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一度食べたものは完璧に記憶しレシピを見ずして全く同じ味を再現してしまう「麒麟の舌」の持ち主がダブル主人公の二宮和也と西島秀俊なのだがこれは一度口に含めただけでその物の組成が完璧に分ってしまう「神の舌」を持つ男・向井理とどっちが強いんだろう。
フードバトル的なことをしてほしいが、ていうか流行ってるのかよ舌シリーズ。次は鬼の舌でも来るのかよ。悪魔の舌とか天使の舌とか。もう逆にぶち上げてほしいよ、局の垣根を越えて舌ユニバース構想。誰が見るんだよ。去年の『RANMARU 神の舌を持つ男』も今年の『ラストレシピ ～麒麟の舌の記憶～』も劇場ガラガラだったよ。ガラガラだったよ！
でも『RANMARU 神の舌を持つ男』は面白かった。最近『THE NEXT GENERATION パトレイバー』を見てハっとしましたね。これ『RANMARU 神の舌を持つ男』みたいじゃん。堤幸彦の映像ギャグセンて押井守と通ずるじゃん。
衝撃的な発見だが、ということは『RANMARU 神の舌を持つ男』は味覚＋温泉＋横溝正史の謎題材チョイスからいって『立喰師列伝』のように見るべきマニア映画だったのだ。それは興行大爆死して当然だ。当然だが押井コア層には見てもらいたい。レトリックと衒学趣味のない無邪気な押井守が堤幸彦であった。
『ラストレシピ ～麒麟の舌の記憶～』。死期間近の金持ちに人生最後の食事を振る舞う終末料理人の二宮和也に中国料理界の超大物から依頼が。料理の天才的な設定なのにその人物を知らないぐらい料理界に疎い二宮和也だったが多額の報酬に目がくらんで二つ返事で引き受ける。
依頼というのは満漢全席を超えろということで天才料理人・西島秀俊が関東軍に創作を命ぜられた超級フルコース大日本帝国食菜全席のレシピ捜索であった。満州国崩壊に伴いどこかに消えてしまった大日本帝国食菜全席を探して東奔西走するうちに二宮和也が知ることとなった衝撃の事実とは。それはともかく料理作れよ何のための麒麟の舌なんだ、ニノ。
映画は回想形式になっていて現代で大日本帝国食菜全席の謎に挑む二宮和也と満州国で大日本帝国食菜全席の創作に血道を上げる西島秀俊が交互に描かれる。長い、といえば長い。特に回想が思った以上に長い。これだけ長いと回想の中で答えまで描かれてしまうから二宮和也が謎を解く余地とか残されていない。
ミステリーはめちゃくちゃ薄味なんである。二宮和也は狂言回しに過ぎず当時を知る人々を訪ねては回想を促すだけの役割なんである。選択肢分岐のないサウンドノベルをやっているような感覚を覚えるが、この二宮和也のキャラクターに合ったか合わないか淡泊な展開が最終的には美味い着地点を用意するんであった。
めちゃくちゃ回りくどいが。最後の方の現代パートがなおざりに感じるものの。
最初、二宮和也が出てきたときに内面の崩壊が如実な不健康顔を見てすわジェイク・ギレンホールか、と一瞬だけおもう。依頼人のプライベートには一切興味が無くせいぜい動く札束ぐらいにしか思っていないニヒルな終末料理人キャラが劇画しているが、『ナイトクローラー』よりは『ブロークバック・マウンテン』だったな、ジェイク・ギレンホールで言えば。
二宮シェフは孤児院の出だがそこで一緒に育って今でも兄的に慕うのが綾野剛。アヤゴーの働く客の来ない中華料理屋を度々訪れる二宮シェフだったがその度に橋田壽賀子ドラマの世界が始まってしまい二宮シェフのキャラ崩壊に和む。
料理の映画なのでこれでもかとフォトジェニックな料理を撮っていくしおおきめの効果音を入れてくる。カリッとかサクッとかジュワァとかグツグツッとかトクットクットクッとかそういうのですがもーう気持ち悪くなってしまった、そういうの。レストランで食べ物の画像撮ったりするのフードポルノと言うらしいがこういう食（物・事）撮りこそフードポルノ。
エロいでしょエロいでしょって言って女の乳にカメラ寄せて舐め回すように撮ったり、吐息とか喘ぎとか衣擦れとかたっぷり粘液まぶしたチンマンの摩擦音を強調する、ポルノの技法というのは細部を拡大して全体像を覆い隠すことで見ている側を理性的に判断不能な状態に持って行くことだと思っているが、この映画を含む様々な食（物・事）撮りはそこにポルノの負い目みたいなものがない分だけポルノよりポルノっぽい観。
『タンポポ』とかは諧謔があるので描写的に際どい部分もえげつなさは感じないが食とエロの類似性を笑いもなくストレートに見せられると引く。あと中国側キャストはちゃんと用意できなかったんすかね。
【ママー！これ買ってー！】
三國連太郎・佐藤浩市の親子競演が全てな実写版『美味しんぼ』はむかし浅草新劇場の三本立てで見たときにジジィが上映中の客席で男娼のテンポしゃぶっておりその効果音がスクリーンを彩る異色の4D形式だった。食はエロを喚起する。
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