ガッカリ映画感想『パージ:大統領令』

《推定睡眠時間:2分》

前二作見ちゃったのでこりゃ最後まで付き合わなきゃいけんなの『パージ:大統領令』だったのですがまだ続くらしく。どうでしょう。ここまで無事劇場公開されましたが次はもう厳しいのでは。俺もそこまで付き合えるのか。まぁ付き合うんだろうけど。毒食わば皿まで。これ毒かい。
ていうか、皿まで食えよ。一言で『パージ:大統領令』それだな。毒山盛りの皿を食わずにサラダを食っちゃうヴィーガン映画だったのだ…!

びっくりした。『パージ』シリーズのクリエイター、ジェームズ・デモナコ、ポっと出の若造かと思ったらこの人90年代から脚本書いたり製作周りで映画業界に携わってる人らしく、初長編脚本がロビン・ウィリアムズがでっかくなっちゃった(※こどもになっちゃった、と言うべきか)! でお馴染みの『ジャック』。ええっ!

いや、こんな血生臭い映画作ってるやつがそんな教育的ファミリー映画で…ということに驚いてんじゃなく。そういうことはよくあると思うのですが低予算スプラッターからキャリアを始めた人が一般映画にの逆パターンもまたよくあると思うのです、が!

お前…デモナコ…『ジャック』が96年だから脚本で飯食って20年…20年で…脚本家生活20年目のアニバーサリー脚本これかよ! それはないだろ! お前の20年はなんだったんだよ! ふつう歳とったらもう少し学ぶんじゃないすか! 経験と知恵で勝負みたいなとこ出てくんじゃないすか! そういうの全然ないんだが! 14歳の筆致なんだが!

言っとくけどな! ボンネットに生贄の女くくりつけた鉄仮面がモーニングスター振り回しながらパージ下の市街地を流しているから文句言ってんじゃねぇから! 荷台に大量の死体積んだトラックがちり紙交換の要領で「不要な死体がございましたら無料でお引き取り…」とかやってるからじゃねぇから! 路地裏に! 本式のギロチン台を持ち込んで! 路地裏に! 本式のギロチン振り子を持ち込んで! どうやってセッティングしたかは謎だが景気よく首を撥ねてる連中がいるからじゃねぇから!

かくも最高に世紀末な地獄絵図が! ぼくのかんがえたさいきょうさいあくハイパースペシャル地獄絵図が! …野蛮な時代に終止符を打つべく大統領選に打って出たパージ反対派希望の星ヒラリー候補(仮名)をみんなで守りながらサガミオリジナルな政治談議を繰り広げる的なクソどうでもよすぎるストーリーの添え物扱いになってたから文句言ってんだよ!

地獄絵図見せないで何を見せんだよバカ野郎! インタビューだけのAVか! 背伸びしてみんなより一段高い政治意識と見解を持つ俺を気取ってんじゃねぇよこのオタク中二が! てめぇそれで出てくるセリフが「フロリダが大統領選の鍵だ」程度じゃ救いがねぇだろ!

ホラー映画シリーズの定石として三作目ぐらいまではとりあえず拡大生産路線、死体を増やして舞台を広げて凶器も多彩に…みたいの、あると思うんですけど。『大統領令』、前作『アナーキー』から規模感で大幅に後退していた。
ビジュアル先行型の作劇からストーリー主導型に路線変更のサプライズなのですが誰がこのシリーズにそんなものを期待するというのだろう。今度は戦争だ! と期待したら今度は政争だ…。

そもそもこんな荒廃した合衆国で普通に大統領選が行われている設定の時点で納得がいってない。ていうかパージのシステムからしてじゃあ日を跨いで死んじゃった人の扱いはどうなるんだとか諸々納得がいっていない。なんで『アナーキー』の路線でいかなかったんだろうと納得がいっていないところもあるので納得いかないの三重苦。

『アナーキー』は、穴だらけでご都合主義的でバカみたいな中二設定を逆に中二方向に振り切ることで魅力に昇華したパワフルな続編だったのに。あの野蛮さの牽引力を捨ててこんな安いストーリーで映画を引っ張れると思ったのですか。まぁ一作目からそういう傾向は見え隠れしていたし『アナーキー』もストーリーが入ってくる中盤からの失速が半端なかったが…。

俺たちのデモナコのフィルモグラフィーを見ているとある漢の顔が浮かんでくる。漢と書いてオタクと読む。彼の名はカート・ウィマーといった…。
脚本家出身なのにストーリーはガタガタで、とにかく奇天烈ビジュアル一発勝負みたいなところでなんか似ている。違うのはカート・ウィマーは堂々と中二をカミングアウトして中二食わば皿まで、ていうかそのうち皿だけ食う人みたいになってしまってなんかすげぇのですが、デモナコは皿を食わないし中二もカミングアウトしない。

この人は中二をいじるポジションに自分を位置づけている節がある。ウィマーと同じクラスだったらウィマーが授業中にひとりで描いてるガチすぎる漫画を取り上げてネタにしているに違いない。デモナコてめぇ…!
だが明らかに、デモナコはウィマー側の人間だ。それは教育的教科書的教条主義的なくせに粗雑に過ぎて話にならないストーリーの間隙を縫って飛び出す凶暴な見世物性、死の描写の華麗、仮借なきバカへの意志を見ればわかる。

本当はモーニングスター鉄仮面とか死体ちり紙交換で存分に遊びたい人なのかもしれない。いやそうあってほしい。デモナコ、お前の本気はこんなもんじゃねぇだろ。お前の中二はこんなもんじゃねぇだろ。お前の良さはストーリーテリングにはないはずだ。

ヒラリーとボディーガードが路地裏の振り子ギロチンに出くわすシーン、ギロチンが端に行ったときにせーので走り抜けていたな。そんなことしないでも這って進めばギロチンに当たらないしタイミングを見計らってるうちに罠を張った連中に撃ち殺されるかもしれないしそれに道は他にもあったのだから単純に引き返せばいいが、でもどうしてもギロチンルートでいきたかったんだろ。
わかるよ! だってギロチンあったらかっこよく走り抜けたいもん! そっちのが楽しいもん! 理屈じゃないんだ! 中二は理屈じゃないんだよ! お前のハートも分かってるはずだぜデモナコ! デモナコよ!

オープニング、「20th Century Boy」。超アゲアゲじゃん人殺し祭りじゃん! とノらせといて嫌がらせかと思うぐらいまったく盛り上がらないその選曲ぜんぜん意味なかったなのデモナコ演出。味方してやろうかと思ったがエンディングにボウイ「I’m Afraid of Americans」をぬけぬけと流してやがったのでやっぱりふざんじゃねぇよデモナコ。

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それにしてもなんでヒラリーをやたら外に連れ出すんだろうな安全な室内に置いとけばいいのにな。ていうか警備薄すぎたなあれ。5人ぐらいしか警護隊いないし何人も買収されてたな。あれ、そこまで根回し済んでるならわざわざパージの日に殺さなくてもどうとでもできるのでは…。
ツッコミが留まるところを知らない『大統領令』ですがアリかナシかは各自映画館でジャッジしよう。『ジャッジメント・ナイト』はおもしろいかったです。

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匿名さん
匿名さん
2019年3月29日 5:04 AM

一番最初だけしか取り上げてないってことはPVだけしか見ていないのかな?
PVだけで二分も寝てしまったから逆にすごいぞ