《推定ながら見時間:50分》
ノオミ・ラパスが凄腕のボディガードでモロッコに拠点を置くグローバルな資源開発企業の創業家お嬢様を警護することに。だがそこにお嬢様を狙う謎の傭兵軍団が現れ…。
こんな導入はB級アクションとして完璧じゃないかと思ったがそこはNetflix配給映画、中途半端にヒューマンドラマ要素とか企業サスペンスのムードを入れてきてそこらの意識の低いBアクションとの格の違いを見せつけようとするので盛り上がりそうで盛り上がってくれない。
違うっつーのノオミ・ラパスのアクションが見たいんだっつーの! 我の強い芝居が見たいんだっつーの! 創業家のお家騒動とかライバル企業とのどうのこうのとかいいんだよ! 株価の上げ下げとかそういうのは!
いやそれはそれで結構なことだけれども何を見せるかの取捨選択はしてもらわないと! ノオミ・ラパスを見せるならノオミ・ラパスを見せる! 企業ドラマを見せるなら企業ドラマを見せる!
焦点を絞ってもらわないと。君たちがバカにするB級映画というのはそれが出来ている映画に与えられる称号なんですから…いや別にB級映画を名乗っている映画ではないし君たちがB級映画をバカにしているという根拠はどこにもないしそもそも君たちの代名詞で誰を指示しているのか自分でもよくわかりませんが…。
つくづくノオミ・ラパスは脚本に恵まれない。最近ノオミ・ラパスを主演で見た映画といえば『ラプチャー/破裂』とか『セブン・シスターズ』とか『アンロック/陰謀のコード』とかですがどれも…いやどれも見せたいものが明確という意味で立派なB級ジャンル映画だったわ。すいません。
でもどれも大根の輪切りみたいなざっくり脚本には違いない。こういうのに比べると『クロース:孤独のボディーガード』は何かお話を作り込もうとした形跡があるが、それが裏目に出たのかもしれない。
『ラプチャー/破裂』も『セブン・シスターズ』も『アンロック/陰謀のコード』もよくできたシナリオとはまったく思いませんが、でもノオミ・ラパスが全開で映画としておもしろかったからな。
『セブン・シスターズ』なんてノオミ・ラパスが七人も出てくるんだから。七人もノオミ・ラパス出てきたら逆にもうシナリオとかどうでもいいよ。
『クロース:孤独のボディーガード』に話を戻すと、煮え切らないシナリオといかにも鈍重なカメラに反してノオミ・ラパスのアクションのキレは健在。
そこはやっぱ面白かったですね。普通によじ登ればいいのに思わず洗面台に飛び乗ってしまうノオミ・ラパス。障害物をジャンプで対処するのはノオミ・ラパスの仕様である。
拳銃を敵に向ける時の俊敏な動作なんかも相変わらずの素晴らしさ。その闘争性と身体能力の高さが最大限に発揮されていた、男3人を相手取った前列後列を行き来しつつの車内格闘は映画のアクション的ハイライトと言ってもよいと思いますが、超々惜しまれるのはそのテンションが持続しないで、その場限りで終わってしまうことだった。これは他のアクション・シークエンスも同様。
色々とシナリオを練ってはいるが広く浅くで、個々のシーンやアクションが有機的に繋がらない。繋がらないのですべてが一点に収束するラストにカタルシスがない。いや皆さんはどうかわかりませんが俺は全然なかった。
ようするにこの感想文同様に散漫だったわけですが、ノオミ・ラパスが警護する創業者の娘と会社の実権を握る後妻の確執と、ノオミ・ラパス母子の断絶を重ね合わせながらその相互影響、関係性の変化を描くあたりはノオミ・ラパスのキャラクターもあって決して悪いものではなかったので、そうだなぁそこにお話を絞ってノオミ・ラパス視点の物語になってたら同じ展開でも全然ノれたなって思いました。
あともちろんノオミ・ラパスのアクションはもっとカッコ良く撮って、もっとアクションを増量してたら…。
ちなみにアクション以外のノオミ・ラパス的みどころはティアドロップのサングラスで決めるところ、くわえタバコで銃の分解清掃をするところ、寝る前に脇に制汗スプレーをダイナミックがけするところなどです。
特に三つ目のやつね。ノオミ・ラパスそういう芝居すげぇやりたがるから…いや、やりたがってるのがやらされているのかはわかりませんが、『ラプチャー/破裂』も便座に腰掛けてシュっとトイレットペーパーを引きちぎるシーンがあったから…。
なにか生理的な行為にたいへんな拘りを持っているらしいノオミ・ラパスなんである。障害物は決して迂回せずにジャンプで回避するようなアクション志向というのもそのへんと無関係ではないんじゃなかろうか。
いにしえの用法とはまったく異なる21世紀的意味で、肉体派女優です。
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ノオミ・ラパスが完全にBの世界の住人となったことを告げる記念碑的B級アクション。おもしろかった。