《推定睡眠時間:0分》
『探偵はBARにいる』の一作目で目を引いたのはなによりまず高嶋政伸の狂気だったがここにきて政宏が超えてきた。ハイパー超スーパー金持ちお嬢様・平祐奈のハイパー超スーパー金持ちお父様が高嶋政宏だったが金持ちの余裕というものでこのお方はなにをされても怒らない寛大で温厚で100万ぐらいは言えば無条件でくれるやさしいやさしい人であり夜ごと枕元に立つご先祖の言うとおりに娘の結婚相手を決めたりあれっ!
ご先祖のお告げを信じて今までやってきたから事業がここまで大きくなったんだよぉとハイパー超スーパー金持ちお母様のシルビア・グラブともども平祐奈に笑いかけるんだが爛々と輝いた目が怖すぎるんだが瞬きしないんだが。
ロード時間のないカートリッジタイプ映画のため冒頭30分ぐらい怒濤の展開であれもこれもあった後、ひとまず廃屋的愛の巣(ご先祖の導きにより)に平祐奈とその夫となった中島健人が落ち着こうとするが着くや否や廃屋の扉を突き破ってぐわぁぁぁぁぁと絶叫しながら巨太女が走り出てくる。
ドン引きの二人に彼女が大家さんだよぉと政宏ニッコリ。返答のつもりなのかぐわぁぁぁぁと大家。なんだぁぁぁぁ! なんだこれぇぇぇ!
デヴィッド・リンチの映画かと思った。あと本編のテンションが完全に予告編負けしていた『カンフー・ヨガ』より遙かにハイテンションでやばかった。急にミュージカルになったりするし。
しかし面白いのはそこらへんぐらいまででそこからぐんぐんテンションが下がってったから残念。具体的に言えば、典型的な女子スプロイテーション映画の枠組みに入ってしまって元カノが絡んできたり江ノ島デート行ったり中島健人と幼馴染み・知念侑李との恋のさや当てがあったり中島健人の心の傷が云々と要するにいつもの展開いつもの演出であった。
江ノ島とか『恋と嘘』でもロケしてたし『覆面系ノイズ』でもロケしてたから2017年下半期で3回もっていうか毎月見てるじゃねぇか10月から。もういいよ江ノ島以外でデートしろよ! 熱海とか那須とか行け!
急なトーンダウンを彩のない演技が更に加速してしまうので2時間に満たない映画も結構ながい体感時間。ハイパー超スーパー金持ちお嬢様を演じるのが土屋太鳳だったらなぁなどと考える。もう少し演技に緩急ついて女子スプロイテーション映画的ド定番展開にも思いがけない厚みが出たんじゃないだろうか。
ただ問題は、土屋太鳳だと茶の間感が出過ぎてしまうので漫画的お嬢様の説得力がなくなってしまうっていうそこだろうな。平祐奈は演技は幅がなくて面白くなかったけど漫画的お嬢様の説得力はあってよかった。
女子スプロイテーションの典型的展開などと腐したストーリーですが原作は知らんも実は結構うまいことまとまっていて、たぶん最初の方のエキセントリック&ハイテンションと食い合わせが悪いので(また平祐奈の一本調子もあって)あんまり響かなかったのですが、最初っからシナリオに焦点当てた映画だったらちょっと泣きそうになってたかもしれない。
女子スプロイテーション映画略して女子プロらしく英勉監督の映画らしく(これも今年3本目だ…)欲望全肯定の動物的人物ばかり出てくる。(パートナーを)顔で選んでなにが悪いの! 金で選んでなにが悪いの!
飾らないストレートな台詞の応酬が心地よいがレトリックじゃないよね。こうやって自分の欲望とか情けなさをストレートに肯定していくことで互いに許し合っていこうよみたいなロジックだよね。
上手いと思ったし、時代を読んだ誠実なシナリオだなぁと思いましたよ。なんで恋愛するんだろうっていう卑俗だけれども深々広々なテーマを正面からちゃんとやる。こんな馬鹿みたいな漫画設定で恋愛することの意味とか問われたら参るよね。
いや、英勉映画だからそこらへん笑いに走ってちゃんとやってないから参らなかったんだけど、それもまぁ照れ隠しのように見えなくもない。
江ノ島ロケとかあるにはあるが、女子プロ映画らしからぬ地域振興臭の薄さもポイント高し。2017年の映画納め、『未成年だけどコドモじゃない』、全然悪くないハッピーな女子プロだと思いましたね。
【ママー!これ買ってー!】
同様のテーマを大ガチにやると↑になると思うんだよな。これも良い映画だった。
なお失敗するとその下のやつになります。
↓その他のヤツ