【ネッフリ】『6日間』の感想(出演:マーク・ストロング)

《推定ながら見時間:50分》

これは文脈を押さえておかないとちょっと難しい。ていうか俺には難しかった。
特殊部隊ものの傑作らしいが見たことはない『ファイナル・オプション』の元ネタでもあるらしい1980年4月の駐英イラン大使館占拠事件の映画化で、『アイ・イン・ザ・スカイ』と同傾向の群像サスペンス。
最終決定を下す首相が台詞の中に現れるだけで顔を出さないというのも奇しくも同じ。どちらも内閣府ブリーフィングルーム(COBRA)がストーリーの上で中心的な役割を果たすからこういうのはコブラものとか言えばいいのか。かっこいいな。

『アイ・イン・ザ・スカイ』と違うのは『6日間』は実際の事件に直接の材を取っているわけだから結果がどうなるか先にバレてしまっている。従ってそのサスペンスでは話を引っ張れない。結果の分かっている実録パニックっつっても『パトリオット・デイ』みたいな演出であれば観客の耳目をかき集めることもできようが、そういうことはしない。

どうなるかというと物凄く超地味。ネッフリオンリー映画見るといつも言ってる気もするが渋い。出演してる人もマーク・ストロングしか知らないが、唯一知っている人がマーク・ストロングなんだからそれはもう渋い。
描かれる内容自体が取り立てて難しいわけではないけれどもそれなりに歳いったイギリスの人なら誰でも知っているような事件の背景事情や時代の空気を共有していない人間からすればこのドキュメンタルな語り口はいかにもぶっきらぼうで、その上にこの渋演出なんだからまー取っつきにくい映画だったな。素っ気ないサムネを見た時点でそう思ってはいたが。

サスペンスで見せる映画でもないしアクションもそんなに見せてはくれない。合間合間に挿入されるSASの演習風景が緊張と期待を煽るがどっこい遂に来た本番は拍子抜けだ。後に残るのは苦さだけ。
COBRA、警察、テレビ局、SAS、大使館内をザッピングしながら映し出されるのは単に破局に向かう情勢の変化であって、ドラマとかアクションとか蚊帳の外だし形式上サスペンスというだけで内実は再現ドラマだろうな。

再考ドラマと言うべきかもしれない。都市部のテロが引きも切らない、か、もしくはそのように肌で感じられている時代に駐英イラン大使館占拠事件を再提示することの眼目はサッチャー政権のメディア・コントロールにあるんだろうと思う。
「首相がSASに突入をと」「他には?」「突入時に煙幕を使うなと。イギリスのテロとの戦いをテレビカメラが撮れなくなってしまうから」

唯々諾々として汚れ仕事を引き受けるSAS隊員とマーク・ストロングが垣間見せる苦しい胸中が切なかった。

【ママー!これ買ってー!】


アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(字幕版)
アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(吹替版)


アルゴ (字幕版)
アルゴ (吹替版)

『6日間』と横の繋がりを持つ映画が『アイ・イン・ザ・スカイ』なら縦の繋がりは駐英イラン大使館占拠事件とはほぼほぼ同時期のイランアメリカ大使館人質事件テーマの『アルゴ』だろってことで三者三様、見比べるもの一興。

↓その他のヤツ

ファイナル・オプション Blu-ray

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