《推定睡眠時間:0分》
ネイチャー・ドキュメンタリーは映画館でやれば観に行く派なんで『ディープ・ブルー』とか『WATARIDORI』とか『皇帝ペンギン』とかそれから『アース』とか、結構見てるんですけどその時のことを思い返すと結構見てるが結構寝てる、っていうか映画館で観たやつ全部寝てる。
なんなら寝てもいい映画(=ストーリー性が薄い)だから観に行っているフシもある。映画館の暗闇に埋もれて見るネイチャー・ドキュメンタリーは実に気持ちよく寝かせてくれる。幼児か。
でもこれは超珍しく寝ませんでした、『アース:アメイジング・デイ』。たぶんコンセプトがハッキリしてたからじゃないすかね、地球の一日をあんなこんな様々な動物(一部昆虫)の生態・行動、ついでに気象現象を通して…という。
いやそれを言ったら『ディープ・ブルー』とか『皇帝ペンギン』だって深海生物を撮る、コウテイペンギンを撮るっていう明確なコンセプトがあるわけですけど、明確すぎて絵面の変化に乏しいところがあったりするじゃないすかわりと、こういうのって。
そこらへん『アメイジング・デイ』上手かったなと思うのは映画内の時間を一日に限定して時間帯で章分けしてるから緩いストーリー性があって、絵面的にはバラバラな映像がなんとなく一繋ぎのものとして見れる。
地球の一日をっていうとめちゃくちゃフワっとした感じですけどおっきい動物から極小動物まで、そこらへんの都会動物から絶滅ほぼ確定種までっていう映像素材の幅の広さが、掴み所はないけれどもフワっとではなくて地球環境とか生物多様性のダイレクトな表現になっていて、だからまぁつまり…面白かったということです。
動物映画(※『ジュラシック・ワールド』など含む)はパンフレットとかメイキング動画とか関連グッズとか映画外の展開もだいたい面白いので、これも公式サイトを見たら出てくるメイン動物および気象現象が「CAST」として同じ枠で紹介されていてニヤニヤしてしまった。
ぼく映画の公式サイトを見るのも好きなんですが最近の映画公式サイト、だいたいストーリーとは別にグローバルナビゲーションにイントロダクションの項が入ってるじゃないですか。
『アメイジング・デイ』のサイトはそのへん気が利いてましたね。イントロダクションの代わりに「AMAZING DAY」っていう項目があって、単純な仕掛けなんですがページをスクロールしていくと朝・昼・夜って風に背景の動物画像とその時間帯で起ることを要約したテキストが変化するんです。
直感的でわかりやすいし、シンプルな美しさがあって…映画の感想を書けよ。
その公式サイトから出てくる動物抜粋。ウミイグアナ、ジャイアントパンダ、サーバルちゃん、ハクトウラングール、キリン、ラケットハチドリ、マッコウクジラ、ヒカリキノコバエ、モンカゲロウ。
サイズもレアリティも見事にバラバラ。ハクトウラングールは数十頭ぐらいしか個体数が確認されていないらしいからSSR。そういうのは見てるだけで楽しいし、レアリティN的なソシャゲでいったらハズレな動物は面白生態で見せるからメリハリがあって良い。動物にハズレもなにもありませんが。
あとアクションがすごかったですね。ガラパゴス島に生息するウミイグアナの群れが岩石海岸で彫像みたいにジーっと日光浴してる場面があって、それも大変な見物なんですけれどもその砂利の中で孵化した幼体、こいつらが砂地から飛び出して群れが待つ岩場に駆け上がるところなんて『どうぶつマッドマックス』以外の言葉が出てこないな!
すげぇんですよ何十匹ものガラパゴスヘビが首を長くしてウミイグアナの幼体狙ってんです岩の下から。で、幼体が砂から出る、岩に向かって一目散に走り出す。するとヘビ衆一斉に猛ダッシュ、噛みつく、巻きつく、勢い余って岩に激突する。ハラハラしたなあれ。
ネイチャー・ドキュメンタリーで捕食者の側を一方的に悪者にするのはどうかという倫理的ためらいが俺にはあるんですが、ある意味そのへんはバランス取れてるっていうか、基本的には可愛い動物の肩持ってんですけどちゃんとその可愛い動物が食われる場面も入れてたりするから作り手えらい。
子パンダの食う竹を容赦なくぶんどる母パンダの穏やかな獰猛(お前どうせ乳で栄養取れるだろ! ということらしい)、首を鞭のようにしならせて闘う雄キリンの場面なんかには動物は可愛いだけじゃねぇんだよ的な硬派な編集意図を感じましたね。
ちなみにキリンの決闘はハイスピードカメラで撮ってるのでアクション的にも見応えあった。足とか使えばいいのに首だけで殴り合うの無駄にすげぇ。
ハイスピードカメラといえばラケットハチドリが同じくらいのサイズ感のハチと蜜を巡って雨の中でバトる場面、これもすごかったなハイスピードカメラっていうか昆虫撮影用の特殊カメラとかで撮ってんでしょうけど、水滴に打たれたハチが次々とスローモーションで墜落していく光景のミクロなスペクタクル、ラケットハチドリの見事な構造色を超精密に捉えた。すごいなぁ。
すごいすごいしか形容詞が出てこないのは俺の語彙力の問題でもあるが基本的にすごい映像しか繋いでない映画のせいでもあるので俺だけが悪いわけじゃない。
いやぁ面白かったですね『アース:アメイジング・デイ』。個人的にはもっとナレーション少なくてもいいとは思いますが(動物世界に浸りたいので…)、生態の理解に必要な説明ナレーションだったから全然許容。
【ママー!これ買ってー!】
観に行ったしさっき確認したらパンフレットも買ってたのに全然内容覚えてないからやっぱ主題がでかすぎて内容ざっくりしてたんじゃないすかね、アースだもんアース。アース。