爆睡映画感想2本。ただひたすらに銃撃戦の『フリー・ファイヤー』とただひたすらにエルミタージュ解説の『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』です。
ただひたすらになにかするとねむくなる。
『フリー・ファイヤー』
《推定睡眠時間:45分》
おもしろくなかった。おもしろくなかったが大部分寝ているわけだから説得力はまったくないな…。かといって、もしかしたら見逃した部分がおもしろかったかもしれないという印象もまったくない…。
史上初(かどうかは知らない)、リラクゼーション銃撃戦。とにかく撃ちまくっているとにかくとにかく撃ちまくっている。その銃声の暴力たるや凄まじいはずなのだがこれが! なんだかこう聞いてるとスヤスヤっときてしまう小川のせせらぎのようなヒーリング効果。ヒーリングDVDがまったくおもしろくないようにこの映画もまたおもしろくない…。
冒頭に監督ベン・ウィートリーのメッセージが入っていて、これが人を食っている。この映画の製作に際して私はFBIの報告書を山のように読みました。それでわかったのは人は致命傷を負ってもなかなか死なないということ。この映画は人間の往生際の悪さを描いたものです、云々。
その通りの内容で、とにかく銃を撃ちまくってるわりにはとにかく人が死んでくれない。本当に死んでくれないしあんまり痛そうでもないので撃った撃たれた感がない。ちょっとだけモンティ・パイソン風の悪趣味コントにも見えてくるがFBIの報告書()を参考にしているのだからこれが現実というものだろう。
ジョニー・トー『PTU』の包丁刺されて疾走マンや『太陽を盗んだ男』のゾンビ文太さんはネタじゃなくてリアルだった! 人殺しの難しさと割に合わなさが学べるのでヒーリングでかつ教育効果もある銃撃戦である。
ところでベン・ウィートリーって誰でしょう。検索すると、なんと『ハイ・ライズ』の人! 『ハイ・ライズ』! すげー膝ガッテンしちゃったよだって『ハイ・ライズ』もめちゃくちゃ寝たもん俺…。
グロテスクな人間模様をオフビートに垂れ流してく作劇とか確かに同じだな『フリー・ファイヤー』と『ハイ・ライズ』。物語の全体像をあえて見せないで、クロースアップした部分部分だけ繋げていくっていうのもそうだよね。
思えば『ハイ・ライズ』もラグジュアリーなヒーリング感が漂っていたな…背景は死体まみれなのに。
『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』
《推定睡眠時間:40分》
ガッカリ度でいえば俺的には今年最大級の映画だったんですけどだってナビゲーションだからね、これ。エルミタージュの宣伝。5分ぐらいのダイジェスト版がエルミタージュ美術館の公式サイトに埋め込まれてたとしてもおかしくないっつーかもうダイジェストでいいじゃんみたいな。
再現映像交えてエルミタージュの歴史を追ってくだけだからどうせ別に決定的な画とかドラマがあるわけじゃないんだよ…。
『フリー・ファイヤー』はイギリス映画。これも制作国イギリスになってますがイギリスのアート・ドキュメンタリーていうとですね『デヴィッド・ボウイ・イズ』つーの2年くらい前に映画館で見てですねそれも半端ねぇガッカリだったねやっぱり同名の展覧会のナビゲーションで。
ボウイの歌唱も本邦初公開のレア映像もボウイにゆかりのある人々もほぼ出てこないってじゃあなんなんだよそれなんなんだよデヴィッド・ボウイ・イズ・イズなんなんだよ! いや、だから、ナビゲーションなんですけど…もうナビゲーションはナビゲーションて書いといて欲しいよなジャンルのところに!
それはともかく。えぇとそうですねおもしろかったのはえぇとね建物古いじゃないですかエルミタージュ。それで外から見える部分はちゃんとしてんですけど見えない部分が。バックヤードすごいんすよ狭くて汚くてボロくて。
映画の中に現館長さんが出てきて。それでその執務室にカメラ入るんですけど。未整理の資料が至る所にうずたかく積まれていて…それはまぁそんなもんかと思うが…通路にキャビネットが置かれている。その抽斗を開けると、収蔵品であるエカチェリーナ2世の宝石コレクションが。すごくないそのぞんざいな扱い。
こういうところはおもしろかったな。普段見れない部分を見ることができるから美術館ドキュメンタリーって好き。地下でネコ飼ってるとか興味津々だよねただこの映画そこ全然突っ込まないからさっさと裏方から出ちゃって「プーチンはエルミタージュに理解ある人なんですよ~」とかやり始めるよねどうでもいいんだよそういうの! ていうかやるならやるでアートの政治利用が云々みたいな濃いテーマぶっ込んでいけよどうせなら! つまんねぇ映画だなまったく!
…いやこれはたぶん否定的すぎる見方で、劇場公開される美術館ドキュメンタリーというのは相当ニッチなジャンルなのでエルミタージュと言われたら『エルミタージュ幻想』が連想されるがえ、そこと比較するの!? てなるな冷静に考えると。それはダメだよねなんかそれはダメだよ。大人なんだからそれぐらいわかってよって思うよ自分に対して。
こういう美術館ドキュメンタリー映画もあるよそれは。うん。そうだな。そうですよね。勉強になったよ。エルミタージュ美術館行きたくなりました。でもな。もう少し。もう少しだけ掘り下げてもらってもいやこれナビゲーションだから! ナビ! 美術館ドキュメンタリーのナビ派です!
これからこういうドキュメンタリー映画はナビ派と呼ぶことにする。映画館で見ることの醍醐味はないけどテレビでやってたらなんとなく見る的な。それが、ナビ派。
【ママー!これ買ってー!】
『フリー・ファイヤー』のFBIの報告書云々ってあれたぶん『ファーゴ』の「この物語は実話に基づく…」同様の意地の悪い仕掛けなんじゃないすかねと思えば確かに、『ファーゴ』も人殺しの不毛さに関する映画だったのだ…。