいから。でも回天が…回天出てくるんですけど回天までアサイラムはダメだろ…いや別に右翼じゃないし左翼でもないけどそれはさすがにそこで笑わせてくるなよってなるじゃん…。

逆にもっとふざけてくれたらよかったのにとおもう。ニコラス・ケイジ演じるインディアナポリス号艦長・マクベイⅢ世の遺族など関わってる映画なんだろうと思われるのでとにかくガチ以外の何物でもないわけですが、ガチな態度でアサイラムをやられると面白くなってしまうというのはきっと俺のせいじゃない。
あるいはもっと出来が悪かったらいいのにとも思うのですがこれは兵隊ドラマの部分はちゃんとしていてつい神妙な面持ちで見てしまうのでそうやって油断しているとアサイラムが攻めてくるっていうだからなんなんだよそのアンバランス！

まぁ度重なるアサイラムアタックを掻い潜った先の結末には思わず胸がつまってしまったので映画は最後まで見ないとわからないなぁとは思いましたが。

近年ニコラス・ケイジの映画は「演説」のニコラス・ケイジ、「喪失」のニコラス・ケイジ、「悔恨」のニコラス・ケイジ、「堕落」のニコラス・ケイジ、「復讐」のニコラス・ケイジなどいくつかのニコラス・ケイジ類型の配分が映画の内容そのものとなっているらしくなんか歌舞伎みたい。隈取とか似合いそうですよねニコラス・ケイジ。

今回は「悔恨」50％、「喪失」40％、「堕落」8％に「演説」2％くらいのニコラス歌舞伎でした。多くの部下を亡くし原爆を輸送したことの罪悪感に苛まれ続けるニコラス/マクベイ艦長の姿は見るに忍びない辛さ。
「堕落」がわずかに存在するのはジグザグ航行を怠ったことがインディアナポリス号撃沈の原因だと軍法会議で判断され有罪になってしまったから。これは誤りだとして2000年に名誉回復がなされたらしく、たぶんまぁそのことがこういう映画の製作に繋がってんでしょうね。

どうせ実話なので書いてしまうがマクベイ艦長は退役後に拳銃自殺を遂げる。悔恨の末に自死するパターンのニコラス・ケイジ映画とか最近ありすぎる気もするが不謹慎なのであまりそういうことは言うべきじゃないだろう…。
こちらは実話かどうか不明というかたぶん創作なシーンがあって、件のインディアナポリス号を撃沈した伊号第五十八潜水艦（とかいうらしい）の橋本艦長がマクベイ艦長の有罪を立証するため軍法会議に召喚されるのですが、その後ふたりだけで対面。
原爆を輸送して部下を失った側と部下を特攻させて原爆を落とされた側の邂逅はちょっと言葉にならなかった。

こういう話はそういえば『ケイン号の叛乱』(1954)でありましたがモチーフになってたりすんだろうか。あるいはニコラス・ケイジ版『ハドソン川の奇跡』(2015)がこの映画とも言えるのかもしれませんが、トム・ハンクスとニコラス・ケイジの苦悶芝居ってちょっと被るな確かに。
A級マインドとC級クオリティの中間でB級ニコラス・ケイジ映画。こんなところで名前を聞くとは思わなかった監督マリオ・ヴァン・ピーブルズ（息子を出演させている…）。
色々言ってますがレイトショーで見たらやけに面白く感じましたね。知らない話だったので勉強になったし良かった。寝てますけど。

※大変失礼な記述があったため一部修正してます

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なんだかもうやるせない。やるせない。やるせないだけのニコケイ映画なので個人的には大好きですが評判は散々なことになってます。それもまたやるせない。

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