《推定睡眠時間:15分》
幼少時に遭遇した飛行機事故により神木隆之介くん演じる慎一郎は死期が近づいた人間が透明に見える特殊能力を獲得してしまう。
神木隆之介くんと特殊能力…といえば皆さんすっかり存在ごと忘れているかもしれないが、俺はまだ続編を諦めていない実写映画版『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』ではないですかっ!
本当なら今頃とっくに第二章第三章と公開されていたはずなのにまさかの興行大爆死により関係各位の心および続編企画自体が砕けてしまった可能性濃厚な『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』で神木隆之介くんの役柄は主人公・広瀬康一。
主人公であるから当然原作ではスタンド使いであるが、『第一章』ではそこまでストーリーが進まなかったので、その続編が完全にお流れになったかどうかはともかく少なくとも凍結された今となっては実写版広瀬くん、単なる普通の高校生になってしまった…。
だがその雪辱、ある意味『フォルトゥナ』で果たしたな広瀬くん、いや神木くんよ。実写映画版の原作となった『ジョジョ四部』での広瀬くんのスタンドと『フォルトゥナ』の神木くんの特殊能力はタイプ的に全然違うが、『ジョジョ四部』といえばシリーズ屈指の名台詞(概念)「スタンド使いは惹かれ合う」が飛び出した部。
まさにそんなストーリーであったよ『フォルトゥナ』。惹かれ合ってましたよ特殊能力持ちが。そう、神木隆之介くん演じる慎一郎と同じ特殊能力を実は恋人の葵(有村架純)も持っていたのだ! これはもう悲願の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第二章』と言ってもよいだろう。よくあるか。
ちなみに慎一郎が特殊能力に目覚めたのは幼少時に凄惨な飛行機事故に遭遇した時だった。一緒に乗っていた両親を含めて乗客の大多数は死んでしまうが、幸運にも慎一郎は生き延びて何故か能力に覚醒、そして映画のラストで判明するのは葵もまたその飛行機事故の生還者だったという衝撃の事実。
…ものすごい偶然なのだが現在絶賛(であってほしい)公開中のM・ナイト・シャマラン監督作『ミスター・ガラス』は、大列車事故からただ一人生還した男(ブルース・ウィリス』が鉄の肉体とサイコメトリーに目覚めヒーローとして死の運命にある人々を救おうとする『アンブレイカブル』の続編なので、かなりネタ被りである。
まったくどこにも接点がないはずの『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』と『ミスター・ガラス』がまさかの『フォルトゥナの瞳』で繋がってしまった…ぶっちゃけ内容がどうというよりそのハイパーリンクっぷりが面白かったよな、『フォルトゥナ』。
お話はこのようなものでした。件の飛行機事故で心を閉ざし、できるだけ他人と関わらないようにひっそりと生きてきた自動車修理工の慎一郎。
そんな彼の行く末を心配した親代わりの店長・哲也(時任三郎)は彼を新たに出店する二号店の店長に抜擢する。
同僚のヤンキー工員・金田(志尊淳)の嫌がらせを受けたりしながらも、すっかり止まった慎一郎の運命の歯車が動き出す。
さて長年使っているガラケーのディスプレイが割れてしまった。ってんで慎一郎がauショップに行くと受付店員が有村架純(の演じる葵)。
どうにかなんないっすかねー。いやー古い機種なんで無理っすねー。みたいな会話をざっと交わした後、葵は慎一郎のガラケーのディスプレイに液晶保護フィルターを貼って補修してあげる。
根本的な問題解決には全然なっていないが自身も修理工だからか慎一郎は葵の行為になんとなく好意を持つ。まあタッチパネルじゃないから割れてもフォルター貼っときゃ結構使えるっていうところは確かにありますよね(そういう問題だろうか)
新店も立ち上げる。なんとなく好きな人もできた。スタート地点はかなり下の方だったが、ようやく慎一郎の人生に順風満帆感が出てくる。
だがそこに運命のいたずら、今まで人と関わらないようにしてきたから気付かなかった…というか忘れていたのだが、慎一郎、例の死期が近づいた人が透明に見える特殊能力に通勤電車の中で目覚めてしまう。
そして! やっぱ基板の方もイってしまっていてフィルター応急処置じゃどうにもならなくなったのでガラケーからスマホに買い換えようと再度auショップを訪れると、葵の手が透明になっていたのだった…。
こういうお話で、あと一つ書き忘れていた重要なポイントとして死期の近づいた人を助けて透過度を0にリセットすると心が(物理的に)痛む。
スタンド使いは惹かれ合うので病院に行った慎一郎を診察した医者・黒川(北村有起哉)も実は能力者であることが発覚、遠回しに人助けると死ぬからほっとけと言われる。
もう最後どうなるかとか完璧にわかるな。死ぬと分かっていながらも慎一郎は死傷者多数の列車事故を身を挺して救うんである(『アンブレイカブル』だ…!)
