映画感想『マダムのおかしな晩餐会』(悪口注意)

《推定睡眠時間:0分》

絢爛たる虚栄心のお夜会服ですっかり素顔素肌が見えなくなってしまったセレブ夫婦トニ・コレットとハーヴェイ・カイテルはその虚栄心がアダとなって人前に出すなんてとんでもない(と、トニ・コレットが思っているのであって俺が思っているのではない)移民メイドのロッシ・デ・パルマをセレブ晩餐会にセレブ客として偽装招待するハメになる。

ところがなんということでしょう、お目汚しもいいところでございますと耳なし芳一ばりに顔に書いたトニ・コレットの心配をよそにロッシ夫人セレブ来賓に大人気。
飾りばかりの他セレブと違ってなんてあなたは率直で面白いんだとついでに美術商かなにかの英国紳士に惚れられてしまう。

悔しいトニ・コレット。らんらん気分のロッシ・デ・パルマ。『マダムのおかしな晩餐会』というので晩餐会のお話かと思いきや晩餐会はだいたい上映開始20分ぐらいで終わってしまい、以降ロッシ・デ・パルマのらんらんラブ模様と予想だにしない展開にさんざん気分なトニ・コレットの恋愛彷徨が描かれるたりするのであった。

終わったなとおもった。なにがってこういう上流階級いじりの艶笑譚が。映画においては。20世紀の終焉と一緒に。いやたぶんそれよりもっともっと以前に、頑張って延命してもせいぜいフェリーニとかパゾリーニの時代に…。
なんかきつかったすよ、上辺だけの洗練を嗤う風刺喜劇とかやろうとしてんでしょうけど差別ネタとかエロネタがぎこちない感じで。見てくれだけの空疎なセレブを嗤っていたら映画自体が20世紀映画のつまらないイミテーションみたいになっちゃった。

その粗雑な作りがよく表れているように思うのは晩餐会の場面で、話したらメイドだってバレるからとトニ・コレットから箝口令を受けたロッシ・デ・パルマだったがすごいグワッっていう顔をしながらすごいあっさり会話に加わってしまう。
酒を飲んで気が大きくなったかあるいは超レアなシチュエーションに気が動転したらしかったがなんでそうなったかよくわからないざっくり感。

そこらへんは喜劇なので、と言われたらにべもないが、でも喜劇にも状況演出の上手い下手があるだろうと思うし…ていうか上手い下手はともかくそれが当然のこととして感じられるような作劇の土壌が今もうないので、なんかめちゃくちゃぎこちなくスベってるように感じてしまうのだった。

愛も資産も実は全部虚飾に過ぎなかったトニ・コレットはロッシ・デ・パルマの情熱恋愛に嫉妬しつつ失った(そしてたぶんもう二度と取り戻せない)愛を希求するようになる。
そうか、そうか。あぁ…そのパターンで来るか。本当になんというか工夫のないそのまんまな20世紀映画趣味の映画だ…決して悪い映画ではなかったように思うけれども画は薄っぺらいし台詞のキレも飛び抜けた演技もない、そのスベりっぷりと時代錯誤っぷりとそのくせ無駄な思わせぶりっぷりに白けまくる90分だった。

いやめっちゃ悪く言ってるじゃん。でも退屈はしなかったすよ、退屈は。

【ママー!これ買ってー!】


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これ面白いっすよね。

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