《推定睡眠時間:0分》
それはないだろうとツッコまざるを得ないスーパー自白タイムな多段タネ明かしにバイクで事故って横転する主人公の大学生さながらにズサァァァと気分が滑るがどうせ名前が覚えられないからミステリーをミステリーとして読めない人間としては別にそれでも構わないしこれが優れたミステリー映画だとは思いませんが、デヴィッド・フィンチャーとかダニー・ボイルの薫陶を受けてそうなスタイリッシュ映像が瑞々しくて格好良かったので全然おもしろかった中国/台湾ノワール風味青春ミステリー映画。
ポスターなどを見ると『共犯』のチャン・ロンジー監督作。原作は島田荘司だそうなのでオリジナル脚本ではないがテーマとか題材は『共犯』とよく似ていて、おもしろいものだなぁと思ったが台湾には島田荘司推理小説賞なるものがあるらしい。
ネットをサーフィンすると台湾ではこれが若手ミステリー作家の登竜門になっていたり島田荘司自身もよく読まれたりしているそうなので、『共犯』も結構その線で作られた映画だったのかもしれない。
それで『夏、19歳の肖像』ですが『共犯』の副題としても使えそうな『EDGE OF INNOCENCE』の英語題が端的に内容を示す感じの大人の入り口&子どもの罪もの。
自由が欲しかったからみたいなふわふわした理由で台南シーサイドをバイクで飛ばしてたら事故って足折って大学生の主人公入院、暇だったので病院の隣に建ってるそれなりに金のある感じの一軒家を病室の窓から覗いてみたら小雪みたいな女の人がいる。
ということで『裏窓』的に覗き開始、やはり『裏窓』的に怪死事件を目撃して、以降なぞの脅迫メッセージがLINE的なやつに届いたり小雪家の強面ボデーガードに追われたりナースコールを押しても誰も来ないのでナースステーションに歩いて行ったら女性看護師さんが近所の喫茶店のマスターとまぐわっているところに遭遇したりする。
クローゼットのブラインド越しに小雪的な人を覗き見る場面もあったからちょっと『ブルーベルベット』も入ってる。ごうごうの雨の中にこうこうと輝くネオンは石井隆の映画のようでもあった。
持て余した好奇心でやたらと色んなところに首を突っ込んで大人ダークな人間関係を表に引きずり出すが出したところで別になにもできやしない子ども無力の痛切がノワール感で、光のあふれる清潔な絵面に毒がなさ過ぎるからあんまりあまりサスペンス的な興趣はないし事件の真相は前述のズサァァァだったりするのでミステリーとしてどうかという気もするが、あのちょい感傷的なエピローグを見るとミステリーとしてのつまらなさも19歳のガキから見た大人の世界の入り口として豊かな苦みと切なげな甘さを帯びてくる。
そういうの、好きなので。おもしろかったすねタネ明かしは酷いけど(まだ言う)
【ママー!これ買ってー!】
とてもおもしろかった記憶があるが細部を覚えていなかったので感想を探したらその展開はねぇだろみたいなことが言われていたのでそういうところも『夏、19歳の肖像』と共通するっぽい。
↓原作