なんか書いてると波瀾万丈で面白そうなのですが実際に観てみると意外と乗れない。最後の列車事故阻止作戦とかどこから持ち出したか発煙筒に火を点けた慎一郎が線路に入ってホームに向かってくる列車に向かっていくのだが、線路に入った時点で誰か緊急停止ボタン押してるだろうしそもそも自分でホームの緊急停止ボタン押しておけばよかったじゃんとか思ってしまう。
この事故は線路脇で作業をしていたクレーン車の道路陥没による転倒に起因するものだったのでそれで充分防げたのだ。どちらにしても救ったら死ぬんですが(理由は不明)。
なにが乗れないってヒロイズムの発露とか実は葵も能力者でした的などんでんすれ違い返しありきの映画になっていて、物語の中でそこに至る道を論理的に丁寧に敷くことを半ば放棄しているようなところが乗れない。
伏線らしきものはあっても主に情緒的なもので、結局、「運命って不思議ですねぇ」みたいな形に落ち着いてしまう。いやそんな方向に物語投げるんならもう『ジョジョ』みたいに振り切れちゃえばいいのにとか思うんですが俺は(俺は)。
公園で透明になってた幼稚園児の腕を思わず掴んじゃって、その幼稚園児が遠足で事故るっぽい電車に乗ることを都合よく知って園に遠足に行くなと電話したら何故か住所特定、腕掴んで電話で怒鳴っただけなのに何の嫌疑があるのかも令状があるのかもわからないまま家に来た警官に同行を求められ、逃げ出した慎一郎は警官に追われながら件の電車へ突入…とか俺はそういうざっくりした展開が嫌なんだよ。
大きな見せ場を作るために適当な悪者をこしらえるみたいなさぁ、その筋の通らなさがさぁ。
事故予定の電車には葵も乗るって知ってるから慎一郎は直前になって沖縄旅行に葵を誘う。葵は結局これを断ってそれが劇的な展開を生むわけですが、なんで断ったかといえば能力者の葵には慎一郎が透明に見えたので、沖縄=飛行機=墜落と連想したから。一緒に行ったら慎一郎死んじゃうからっていう特殊能力のすれ違いですよね。
その状況は面白いと思ったが、あんまりピックアップしないで慎一郎のヒロイックな行動に物語の焦点を絞ってしまう。
いやそこ盛り上げろよってなってしまうだろうそんなもの。せっかくそういうSF的面白要素がいっぱいあるのに慎一郎のヒロイズム推しが圧倒的なのでー、なんかなー、そういうのなー、つまんねぇなーって思いましたね俺はねー。
でも斉藤由貴の欽ちゃん風芝居は最高だったとおもいます。それは言っておく。
【ママー!これ買ってー!】
第二章がッ! 公開されるまでッ! 実写版を推すのを止めないッ!
↓原作だそうです