《推定睡眠時間:20分》
不埒は重々承知の上で言うがまぁだ高校生役をさせられている土屋太鳳のそろそろ無理のあるセーラー服姿が俺にはどうしても風俗嬢的な何かに見えてしまうのでちょっと興奮するがそんな興奮は俺としても少女漫画原作映画に求めていないし土屋太鳳の側としてもそんなところで興奮されても困るであろうからそろそろ、もうそろそろ、いい加減に土屋太鳳を高校から解放してやったらどうですか業界の人…!
じゃなかったらまた同じ悲劇を繰り返すぞ。いいのか。メイン客層はヤングアダルトだからいいのか。その層はあの土屋太鳳を見て風俗嬢みたいだなぁとは思わないのか。そうか。
いやそれじゃあ一人で観に行ってそんなこと考えてる俺が気持ち悪いやつみたいじゃないですか。百歩譲って気持ち悪いやつ認定は受け入れるとしてもエエ歳した演技力のある女優に安っぽい女子高生コスプレをさせてるのは作り手の側なんだから俺だけが非難される謂われはないだろ。謂われも何も一人で観て一人で勝手に思ってるだけだから別に誰からも何も非難されていませんが…。
土屋太鳳の硬軟自在な演技力からすれば何か悲喜こもごもを抱え込んだ風俗嬢役、というのは非常に面白いのではないか、また一俳優としてもやり甲斐があるのではないか、と思うので決してエロい意味ではなく、決してエロい意味ではなく(強調)そういうのも見てみたくはあるが、それにしても一体なんの話から土屋太鳳の風俗嬢役待望論が…そうだ映画でした! 『春待つ僕ら』を見たのでした!
こんな白々しい文章を一人で書いている俺は確かに気持ちが悪いな、と自分でも思うので前言の百歩を三歩ぐらいに訂正しておく。
で『春僕』のお話ですが、土屋太鳳は友達ゼロのぼっち女子高生。クラスメイト女子たちがキャッキャとスウィーッツショップに行く相談なんかしてるのを遠目に眺めては自分もそこに加わる妄想をするが、妄想は妄想なのでそれ以上の進展はない。
この人の通う高校はバスケ部が花形。決して強豪校とかではないので県大会でも全然だったりするが、それでも部の中核メンバー男子はアイドル的な人気があった。
そんなバスケ部の面々が土屋太鳳が働いているカッフェにやってきたことから土屋太鳳のぼっち道に光明が。しかもその中の一人、北村匠海とはなんとなくウマが合って、これはぼっち脱却どころか恋人いない歴=年齢からも脱却できるかもしれぬ。
まぁ要するに、『春待つ僕ら』、いつもの女子高生映画、です。
しかし原作ものとはいえこういう恋愛至上主義とか放課後スイーツ至上主義みたいのをいつまで続けるんだろうと思ってしまうな、女子高生映画。
いつまでも続けるのか。オープニングに桜の木が映し出されて、放課後は地元のスイーツ屋に寄り道して、オシャレなカッフェがあって、イケメンと結ばれるのは年末の煌びやかなイルミネーションの前で…みたいなやつを。
もう様式美の世界ですよね。そうか様式美の世界だから土屋太鳳の女子高生役も無問題であり得てしまうのか。歌舞伎かあれは。
土屋太鳳の親友になる佐生雪がバスケ部のカメコ的おっかけ設定で、そのコスチュームがまた土屋太鳳のセーラー服に負けず劣らずの記号感、大ぶりの演技は空々しいと言うほかなかったが、歌舞伎と思えばなるほどです。
女子高生映画はハイコンテクスト。ガラパゴス、とも言うかもしれませんが。
実際これは女子高生映画の様式とそれを下地にした女子高生映画的な記号の組み合わせだけで成り立っているようなところがあって、女子高生映画と一口に言っても色々あるわけですが、こんなにストーリーにまとまりがない女子高生映画もあんまりないんじゃないかという観がある。
女子高生映画的イケメンが何人も出てくる。女子高生映画的ロケ地が何カ所も出てくる。女子高生映画的シチュエーションが何回も出てくるが、そういうのがあまり物語の上で有機的に結びつく感じになってなくて、ただ女子高生映画のコードに従って繋がってるだけのような印象強し。
おとなし系イケメン出したから次のシーンはワイルド系イケメン出そうとか、イケメンばっか続いたから次はカフェ出そうとか、スイーツ出そうとか、それだけだと飽きちゃうからお次はイケメンがバスケしてる絵だ、みたいな。
超個人的に女子高生映画のシナリオ善し悪しを判断する目安として、対話の時に主人公が何回「えっ?」を言うかスケールを採用しているのですが、この映画の「えっ?」はもうすごかったですね。土屋太鳳、「えっ?」連発。
それ要するに脚本家は面白い会話なんか書く気がないってことでしょ。書く気がないし、観る側もそれ求めてないってわかってるわけでしょ。
会話の面白さよりも滞りのない会話でさっさとストーリーを進めることの方が優先事項で、そうやってストーリーを進めながら桜とスイーツとイケメンを見せるのが自分の仕事なんだと…。
まぁ女子高生映画っぽい映像はたくさん見れるわけだから女子高生映画ファンは楽しめるのかもしれない。
とにかく定番の嵐。ベタ中のベタ。大王道。ホラー映画でいったら『13日の金曜日』の6作目ぐらい。ジェイソンの代わりに土屋太鳳が「えっ?」のナタを手に大活躍する映画なのでした。
【ママー!これ買ってー!】
土屋太鳳だっていつもこんなファストフードみたいな女子高生映画に出ているわけではなく『orange』なんか女子高生映画の傑作だと思いますね。オープニングはやっぱり桜。